社会保険労務士(社労士)は難しい?類似資格と比較して難易度を解説

  • 2021.07.27

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社会保険労務士(社労士)とは

社会保険労務(社労士)とは昭和43年6月に社会保険労務士法(社労士法)によって制定された国家資格です。労働・社会保険に関する法令の円滑な実行や、事業の健全な発展と労働者の福祉向上などを目的に活動します。

業務内容を分類すると以下3つです。

    1. 社労士の独占業務である労働社会保険諸法令に基づく申請書作成と届け出の代行
    2. 労働者名簿や就労規則、会社設立届けなどの帳簿作成・届け出代行
    3. 人事・労務等のコンサルティング業務

申請書作成業務や届け出などの業務は定型業務であり、社労士の資格を持つ人しか実施することができない独占業務です。
コンサル業務は各企業や自治体の相談役として人事や労務に関するアドバイスをおこないます。

社労士としてのスキルやノウハウはもちろん幅広い知識・能力が必要となる業務です。

社労士が人気の理由

社労士になるために必要な社労士試験は毎年3万人以上が受験する人気の試験です。

社労士と同じく法律を扱う人気の国家資格である「司法書士」や「中小企業診断士」の受験者数は1万人程度などで、受験者数だけを比較しても人気があることが分かります。

人気の理由の1つは社労士の扱う範囲が労務・社会保険と身近なテーマを扱っている点です。

総務や人事部門で働く人にとっては業務で行う内容と重複することも多く自分事として勉強しやすく、資格取得がキャリアアップやスキルアップに直結します。

社会保険労務士(社労士)試験の試験概要

社労士試験の試験概要は以下の通りです。

試験日 年1回、毎年8月
試験科目 労働基準法及び労働安全衛生法、雇用保険法、健康保険法など全8科目
出題形式 選択式8問、択一式70問
試験時間 午前(選択式)80分、午後(択一式)210分
合格基準 総得点および各科目での合格基準点あり、基準点に満たない場合は不合格
受験手数料 15,000円
試験会場 全国19都道府県の大学など

また社労士試験の受験には以下いずれかの受験資格を満たすことが必要です。

    • 短大や大卒、高等専門学校卒の学歴があること
    • 公務員や、社労士・弁護士補助として3年以上の実務経験があること
    • 行政書士や弁理士・公認会計士、司法試験予備試験などの国家試験に合格していること

上記受験資格を満たす事を証明するために受験申込時に「受験資格証明書」の提出が必要です。

うっかり受験資格がなく受験できないということがないよう、あらかじめ確認しておきましょう。

社会保険労務士(社労士)試験の受験メリット

社労士試験を受験するメリットは以下のようなものがあげられます。

    • 労務管理、社会保険に関する知識を体系的に習得できる
    • 人事総務関係の業務に就いていれば昇給、昇格のチャンスがある
    • 知名度も高く、労務・保険の専門家として認識される
    • 関連資格とのダブルライセンスで独立し、個人事務所を開業できる

一方、社労士の仕事がAIに置き換わってしまうのでは?というニュースを見聞きし、将来性を不安視される方もいらっしゃるでしょう。

確かに、書類作成や事務作業など機械的に処理出来るところはAI化が進むとみられますが、独占業務が全く無くなるわけではありません。
むしろ、AI化によって業務を効率化し、余剰時間でコンサルティングなどの業務を拡大することで、活躍の幅を広げていくことが可能です。

長時間労働、残業代の未払い、パワハラ、外国人の就労問題など、現代の日本において労務問題を抱える企業も少なくありません。
労働者の権利を守るべく、企業と労働者の間に入って労働環境を整えるサポートを行うのが社労士の仕事です。

社会保険労務士(社労士)の難易度

社会保険労務士として働くためには社会保険労務士試験に合格し、2年以上の実務経験と事務指定講習を修了することが条件です。
特に社労士試験は難易度が高く、実際に試験合格し、社労士として認定・登録されるまでにはハードルの高い資格といえるでしょう。

ここからは、社労士を志す人に向けて、社労士試験の難易度を詳しく解説します。

社労士試験の合格率

社労士試験の合格率を、厚生労働省の資料からまとめます。令和2年度(第52回社会保険労務士試験)の合格率は以下の通りです。

受験者数 34,845人
合格者数 2,237人
合格率 6.4%

毎年合格率は6%前後で推移しています。一発合格で合格する方はごく僅かで、2~3回程度の受験を経て合格するのが多いようです。

難易度が高い理由

社労士試験が難しいのには以下のような理由が挙げられます。

    • 受験科目の多さ
    • 試験時間の長さ

まず受験科目の多さについて、社労士試験では全部で8科目の受験科目があります。

社会保険・労務に関する科目と一括りにいっても扱う範囲はバラバラで、根拠となる法律が違うため重複箇所が少ないのも特徴です。
さらに、各科目で最低準を満たさなければ足きりとなるので、どの科目もしっかりと対策が必要になります。

次に試験時間の長さは、社労士試験は午前80分、午後210分と一日がかりの長丁場になります。

試験会場の固いパイプイスに長時間座って試験問題を解かなければならないので集中力を持続させるのは至難の業です。
過去問を時間計測しながら解いてみるなど、気力・体力面での練習をしておきましょう。

行政書士、宅建士の難易度比較

ここからは、社労士と同じく人気の法律系資格試験である、行政書士と宅建士の難易度を比較します。どの試験を受験しようか迷っている人や、社労士を取得した後のダブルライセンスを検討している人は参考にしてください。

行政書士との難易度比較

官公署へ提出する書類作成や申請代行など「街の法律家」として身近な法律問題を扱う行政書士は、法律系資格の登竜門として人気のある資格です。

行政書士の合格率は10%前後であり、合格率だけを見ると社労士よりも行政書士の方が難易度は低いといえます。

試験制度を比較すると、社労士試験は科目単位で最低基準が設け基準に満たない場合は足きりとなる制度であるのに対して、行政書士試験に足きり制度はありません。
全科目の合計が合格水準に達していれば合格は可能なので、多少各科目に得意不得意があっても最終的に合格点が取れれば合格が狙えます。

なお、社労士は各科目に対して深い知識を求められるのに対して、行政書士では幅広い分野を浅く問われることが多いのが特徴です。満遍なく勉強しておく必要がある点に注意しましょう。

行政書士試験について詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。

行政書士の難易度は高い?必要な勉強時間や効果的な勉強方法を紹介

宅建士との難易度比較

宅地建物取引士(宅建士)は不動産の売買や賃貸物件のあっせんなどを行うために必要な資格で、不動産業界に務める人を中心に毎年20万人以上もの受験者が挑む人気の資格です。

初めて法律系資格取得を検討している人にも人気があり、社労士、行政書士、司法書士などと試験範囲が重複するところもあるので、ダブルライセンスを狙う人が多くいます。

宅建士の合格率は例年20%前後で推移しており、合格率だけを見ると比較的難易度は低めといえます。ただし、不動産業界で関連業務をしている人も受験する試験のため、合格率が底上げされている点には注意しましょう。

宅地建物取引士(宅建士)の資格取得について詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。

宅建の合格率は15~20%!合格に必要な勉強時間と難易度を解説!

社労士試験は独学でも合格できるのか

一般的に社労士試験の勉強時間は1000時間程度が目安とされています。

社労士試験の受験者の多くは30~40代なので、社会人として働きながら試験勉強を継続している人がほとんどです。
通勤時間などのスキマ時間を使って勉強したり、昼休みや帰宅後、休日などでまとまった時間を勉強に充てるなどして、1年程度の勉強時間確保が必要になります。

社労士試験は独学でも合格は可能でありますが、かなりハードルが高いといえるでしょう。

また、独学で挑戦する場合は勉強計画や進捗状況の管理は自分で行い、不明な箇所は自分で参考書を見て解決しないといけません。1年間という長期間に渡って受験勉強のモチベーションを継続させるには精神的なタフさが要求されます。

独学での受験に自信がない人、効率よく勉強を進めたい人は通学・通信講座を利用するのもおすすめです。通信・通学講座を活用すれば、独学の約半分である500時間程度の勉強時間で合格を狙うこともできます。

まとめ

社労士は毎年多くの受験者が挑戦する人気の資格です。

しかし、難易度の高い試験であるため、独学で勉強を進める場合にはかなりの覚悟が必要となります。

独学での勉強に不安がある人、最短で試験合格を目指したい人は通信・通学講座の利用がおすすめです。
独学、講座利用のどちらもメリット・デメリットがあるので、性格やライフスタイルに応じて勉強方法を選択し、社労士試験合格を目指しましょう。

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この記事を書いた人

すべらないキャリア編集部


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