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2021年12月23日、 ONE CAREER Inc.(株式会社ワンキャリア)の寺口 浩大さんとアクシス代表の末永の2人によるオンラインセミナー「転職は準備9割。転職活動の前にやっておくべきこと教えます!〜年末年始にできる「キャリアの棚おろし術」も大公開〜」が開催されました!
これからの転職活動を後悔したくない、転職市場がどうなっているのか不安だ、何から始めればいいか分からない…
そんな悩みを抱える皆さんに、転職市場の現状や転職活動で陥り勝ちな思考パターンなど、多角的に転職のことを徹底解説しました。
今は決して「転職不況」ではない。コロナ禍で起きた市場・企業・転職者の変化
末永:まず、このグラフをご覧ください。これは厚生労働省が発表している、有効求人およびその倍率を示したものです。
コロナ禍で大きな求人数の落ち込みは見られたものの、有効求人倍率自体は、決して低くないんです。労働者にとって景気がいい状態が続いていると言えます。
2009年のリーマンショックで求人数が落ちて以降、2014年頃からは求人に関しては「バブル」の雰囲気すら感じていたほどです。
求人数が増えただけでなく、難易度が高いと言われていた企業でも内定が出やすくなりました。
そんな2014年の有効求人倍率は1.09倍。2021年10月の有効求人倍率は1.15倍ですから、数字で見ると今の方が景気がいいわけです。
とはいえ、コロナ禍により業界の命運が分かれたというのも事実です。
例えばサービス業や観光業は、コロナ禍で大きなダメージを受けています。一方、企業がオンラインやリモートワーク導入を進めたことで、DX関連領域の求人は増加し続けています。
また、転職者の価値観にも変化がありました。
「コロナ禍なのにリモートワークできない会社はどうなの?」
「この不安の中、店舗に立たないといけないのはツラい…」
「会社の将来が不安ななか、手に職を持たないとまずい」
こうしたマインドの変化があったと思います。
これまでは業界や企業への憧れ、ホスピタリティ精神で仕事をやっていた人も、よりシビアに将来を見据えるようになりました。
その結果、若い世代の方々を中心に業界をまたいだ転職活動が増えている印象です。
寺口氏:企業側も、転職市場での未経験者の採用慣れが見られる気がします。
僕は昨年、「転職つぎはどこ。注目スタートアップへの転職実態」という企画を立てました。
スタートアップにはどんな人が集まっているのか。その理由を集約し特集としてまとめています。
最近の転職市場で面白いのが、新たに人材が集まりやすくなっている市場は、BtoBが多いという点です。就職活動ランキングで掲載される、BtoC向けの企業とは全く異なります。
こうした業界をもう一度調べ直すのは、転職活動としても社会を勉強し直す意味としてもいい機会だと感じます。
転職の成功の定義
末永:僕は、転職における成功の定義を次の3つとして捉えているんです。
- 希望の求人に内定獲得
- 入社後の定着・活躍
※入社後、仕事に一定のやりがいを感じながらスキルアップし活躍できる。 - 自己実現
※天職というとやや大げさだが、自分で見つけて探求したいと思えている状態。
転職における成功の定義
3はやや主観的かつ結果論的なものなので、1と2が転職者にとって重要なことだと思います。
寺口氏:僕は2010年に銀行へ入行しました。
銀行時代は、簿記2級を取ったり、社内のマニュアルに詳しくなったりはしましたが、ポータブルスキル=汎用性の高いスキルには不安がありましたね。
その後2社目で株式会社サイバーエージェントに入社します。末永さんのいう成功の定義でいうと、①は達成できましたが②はダメでした。全然活躍できなくて、すぐに辞めちゃったんです。③も考える余地がなかったかなあ。
末永:寺口さんでもそうなってしまったんですね。
寺口氏:話を聞きながら、なぜだろうと考えたんです。そこで僕は、入社後の定着・活躍には3つの「フィット」が必要だと思いました。
- チームフィット
チームメンバーとうまくやれているか - カルチャーフィット
会社全体のカルチャー(企業理念や社風など)に共感できるか - ジョブフィット
仕事内容が少なくとも苦手ではない
人間関係フィットとカルチャーフィットは問題なかったと思います。でも、ジョブフィットができなかった。
当時はリスティング広告の運用と分析、営業を担当していて、コミュニケーションに関わる仕事は好きですが、数値を分析して見出すのはすごく苦手なんです。
大好きなチームや会社に迷惑をかけてしまうと感じて、大きな負担にもなりました。
末永:僕はよく、WhatとHowという2つの観点で話します。
What=なにをするかという観点は、①の考え方に近いんですよね。
好きを仕事にしたい、キラキラした仕事をしたい、伸びている業界で働きたいという思いで企業を選びがちじゃないですか。
それ自体は悪くないですが、その結果が②の定着・活躍とは相関しないことが意外と多いです。
そこで重要なのが、②を持ったうえでHow=どのように働くかを煮つめることだと思います。
具体的には、会社の文化や制度となじむのか、居心地はいいか、実際の業務の流れはどうか、やりがいは感じられるかなどを考えるということですね。
寺口:Howはある意味で、仕事内容に関する情報だと思います。業界未経験の状態で、社外からそうした情報の解像度を高める方法はあるんでしょうか?
末永:OBOG訪問を活用することでしょうか。普通は会社のことをヒアリングしがちですが、転職なら業務フローの詳細、どういう人が活躍しているのかなど、職種軸でヒアリングするのがいいと思いますね。
寺口氏:確かに職種より、どんな会社かばかり聞きがちかもしれないですね。
ハッとしました。
末永:同じ会社、同じ職種の人に聞くのは難易度が高いですが、別の企業でもいいので、同じ職種の人を知り合いで探すというのはひとつの手だと思います。
自己実現、後悔しない転職のポイント
末永:③の自己実現に関して、寺口さんはどう思いますか?
寺口氏:企業の思想と自分の考え・方向性が、ある程度共通していることが重要だと最近考えています。完全一致はないけれど、「重なっている」感覚があって自然とこの会社にいられるみたいな。
それと、僕はいい会社の条件を聞かれるときに決まってこう答えています。「ここでなくても働ける選択肢を持っている人が、あえてここで働いていることを選んでいる会社」。
最近はYOUTRUSTなど、キャリアをオンラインに接続した状態が作れます。そのなかで、知り合いからゆるくオファーを受けているけれど、今の会社で働く選択をする。これがすごく健全な状態じゃないかと思いますね。
こうした考え方が、自己実現につながっていくんじゃないでしょうか。
末永:なるほど。僕は市場価値を目的ではなく手段だと捉えています。
ある程度他社から引き合いがもらえる自分になることは、選択権を持っているということじゃないですか。この選択権があるというのは、主観的な幸福を得るための最低限の切符だと思うんです。
特に重要なのは、寺口さんの話していた「自己決定」じゃないかなと。
意思決定を他人にゆだねても、一定確率で失敗します。自分で全力で意思決定したのなら、失敗しても後悔は少ないんじゃないでしょうか。
寺口:一般的に、企業は4Pで見るという考え方があるじゃないですか。
- Philosophy(理念・目的)
- People(人・風土)
- Profession(仕事・事業)
- Privilege(特権・待遇)
企業の4P
このうち、PhilosophyやPeopleはすごく主観的な観点じゃないですか。一方ProfessionとPrivilegeはきわめて客観的な事実に基づきます。
この4つをごちゃまぜにして、企業のことを見てしまうことが意外と多いです。
「年収は高いのか(低いのか)」ではなく「いくらなのか」で考える。理念や人はテキストから見えないので、感じに行く。
主観を交えて聞くのか、事実を知るのかという情報の取り方を、対象によって使い分けることが重要かなと。
僕は2021年6月から、ワンキャリアで「キャリアの地図」という企画を立ち上げました。
「キャリアの地図」では、さまざまな人たちのキャリアパスを一か所にまとめた地図を掲載しています。
社会人何年目で転職したのか。
過去にどんな職種を経験したのか。
転職先でどんな仕事をしていたか。
こうした転職のサンプルを見ることができます。
「キャリアの地図」には、「転職のきっかけと今の会社を選んだ決め手」も載っています。第三者のフラットな情報を、たっぷり見られるんです。
個人の主観や業界の力学と関係がない、利害関係がない人のキャリアサンプルをたくさん見た方がいい。僕が20代の時にあったらと思ったコンテンツを今頑張って作っています。
会社に定着できることって、実はとても素晴らしいんじゃないか
末永:これまで約数千人の相談を受けてきたなかで、転職の意思決定で陥りがちな思考の癖を9つのパターンに分類してみました。
寺口氏:軽いものも含めれば、全部当てはまりそうです…(笑)。特に20代の転職を繰り返していたころは、①と③が強かったですね。
⑤も少し強かったかな。学生時代は受験勉強を頑張っていたので、進路の決まっていない状態を気持ち悪いと思う傾向がありました。
末永:20代の方々だと⑦も多い気がします。
寺口氏:「癖がある」と認識できれば、予防したり改善する努力ができる気がします。
末永:そうですね。思考の癖のパターンがあると自覚して、意思決定のシーンで意識するだけでも予防できる可能性は上がるかなと。
意思決定が歪むときは、視野狭窄で短期的な視点になりがちです。視野を広げて、長期的視点で正しい決定を取りやすくなると思います。
将来像を考えるとき、僕は「doing」と「being」という話をします。なにをするか(doing)ではなく、こういう価値観の自分であり続ける(being)。その価値観の体現として、3年後5年後どうなるかを考えることがいいのではないでしょうか。
そうやって旗を立てると、現状とのギャップが見えてきます。そのギャップを埋めるための手段はなにか。その軸からブレないようにすることで、冷静な判断ができると思います。
寺口氏:とはいえ、周囲の価値観や承認欲求で転職先を選んでしまいがちですよね。
末永:僕は、まず②を追求することがそうした転職の後悔から脱却するためTipsと思っています。
入った会社に定着して活躍する。こんな素晴らしいことはないんじゃないでしょうか。それができた後、5年10年で定着・活躍したスキルや実績、自信をもとに旗を立てて「こういう自己実現がしたい」となればいいと思うんですよね。
寺口氏:無理せずその会社に定着できるかという、居場所としての相性は重要ですよね。そこで頑張ることで、評価や報酬は後からついてくると。
うちはリモートワークと出勤を選べるんですが、なんとなく出社しちゃうんですよね。なんか寂しくなっちゃって(笑)。皆に会いたくて来ているという側面もあります。
末永:そう思えるだけで素晴らしいですよね。
寺口氏:おそらく、世の中的な「いい会社」というのは、僕が最初に入社した銀行だと思います。
ワンキャリアはまだまだ小さい会社で、知名度も低いです。でも今、僕はここで幸せです。それはきっと、この会社に定着できているからでしょう。
それに、僕の性格や得意不得意を理解して、「どうやったら寺口が活躍できるか」という、僕の取説を理解している仲間もいます。
人を使える・使えないで判断するのではなく「この人はこういう特徴あるから、この仕事が合うんじゃないか」という対話ができる環境が、うちにはあります。
すべての会社で、この環境が整っているとは言えません。「仕事ができる」「仕事ができない」が日常会話になっている会社には、僕は行きたくありません。
会社を見る上で、ちゃんと人を見てくれるカルチャーがあるかどうかも、最低限見たほうがいいと思います。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。