技術士の資格は役に立つ?メリットや難易度・取得方法を解説

  • 2021.05.18

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技術士という資格は日常生活で耳にすることは少ないものの、科学技術者にとっての最難関資格であり、専門的な業界では認知度・信頼度が高い資格です。

技術士の資格を取得すれば、一般企業はもちろん、官公庁や教育機関でも需要が高く、さまざまな場所で活躍することができます。

今回は、技術士の資格の部門の種類や将来性、難易度や取得方法について徹底解説していきます。

技術士の資格とは

技術士は英語で「Professional Engineer」と呼ばれており、その名の通り科学技術のプロフェッショナルの資格です。

公益社団法人日本技術士会では、下記の条件を満たしている人を技術士としています。

    • 技術士第二次試験に合格し、法定の登録を受けていること
    • 業務をおこなう際に技術士の名称を用いること
    • 業務の内容は、自然科学に関する高度の技術上のものであること
    • 業務をおこなうこと、即ち継続反覆して仕事に従事すること

技術士の資格は文部科学省が管轄する資格認定制度であり、この制度は技術士に対する認識を高めて国の技術発展を目指すことを目的としています。

この資格を取れば、技術コンサルタントや文部科学省認定の業務担当者として活躍することができます。

技術士21部門の概要

技術士資格の試験は、下記21部門のうち自分の分野の専門科目を選択します。

部門名 専門科目
機械部門 材料力学/機械力学・制御/熱工学/流体工学
船舶・海洋部門 材料・構造力学/浮体の力学/計測・制御/機械及びシステム
航空・宇宙部門 機体システム/航行援助施設/宇宙環境利用
電気電子部門 発送配変電/電気応用/電子応用/情報通信/電気設備
化学部門 セラミックス及び無機化学製品/有機化学製品/燃料及び潤滑油/高分子製品/化学装置及び設備
繊維部門 繊維製品の製造及び評価
金属部門 鉄鋼生産システム/非鉄生産システム/金属材料/表面技術/金属加工
資源工学部門 資源の開発及び生産/資源循環及び環境
建設部門 土質及び基礎/鋼構造及びコンクリート/都市及び地方計画/河川、砂防及び海岸・海洋/港湾及び空港/電力土木/道 路/鉄道/トンネル/施工計画、施工設備及び積算/建設環境
上下水道部門 上水道及び工業用水道/下水道/水道環境
衛生工学部門 大気管理/水質管理/環境衛生工学(廃棄物管理を含む)/建築衛生工学(空気調和施設及び建築環境施設を含む)
農業部門 畜産/農芸化学/農業土木/農業及び蚕糸/農村地域計画/農村環境/植物保護
森林部門 林業/森林土木/林産/森林環境
水産部門 漁業及び増養殖/水産加工/水産土木/水産水域環境
経営工学部門 経営管理/数理・情報
情報工学部門 コンピュータ科学/コンピュータ工学/ソフトウェア工学/情報システム・データ工学/情報ネットワーク
応用理学部門 物理及び化学/地球物理及び地球化学/地質
生物工学部門 細胞遺伝子工学/生物化学工学/生物環境工学
環境部門 大気、水、土壌等の環境の保全/地球環境の保全/廃棄物等の物質循環の管理/環境の状況の測定分析及び監視/自然生態系及び風景の保全/自然環境の再生・修復及び自然とのふれあい推進
原子力・放射線部門 原子力/放射線/エネルギー
総合技術監理部門 安全管理/社会環境との調和/経済性(品質、コスト及び生産性)/情報管理/人的資源管理
(※2次試験のみ)

一口に技術者といっても、さまざまな種類があります。技術者の資格を取得する際は、上記の中から専門科目として1つを選び試験を受けます。

技術士と技術士補の違い

技術士補とは、技術士試験の1次試験に合格した人を指します。特定の教育課程を修了していれば1次試験が免除され、試験を受けずに技術士補に登録することもできます。

技術士の1次試験に合格してもあくまで技術士補であり、応用力を試される2次試験に合格して初めて技術士として名乗ることができます。

技術士の資格を取得するメリット

技術士は日本の五大国家資格の1つとも言われ、この資格を保有していることで高い信頼を得ることは間違いありません。

試験の難易度が高い分、技術者の資格によって豊富な知識と経験を証明できるため、就活で有利になることが資格取得の最大のメリットだと言えるでしょう。

就活に有利になる理由は、企業側のメリットを知るとわかりやすいです。

企業側は技術士を雇うことで会社の信頼度がアップしたり、技術コンサルタントなど業務の幅が広がったりと、メリットがたくさんあります。

公共事業の場合、技術士を雇っているかどうかが企業の評価につながるケースもあり、技術士を多く雇っていれば官公庁の大きなプロジェクトにも携わるチャンスが高くなることもあります。

また、技術士の資格を取ればアドバイザーやコンサルタントとしても活躍することができるため、会社という枠組みを飛び越えて仕事をすることも可能ですよ。

技術士資格の想定収入と将来性

技術士の平均年収はどのくらいなのでしょうか?

厚生労働省の令和元年の賃金構造基本統計調査によると、技術士の年収は男性で平均632万3,400円、女性で平均542万8,600円でした。全国平均と比較して高い水準にあることがわかります。

技術士の将来性は高く、とくに建設関係で今後需要が伸びていくことが考えられます。実際に、建設部門の技術士は資格がないとできない業務があったり、資格があれば手当を得られる企業があったりします。

他の国家資格に比べて知名度は低いものの、なくてはならない業務を担う技術士の需要が消えることはないでしょう。

技術士資格の試験内容

技術士の資格試験は1次試験と2次試験に分かれており、技術士として認められるには両方に合格する必要があります。

1次試験では、設計理論やアルゴリズム、バイオテクノロジーなどの「基礎科目」、技術士法第四章の規定の遵守に関する「適性科目」、そして21部門のうち総合技術監理部門を除く20の専門分野から1つを選択する「専門科目」の3つが問われます。

これらの1次試験の内容は、大学のエンジニアリング課程(工学、農学、理学等)修了程度と同じです。

2次試験では、あらかじめ選択する必須科目と選択科目についての応用試験がおこなわれます。それらの中には、業務全体を俯瞰して総合的な判断をおこなえる能力を問う「総合技術監理部門」の試験も含まれます。

2次試験には口頭試験もありますので、1次試験に比べてより専門的な応用能力が問われ、難易度はより高くなります。

技術士資格の難易度

科目によって合格率は異なりますが、1次試験の合格率は低いもので25%、2次試験の合格率は低いもので7.4%です。

公益社団法人 日本技術士会によると、令和元年の全体の合格率は、1次試験が30.9%、2次試験が9.2%でした。

1次試験は大学卒業レベルの知識を身につけることで合格できますが、2次試験は口頭試験があり、実務経験も問われるため、難易度が一気に上がります。

技術士合格者の平均年齢

技術士合格者は40歳以上が多いです。これは、2次試験合格のために実務経験も必要になるためです。

しかし、1次試験の合格者は意外にも若年層が多いです。令和2年度の合格者は20代が50%ともっとも多く、合格者の平均年齢は32.3歳でした。

2次試験に関しては、合格者の平均年齢は40代前半ですが、30代の合格者は40代の合格者とほぼ同じ割合でいるため、決して40歳にならないと合格できないわけではありません。

技術士の合否基準

文部科学省の発表によると、技術士の1次試験の合否基準は、基礎科目、適性科目、専門科目いずれも50%以上となります。

2次試験においては、筆記試験と口頭試験どちらも60%以上で合格となります。

技術士の資格の取得方法

ここからは技術士の資格の取得方法について解説していきます。

技術士資格の受験資格

技術士の資格を取得する際に、1次試験は年齢や学歴、業務経歴に関係なく誰でも受験することができますが、2次試験は受験資格が定められています。

2次試験の受験資格は下記3つになります。

    1. 技術士1次試験の合格以降、技術士補として、総合技術監理部門を受験する場合は7年以上、そうでない場合は4年以上、技術士を補助している
    2. 技術士1次試験の合格以降、監督者の下で、科学技術に関する業務について、総合技術監理部門を受験する場合は7年以上、そうでない場合は4年以上、従事している
    3. 科学技術に関する業務について、総合技術監理部門を受験する場合は10年以上、そうでない場合は7年以上、従事している

上記を満たした場合のみ2次試験を受験することができ、無事2次試験に合格して初めて技術士として登録することができます。

技術士を取得するまでの時間

技術士試験に合格するために、どれくらいの時間勉強すれば良いのでしょうか?

技術士は座学だけでなく実務も必要になるため、必要な勉強時間を推定することは難しいですが、おおよそ1,000〜2,000時間だと言われています。

技術士は知識を丸暗記すれば合格するものではなく、考え方が試される試験です。そのため、合格までにどうしても数年の期間が必要になります。

逆に言えば、技術士の思考さえマスターすれば、あとは専門知識を数百時間程度で身につければ、合格できる資格でもあります。

技術士資格に合格するためのコツ

技術士資格に合格するためのコツは以下の3点です。

それぞれ解説していきます。

過去問を解いて傾向を掴む

技術士の資格を取得するための手段でもっとも効果的なことは、とにかく過去問を解くことです。過去問を解けば試験の傾向がわかり、技術士に求められる考え方も理解することができるでしょう。

また、解説を読むことで効率的に知識を得ることができます。

苦手分野を重点的に取り組む

勉強を進めると苦手分野が出てくるはずです。

例えば、基礎科目と適正科目は得意だが、専門科目は苦手などです。できないと諦めるのではなく、苦手な部分にこそ時間をかけましょう。

読むだけでなくノートを活用する

間違えやすい問題は、正解の要点をノートにまとめることで記憶しやすくなります。

類似問題が出た時に慌てず解くことができたり、試験当日や直前の見返しにも活用することができます。

技術士資格のオススメ問題集

技術士の参考書はたくさんありますが、その中でもオススメの本を2冊ご紹介します。

技術士教科書 技術士 第一次試験 出るとこだけ! 基礎・適性科目の要点整理 第2版

技術士の1次試験で出題される問題を徹底分析し、重要テーマを絞り込んだ問題集です。

頻出テーマの過去問題を解くことで効率よく確実に得点力が身につけることができます。

例題練習で身につく 技術士第二次試験論文の書き方 第6版

苦手意識を持つ人が多い2次試験の論文対策に特化した問題集です。

科目別のポイントや出題傾向を知ることで、論文を簡潔にわかりやすく構成するスキルが身に付きます。

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この記事を書いた人

すべらないキャリア編集部


「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。

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