MECEとは?フレームワークやアプローチの手法について解説!

  • 2021.05.17

目次

目次を開く

MECEはビジネスシーンにおいて大切な考え方で、ロジカルシンキングの基本としても知られています。

しかし、MECEという言葉はなんとなく知っているけれど、具体的にどのような意味や目的を持っているのか、MECEの状態にするために必要な考え方やフレームワークについて知っている人は案外少ないです。

そこで、本記事ではMECEについて理解を深め、実践でも活用していけるようにMECEの基本的な考え方や具体例、MECEに考えるために有効なフレームワークなどを解説していきます。

本記事を読むことで、MECEに関する基本的な考え方や具体的な手法・フレームワークについて理解し活用することができるようになるので参考にしてみてください。

MECEとは?

MECE(ミーシー)は「Mutually Exclusive Collectively Exhaustive」の略称で、「それぞれ(Mutually)」「かぶらず(Exclusive)」「まとめて(Collectively)」「余すところがない(Exhaustive)」の頭文字を取って「MECE」と呼ばれています。

また、MECEは「漏れなくダブりなく」という意味が共通の認識となっており、物事の分類化やパターン化をおこなう際に活用され、ロジカルシンキングにおいて大切な考え方とされています。

MECEがなぜ必要とされているのか?

MECEは物事の分類化やパターン化に役立つことから、要素の分類やパターン化をおこなう頻度の高いマーケティングや営業、コンサルティングなどの仕事で活用されています。

これらの仕事において、『網羅性』は必須事項と言える要素なため、漏れなくダブりなくを実現していくために必要な考え方が重要視されてきました。

活用例として、下記3つが挙げられます。

    • マーケティングにおける課題と施策の立案
    • 営業戦略における顧客リストの適正化
    • コンサルティングにあたり企業の課題の抽出

上記のように、業務の分類や問題解決をおこなう際に活用することができるMECEの考え方は、網羅性を高め適切な行動のためにも必要とされています。

そのため、MECEの考え方を理解しておくことは、仕事を確実かつスムーズに進める上で必要だと認識されているのです。

MECEの基本的な考え方と具体例

MECEは、「漏れなくダブりなく」を意識するために活用される考え方で、判断するための指標は以下の4つに分かれます。

MECE

それぞれの内容について理解しやすいように、『経常利益の計算式』を例に考えてみましょう。

漏れがあり、ダブりがない状態

この状態は、特定の要素が不足している状態を表します。

経常利益の計算式でいうと、たとえば「経常利益=営業利益+営業外収益」という状態です。

各要素はそれぞれ違う意味合いがあるのでダブりはありません。

しかし、大事な「営業外費用」という項目が抜けているので漏れがあります。

漏れがなく、ダブりがある状態

この状態は、同じ意味合いを持つ要素が重複している状態を表します。

上記と同様、経常利益の計算式にあてはめると「経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用-支払利息」という形です。

この計算式では必要な要素はすべて含まれているため、漏れはありません。

しかし、最後の「支払利息」は「営業外費用」に含まれる項目なので、同じ費用を2回差し引いてしまっている(ダブりがある)ということになります。

漏れがあり、ダブりもある状態

この状態は特定の要素が不足し、さらに要素が重複している状態を表します。

経常利益の計算式だと「経常利益=営業利益-営業外費用-支払利息」の形で「営業外費用」の項目がないので漏れがあり、「支払利息」は「営業外費用」に含まれる項目なので、ダブりもあります。

そのため、適切な計算ができず算出される情報も間違っているため、この状態の情報を参考にしてしまうと、会計の数字全体の修正をするなどのリスクが発生するため注意が必要です。

漏れがなく、ダブりもない状態(MECE)

経常利益の計算をおこなう場合には、「経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用」が正しい計算式です。

この計算式は、式を完成させるためのそれぞれの要素が不足しているわけでもなければ、同じ要素が重複していることもありません。

よって、「MECEに則っている」と判断することができるでしょう。

MECEに考えるためのオススメフレームワーク5選

ここまで、MECEに関する基本的な考え方などについて解説してきました。

では、実際にMECEに考えるためにはどのようにすれば良いのでしょうか。

ここでは、MECEに考えるためにオススメの5つのフレームワークについて詳しく解説していきます。

3C分析

3C分析とは、3種類のビジネス環境をもとに適切な戦略を構築するためのフレームワークです。

ビジネス環境は次の3つに分類されています。

    • 市場環境(Customer)
    • 自社環境(Company)
    • 競合環境(Competitor)

市場環境を分析することで主に大まかなニーズを把握することができます。

そこから競合の強みや弱みを分析し、「自社は独自にどんなことができるのか」と戦略を打ち立てていくのです。

3C分析のやり方とは?効果をあげる方法と成功するコツを紹介

4P分析

4P分析とは、4つのマーケティング要素から最適なビジネス戦略を策定するためのフレームワークです。

マーケティング要素は次の4種類に分かれます。

    • 提供する製品(Product)
    • 製品価格(Price)
    • 製品を提供する場所(Place)
    • 製品を提供する方法(Promotion)

つまり、「どこで・何を・いくらで・どのように販売するか」を決定する方法といえるでしょう。

各要素に則ってマーケティング戦略を構築することで、最適なタイミングや環境で最適な商品を提供できるようになります。

ファイブフォース分析

ファイブフォース分析とは、ビジネス環境の5つの脅威を分析することで、新規参入や撤退の判断に役立つフレームワークです。

次のように、ビジネス環境には5つの脅威が存在しています。

    • 業界内の脅威
    • 新規参入の脅威
    • 代替製品の脅威
    • 売り手(自社内)の脅威
    • 買い手の脅威

たとえば、誰でも簡単に事業を開始できる業界は新規参入の脅威が高いといえます。

そうした業界は値下げ競争に巻き込まれやすいため、算入する前に経営基盤を整えておかければなりません。

このようにそれぞれの脅威を可視化することで、次の行動を明確に判断しやすくなります。

PPM分析

PPM分析とは、特定の商品やサービスの市場占有率と市場成長率を基点に分類をおこなう方法です。

PPM分析では以下の4つに分類されます。

    • 占有率が高く成長率が高い:金のなる木
    • 占有率が低く成長率が高い:花形商品
    • 占有率が高く成長率が低い:問題児
    • 占有率が低く成長率が低い:負け犬

リリースした商品やサービスは必ず成長サイクルを描きます。

一時は好調な売れ行きを記録していた商品でも、時期が過ぎれば売上も停滞することが基本です。

そのため、占有率と成長率がともに低下している商品ほど早めに見切りをつけ、新しい製品開発に取り組む判断が必要になります。

SWOT分析

SWOT分析とは、周囲のビジネス環境と自社の経営リソースを分析して、正しい戦略構築に導くためのフレームワークです。

SWOTは次のような4種類の言葉から成り立っています。

    • 自社の強み(Strength)
    • 自社の弱み(Weakness)
    • 周囲のビジネス環境における機会(Opportunity)
    • 周囲のビジネス環境における脅威(Threat)

分析した内容を参考に、機会に対して自社が強みを持つ商品やサービスを適切に提供できればそれだけ売上の増加につながる可能性があるため、さまざまビジネスシーンで活用されています。

また、SWOT分析は、ビジネス環境について分析する『3C分析』やビジネスにおける脅威を分析する『ファイブフォース分析』と非常に相性がよく、上手く活用することでより効果を上げることにつながるでしょう。

MECEを使いこなすための2つの手法

MECEを使いこなすには、大きく分けて2種類の手法が存在します。

ビジネスシーンで「トップダウン」と「ボトムアップ」という言葉を聞いたことがある人もいると思います。

組織の上層からの意思決定が反映されるトップダウン、現場から意見を吸い上げて意思決定をおこなうボトムアップ、どちらも経営的手法として活用されることも多いですが、その考え方はMECEにも応用することが可能です。

それぞれの活用法について解説していきます。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチとは、物事のゴールから細かい要素を検出していく方法で、目標を明確にしやすい人材育成の場面などで活用されています。

たとえば、『残業時間を月間20%削減する』という組織全体の目標があったとしましょう。

トップダウンアプローチでは、この全体目標から遡る形で各要素を洗い出していきます。

『残業時間を月間20%削減する』という目標の場合には、『社員の業務効率改善や業務配分方法の再考』『残業を承認制に変更』などの要素が浮かび上がります。

また、浮かび上がった要素をロジックツリー方式にさらに細分化させることも可能です。

トップダウンアプローチでは、ゴールから遡って掘り下げていくため、全体像が明確になり課題に対して体系立てて考えることができる点がメリットといえるでしょう。

ボトムアップアプローチ

ボトムアップアプローチとは、ブレインストーミングなどで複数の要素を顕在化させてから、要素をまとめてゴールを明確にしていく方法です。

このアプローチ方法は、ゴールが不明瞭でイメージしにくいときに役立てることができます。

たとえば、3C分析から経営戦略を構築する場合には、市場・自社・競合と複数の要素の検証から始めます。

また、分析をする中で、市場のニーズに対して競合が特定の分野に弱みがあるとき、自社は逆にそれを強みにして競合と戦うという選択が可能です。

このときに、「自社の強みを○○というニーズに適合させる」という一つのゴールが生み出すことにつながるでしょう。

しかし、ボトムアップアプローチでは、枠組みがない状態で複数の要素を出していくため漏れが生じやすいというデメリットもあります。

そのため、できる限りフレームワークなどあらかじめ枠組みが定まった形式で利用すると良いでしょう。

ブレストを成功させる4つのルール!やり方やポイントを徹底解説

MECEに考えるために有効な4つの分解方法

トップダウンやボトムアップといったアプローチ方法を決めた後は、要素を細分化していきます。

具体的には、MECEは次のような4つの方法で要素の細分化することが可能です。

それぞれについて解説してきます。

要素分解

MECEの基本的な手法として、『要素分解』が挙げられます。

要素分解とは、一つの要素を細かく分けて幅広い要素を生み出していく方法です。

たとえば、「業務効率改善」という要素のなかには「ITツールの導入」や「タスク管理の実行」といったさらに細かい要素が含まれています。

そして、「30代女性」の要素では、「専業主婦」や「OL」などに細分化できるでしょう。

このように細かい集合要素に分けていくことができるため、トップダウンアプローチと相性の良い方法になります。

時系列・段階で分ける

営業やマーケティングでMECEを利用するには、要素分解を特定のカテゴリーに分ける必要があります。

その際に活用されるのが、『時系列・段階で分ける』という方法です。

たとえば、Webマーケティング戦略を構築するときは、顧客が購買に至るまでの行動を以下のようにプロセス化しなければいけません。

    • アプローチフェーズ :SNS広告を用いてターゲティングした層の顧客にサービスの告知をおこなう
    • 購入フェーズ   :LPで商品の魅力や購入特典をアピールする・購入までの流れをわかりやすく簡素化する
    • アフターフォロー :サポート体制を構築して安心して利用してもらえるようにする

このように、一つ一つのプロセスを時系列や段階に分けて分類していくことで、抜け漏れなく適切な要素の分類をしていくことができます。

また、時系列・段階で分けることで体系立てて考えていくことができるため、ボトムアップアプローチをおこなう際に抜け漏れを少なくすることにもつながるので活用していくと良いでしょう。

対照概念

『対照概念』は、特定の要素の反対または対照的な要素を挙げて、思考の幅を広げていく方法です。

たとえば、

    • マーケティング戦略を立案する際、メリットについて挙げた場合にはデメリットも併せて考える
    • 商品企画の時にToB中心にアイデアが上がっていたら、ToC向けのアイデアがないか検討する

このように対照的な視点から物事を考えていきます。

対照概念は、アイデアを出していく際に発想の幅を広げることで、抜け漏れを少なくすることにつながるため、戦略や企画の検討をする際に活用されることが多い方法です。

因数分解

『因数分解』は、細分化したい要素について、計算式で表して要素を分解していく方法です。

因数分解を活用することで各要素を式にあてはめていくことで、MECEの形を整えていくことができます。

因数分解は計算式を用いて数字を算出していくため、情報を客観的に判断することができ、マーケティング戦略や経営戦略を考える際にも活用されています。

また、計算式はある程度の型を覚えてしまえば、他の方法よりも抜け漏れを少なくすることにつながるため、積極的に活用していくと良いでしょう。

MECEに考えるためのトレーニング方法3選

ビジネスにおいて物事をMECEに考えるには、日頃から簡単なトレーニングをおこなっておくことが大切です。

そのため、本項ではMECEに考えるためのトレーニング方法について紹介していきます。

本項で紹介する3つのトレーニングを実践することで、論理的な思考力を養うことができるので参考にしてみてください。

ロジカルシンキングを実践する

1つ目のトレーニング方法は、『ロジカルシンキングを実践すること』です。

ロジカルシンキングとは、起承転結のように物事の全体像を構造的に組み立てて思考する方法のことを指します。

MECEに考えるためには、物事を体系立てていく必要があるため、ロジカルシンキングはMECEに考えるために必要な要素といえるでしょう。

また、ロジカルシンキングを実践する場合には、以下のポイントを意識してみるとよりロジカルに考えることができるのでオススメです。

    • 事実に基づいた結論を出す
    • 複数の事実の共通点がないかを意識する
    • 物事の肯定だけではなく否定意見を踏まえて考える

物事を俯瞰的に見るようにする

MECEに考える際に重要なのが、『物事を俯瞰的に見ること』です。

MECEに考えるために要素を細分化していると、どうしても細部にばかりに注目してしまいます。

とくに、ボトムアップアプローチなどの不明瞭な事柄について情報を出している時は、全体像を俯瞰的に見ることができていなければ、細分化をしても本質からずれてしまう可能性もあります。

そのため、集中して考えている時には、意識的に俯瞰的な視点で物事を捉えて、ロジカルに考えることができているか見極めるようにしていきましょう。

フレームワークを積極的に活用していく

MECEに考えるためには、フレームワークを活用していくことは必要不可欠です。

しかし、フレームワークも普段から利用していない場合、MECEに考えるために利用したとしても上手く活用できない場合もあるでしょう。

また、実務において1つのフレームワークだけで分析が完結することは少なく、複数のフレームワークを活用して情報を分析したり、関連性の高いフレームワークを使って効率的に分析したりする場合もあります。

そのため、実務で使う場合でもしっかりと活用できるように、普段からフレームワークは積極的に活用して慣れておくと良いでしょう。

MECEを活用する際のポイントや注意点

MECEの考え方は、多くのビジネスシーンで活用することができるため、万能に思えるかもしれません。

しかし、実は対応しきれない分野もあるため、本項ではMECEを活用する際のポイントや注意点として以下の3つについて解説していきます。

フレームワークが全てではない

前述で、MECEに考えるためには積極的にフレームワークを活用していくと良いと解説しましたが、あくまでフレームワークは物事を効率的に考えるための方法です。

そのため、「フレームワークを活用して何を知りたいのか」「このフレームワークはどのような場面で活用できるのか」というような、基本的な考え方を意識して活用しないと、目的の効果を得ることができない場合もあります。

なので、「とにかくフレームワークを利用する」という考えではなく、目的に応じて有効なフレームワークを活用できるように、それぞれの特性を把握しておくことを忘れないようにしましょう。

MECEの細分化をする場合には切り口を混合させない

MECEの細分化をおこなう際に4つの分解方法について解説しましたが、実際に活用する際には複数の分解方法を同時並行ではなく、一つ一つ目的に分けておこなうことが大切です。

分解方法も、フレームワークと同様で、あくまでMECEに考えるために必要な手法であり、上手く活用できないと逆に抜け漏れが発生してしまう可能性もあります。

そのため、分解する際にはまず一つの切り口で細分化していき、必要であれば目的に応じて分解方法を活用していくようにしましょう。

MECEは万能ではないことに気をつける

物事の分類化やパターン化に役立つMECEですが、決して万能な存在というわけではないので注意が必要です。

例えば、最近注目を集めているVAPE(バイプ)という加熱式タバコは、一般的な加熱式タバコと異なり、ニコチンやタールが含まれていないため、タバコ製品には該当しません。

このような場合、VIPE(バイプ)はどのような商品ジャンルに該当するのかが曖昧になってしまうケースもあります。

そのため、MECEが必ずしも万能というわけではなく、対象によっては活用できない場合もあるということは覚えておきましょう。

まとめ

以上、ビジネスシーンで重要な考え方とされているMECEについて詳しく解説してきました。

「漏れなくダブりなく」の考え方が基本となるMECEは、物事の分類やパターン化をおこなうときに大きな効果を発揮します。

とくに分類作業の多い営業やマーケティング・コンサルティングの仕事では、MECEに考える思考法が非常に重要なため、本記事で紹介した2つのアプローチ手法や4つの分解方法などを参考に、MECEを役立ててみてください。

この記事をシェアする

この記事を書いた人

すべらないキャリア編集部


「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。

この記事と同じカテゴリーの記事