目次
GoogleやFacebook、Twitter、Uberといった外資系急成長企業や、メリカリ、サイバーエージェントが導入・活用しているOKRは、近年大きく注目されている目標管理法です。
OKRの目的や導入や運用のポイント、従来の代表的な目標管理手法であるMBOやKPIとの相違点、また、適切に運用するために必要不可欠な便利ツールを紹介します。
OKRとは?
OKRとは、達成すべき目標と、達成に必要となる具体的な成果を設定・共有することで高い目標達成を実現する目標管理手法の一つです。
Objectives and Key Resultsの略で、日本語では「目標と主要な成果」と訳します。
アメリカの大手半導体メーカーであるインテルにて誕生した考え方で、GoogleやFacebook、Twitterといった世界中の有名企業をはじめ、日本でも実際に導入し成果を挙げた企業が出てきたことから、近年注目を集めています。
OKRの仕組み
OKRは、ひとつの大きな目標(Objective)と、目標達成のために実現すべき主要な成果(Key Results)のセットから成り立ちます。
OKRは会社全体で達成すべき大きな目標を、部や課、個人単位で細かく噛み砕き、各組織で達成すべき目標に設定していくことが特徴です。
目標と、主要な成果の設定ポイントとしては以下の通りです。
- 具体的な数字は入れず定性的な目標にする
- メンバーのモチベーションを挙げるようなチャレンジングでポジティブなもの
- 短期間(1~3ヶ月程度)で達成できるレベルのもの
- 全力で取り組み、60~70%の達成度となるような目標にする
目標
- 計測可能、かつ具体的な数値で成果を表現する
- 1つの目標に対して、主要な成果は2~5個程度が適切
- 目標と同じく、メンバー全員がベストを尽くした結果60~70%程度の達成率となること
主要な成果
また、OKRの達成状況は毎月もしくは4半期に1回程度の頻度で定期的にレビュー・見直しを実施します。
OKRの目的
OKRでは会社全体や上位組織の目標を定めたのち、その達成を成し遂げるために必要となる目標を自組織、および下位組織ごとに設定します。
ピラミッド状に目標を設定することで、各組織や各メンバーは目標達成に向けたそれぞれの役割を主体的に認識させることが可能です。
また、達成進捗や評価は全てのメンバーに広く共有することで、組織の一体感を高め、各組織・メンバーの貢献度を向上させることも目的としています。
OKRとMBO、KPIとの違い
目標管理手法として、従来使われていたMBOやKPIとOKRは何が違うのでしょうか?
ここからは、OKRとMBO・KPIとの違いを詳しく解説します。
OKRとMBOの違い
MBOとは主に人事考課をするために利用される目標管理手法です。
経営学者のピーター・ドラッカーが発案した考え方で、対象期間のうちに達成すべき目標と、その達成状況を管理します。
社員のモチベーション向上、育成に効果が期待できるとして、多くの日本企業で取り入れられています。
OKRとの大きな違いは目標設定水準です。
OKRでは初期設定時の目標や成果は60~70%の達成度となるように設定します。
対してMBOでは、100%達成となることを目指し現実的な数値を設定することが特徴です。また、人事評価・報酬と直結している点もOKRと異なります。
OKRとKPIの違い
KPIは最終的な目標(KGI:Key Goal Indicator)を達成するための中間目標を定めたもので、従来業務管理のための手法として、よく利用されてきました。
KPIではMBOと同じく必ず達成できる目標(達成度が100%となる目標)を設定するので、チャレンジ目標を掲げるOKRとは異なります。
また、KPIはあくまでも自組織内、個人の達成目標となるので、OKRのように会社全体での目標設定やビジョンの共有というのは想定されていません。
KPIについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も合わせてご覧ください。
OKRのメリット
OKRを導入すると、どのようなメリットがあるのかについて、具体的な例を出しながら紹介します。
自社の目標管理方法を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
社員のやるべきことが明確になる
OKRでは、1つの目標に対してどのような成果を出せばいいのかをセットで記載します。
そのため、どのような成果が求められるのかが分かりやすく、各人が何をすべきなのかが明確です。
また、具体的かつチャレンジングな目標設定なので、社員一人一人のモチベーション向上・維持にも繋がります。
社員と組織の方向性が合致する
OKRでは、会社全体の大きな目標を、各統括・部・課・チームといった組織、個人レベルにまでブレイクダウンしながら目標設定をします。
そのため、個人の目標達成=会社全体の目標達成となるため、社員全員が同じ方向を見て、業務に取り組むことが可能です。
社員の頑張りが会社の利益・成果に直結するため、貢献度ややりがいを感じやすいといったメリットもあります。
組織が活性化する
会社全体の目標達成に向けて、チーム・個人目標が設定されるため、会社全体の一体感が生まれます。
また短期スパン(毎月~四半期)で目標達成状況を評価、見直しを繰り返すので、組織の一員として目標に貢献しているという達成感や愛着心・愛社精神(エンゲージメント)を高める効果が期待できます。
OKRのデメリット
企業の目標管理ツールとして優秀なOKRですが、デメリットも存在します。
OKR導入を検討される場合は、メリットとともにデメリットの内容をしっかりと理解しておくようにしましょう。
少人数の組織にはマッチしない
比較的小規模な会社組織で、社員がいくつもの業務を掛け持ちしている場合、そもそもOKRでの目標設定が困難です。
そのため、少人数の組織にOKRを導入しても、大きなメリットは感じられません。
時間や手間がかかる
OKRでは個人・組織の目標を設定する上で、上位組織の目標・ビジョンを共有することが重要です。
そのため、一から始めようとする場合、目標内容の落とし込みや浸透に時間がかかることが予想されます。
また、他の目標管理手法と異なり、OKRでは短期間での評価レビューが必要です。
日々の業務をこなすのに手一杯で、目標管理運営まで手が回らないという状況では、OKR導入は困難です。
目標が高いため社員のモチベーション低下につながる
OKRでは全力で取り組んで60~70%の達成度となるような高い目標を設定します。
MBOやKPIでは100%の達成度を良しとするので、従来のやり方に慣れている社員ほど目標未達の状態が続くと仕事へのモチベーションを落としてしまうことがあります。
OKRの目的や仕組みをあらかじめ共有し、全社員が納得するまで話し合いの場を持つことが大切です。
OKRを導入するポイント
ここからは実際にOKRを導入するにあたって、押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
使命や目的を明確にする
OKRは会社全体の目標と連動させて、下位組織・個人目標を設定します。
そのため、上位組織のミッションや目的・ビジョンが不明瞭では、目標や達成すべき成果を定めることはできません。
OKR導入を成功させるためには、あらためて会社の目指す将来像や道筋を、正しく全社員に共有・浸透させることが重要です。
コミュニケーションをとる
OKRにおいて、目標や成果は一部の社員だけで決めるものではありません。
全ての社員が目標・成果に納得できるようにすることが大切で、社員の意見も取り入れながらボトムアップで目標設定をしていくことも重要です。
上下や横の繋がりを大切にし、しっかりとコミュニケーションをとることで一体感のある目標設定ができます。
また、信頼関係が構築出来ていれば、目標達成のために社員自らコミュニケーションをとり、意欲的に業務に取り組む効果も見込めます。
運用しながら改善する
OKRでは高い目標を設定することが大切ですが、あまりにも現実とかけ離れた目標では、社員のモチベーションを下げ逆効果になってしまいます。
そのため、定期的な評価・レビューを行う中で実態と合っていないと判断した場合は、問題課題の明確化、改善点の分析、目標の見直しを繰り返しながら運営していくことが肝心です。
おすすめのOKR管理ツール
OKRを導入するのであれば、管理ツールやシステムの利用が便利です。
目標設定が見やすく、ビジュアルで進捗状況を確認・共有できるので、OKRを導入するのであれば管理ツールの利用も合わせて検討しましょう。
ここからは、おすすめのOKR管理ツールを5つ紹介します。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートは、Googleアカウントを所有していれば誰でも利用可能な業務管理ツールです。
OKRに特化したツールではないので見せ方を工夫をする必要はありますが、導入ハードルも低くお試しで使ってみるには最適でしょう。社員同士でのシート共有・共同編集も可能です。
Resily
Resily(リシリー)はクラウド型のOKR管理ツールで、国内の多くの企業で導入された実績があります。
カラフルな色で達成度が見える化されていたり、マネージャー向け企業として配下メンバーの目標一覧や達成度を俯瞰して見える機能があったりと、OKR導入に必要な機能が備わっているのが特徴です。
OKR設定のワークショップや、ツール導入支援も充実しているので、初めてOKRを導入する企業でも安心できるでしょう。
HRBrain
HRBrain(HRブレイン)はクラウド人材管理システムで、OKR管理だけでなく人事評価やタレントマネジメントなど、人事業務の効率化や活性化を目的としたシステムです。
使いやすいUIが特徴で、直観的に操作ができます。
クラウドサービスに接続できるネットワーク環境さえあれば即日導入可能であり、14日間の無料お試しも可能なので手軽に利用できる点もメリットです。
カオナビ
カオナビはクラウド型の総合人事管理システムです。
システム名の通り、社員の顔写真が画面一覧に表示されるのが特徴です。
社員ごとのスキル・評価、業務実績など、OKR管理はもちろん人事業務を一元管理できます。
クラウドサービスなのでテレワーク中でも社員管理がしやすいのがメリットといえるでしょう。
Goalous
Goalous(ゴーラス)はOKR管理に特化したSNS型目標管理ツールです。
社員は目標(ゴール)に対する日々の活動内容をアクションとして共有し、他の社員から、いいね!やコメントを受け取ることができます。
社員一人一人が目標達成に向けて自発的に楽しく取り組むことができ、社員間のコミュニケーション活性化や共通理解の促進が期待できます。
OKR管理ツールを導入するポイント
OKR管理ツールを導入する上で気を付けたいポイントは、以下の3つです。
- 多くの社員が利用することを想定し、誰もが使いやすいかどうか
- 組織の特性に合わせてカスタマイズできるかどうか
- 導入時や運用中のサポートが充実しているかどうか
また、使ってみて初めて理解できる使い勝手もあるため、無料お試しができるかどうかも検討しましょう。
OKRを理解するのに役立つおすすめ書籍3選
OKRについて理解するために役立つ書籍を3つ紹介します。
webでは断片的な情報収集になりがちなので、OKRについて体系的に学びたい方は、ぜひ参考にしてください。
OKR(クリスティーナ・ウォドキー)
書籍の前半はシリコンバレーを舞台としたスタートアップ企業の物語、後半はOKR導入運営における具体的なノウハウが紹介されています。
単純な概要説明や導入事例の紹介ではなく小説として楽しむことができるので、OKRに初めて触れる人でも、感覚的に理解することが可能です。
Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR(ジョン・ドーア)
世界的ベンチャー・キャピタルを所有する著者がOKRの活用メソッドを解説しています。
シリコンバレーの有名企業をはじめ数多くの成功事例が紹介されており、OKRを体系的に理解したいのであれば、ぜひ読んでおきたい一冊です。
Googleで実際に設定されている目標も掲載されているので、参考になるのではないでしょうか。
本気でゴールを達成したい人とチームのための OKR(奥田 和広)
組織を率いるリーダーに向けて、自チームの組織力向上としてOKRを紹介した一冊です。
単純な事例紹介ではなく、OKRの考え方や理由、取り組み方を中心に丁寧に解説されています。OKRについて、より理解を深めたい方におすすめです。
まとめ
OKRは効率的に目標達成するためには優れた目標管理法です。
メンバーに馴染むまで時間がかかるなどのデメリットもありますが、企業と社員が一体感を持って目標達成に向かうことができるのは大きなメリットです。
従来の評価制度に加えてOKRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。