目次
多くの企業で注目されているメンター制度。
人材育成施策としてだけでなく、組織の活性化も期待できるため導入をする企業が増えています。
メンター制度とはどのような制度なのでしょうか。メンター制度の導入手順や運用のポイントなども紹介します。
メンター制度とは?
メンター制度とは、上司とは別に経験を積んだ先輩社員が後輩社員の相談役として、業務やキャリア形成などをサポートしていく制度のことです。
サポートする先輩を「メンター」、サポートされる側を「メンティー」と呼称されています。
このメンター制度を注目している企業も多く、その理由として、職場の人間関係の希薄化とロールモデルの不在が影響しています。
IT技術が進歩している昨今、チャットやメールなどのツールを用いたコミュニケーションが主流となっています。
リモートワークを促進している現代では、コミュニケーションの大半をITツールを用いて実施しています。
顔を合わせてのコミュニケーションとは異なり、職場の人間関係の希薄化に繋がってしまうのです。
また、ロールモデルが不在である企業も少なくありません。
今の20代や30代からすると、40代や50代は、雇用機会均等法が施行される前を知っている世代。働き方が大きく違うため、お手本にできないケースが増えているのです。
こうした2つの背景からメンター制度の導入を検討している会社が増えているのです。
メンター制度・OJT制度・シスターブラザー制度の違いとは?
メンター制度と似たOJT制度があります。
OJT制度は、全社員を対象に、同じ部署の先輩社員が業務指導などをおこないますが、メンター制度では、新卒社員や若手社員を対象に、業務上において上下関係がなく利害関係が発生しない先輩社員が、メンタル面のサポートを担当する違いがあります。
また、OJT制度と同じく、指導役に同じ部署の先輩社員が担当するシスター・ブラザー制度がありますが、OJTとはサポート範囲に違いがあります。
シスター・ブラザー制度は、新入社員を対象に業務指導とメンタル面のサポートを両方おこないます。
メンター制度の効果・メリット
職場の人間関係の希薄化とロールモデルの不在を解消するために、企業はメンター制度に注目していますが、実際にはどのような効果があるのでしょうか。
企業がメンター制度導入で得られるメリットをご紹介します。
その1|退職率の減少
現在は、1つの会社に長く勤めることは珍しく、スキルアップやキャリアアップのため、退職を選択する若手社員も少なくありません。
このように転職が珍しくなくなるなか、職場に不満を抱え、退職する例も増えつつあります。
新入社員の離職率が増加していくなか、メンター制度を導入することで、悩みや問題解決へ促すことができ、新入社員が会社へ馴染みやすくなる効果が期待できます。
また、メンター制度によって、キャリアプランも実直に相談できるため、キャリアアップに繋がる目標も持ちやすくなり、離職を防ぐことにも繋がります。
その2|キャリア形成
メンター制度では、メンティーだけでなく、メンターにもメリットがあります。
メンターはメンティの相談を受けることで自身の経験を話し、自分の経験の棚卸しに繋げることができます。
また、メンティーのサポートをすることで責任感をもつきっかけにもなります。
責任感が生まれそれを育むことで、自発的に行動、マネジメント意識も持てるようになります。
その3|女性の活躍推進
これから多くのライフステージを迎え、仕事とライフワークバランスを考えなければならない女性社員にとっては、メンター制度はなくてはならないもの。
どれも初めての経験であるため悩みは多くなり、人への相談は欠かせなくなります。メンター制度によって、メンターの経験を元に悩みを解決でき、女性社員の就業継続を促進することに繋げることができます。
また、若手社員だけでなく、女性管理職候補育成にもメンター制度は効果的であり、昇給への不安を払拭し、女性が活躍しやすい環境整備に繋げることができます。
その4|会社組織の活性化
メンター制度を導入することで、コミュニケーションが取りやすい環境を構築することができます。
社員同士のコミュニケーションが活発化することで、組織全体の風通しがよくなり、会社組織が活性化がされることが期待できます。
メンター制度の導入手順
メンター制度は、メンティーにメンターをつけるだけでは不十分となります。
会社としてサポート体制を構築しなければ、メンター制度の充分な効果を得ることができません。
メンター制度を正しく導入するための手順を紹介します。
手順1|導入目的の明確化
まずは、会社の現状を把握した上で、メンター制度を導入する目的と、ゴールを明確にします。
目標の例として、「離職率を○%にする」「女性管理職を○人にする」など数値として効果を測れる目標を設定すると、成果を可視化することができます。
手順2|体制の構築
メンターやメンティーのコミュニケーションだけに頼るのではなく、経営陣や部署のトップなど、社内各所の協力が必要不可欠です。
また、メンターとメンティが定期的に話せる場、メンタリングの時間を設ける環境構築も必要となり、さらに、メンターが困った場合や、問題が発生した場合、適切な介入ができるように体制を整えることが大切です。
手順3|運用ルールの策定
メンティーのサポートにおいて、メンターが困ることのないよう、円滑に運用してゆくルールを策定するようにしましょう。
相談内容を口外しない守秘義務、メンターのみで解決できないことはどのようにするか、問題発生時の相談窓口の設置、メンタリングの実施時間の決定などを運用ルールを細かく決定しておきます。
手順4|メンターとメンティのマッチング
メンター制度において、もっとも重要なメンターとメンティーのマッチングを行います。
マッチング方法は、事務局が両者の年齢やバックグラウンドを配慮した上で決定する「アサインメント方式」と、メンティーがメンター候補者の中から選び希望をあげ、事務局が最終決定をする「ドラフト方式」があります。
また、メンター候補として社内から選抜する際には、適性を見なくてはなりません。メンターに向いている人として、受容力が高く、聴く力が高い人が適任であるといえます。
手順5|社内への周知
メンター制度は、社内の協力が不可欠です。
メンター制度を周りに正しく認識されないと、業務中無駄話をしているなどの悪い印象を与えてしまいます。
そのため、メンター制度の目的やゴールにくわえ、メンターの紹介なども行うようにしましょう。
手順6|事前研修の実施
メンターやメンティーに対し策定したルールや目的、心構えなどの「ガイドライン」を共有する研修を実施するようにしましょう。
また、メンターとメンティの顔合わせが済んでいない場合は、研修の場を用いて自己紹介などを行うのが良いでしょう。
メンター制度運用のポイント
メンター制度は、人同士がコミュニケーションをとって成り立つため、会社のサポートや運用には配慮しなくてはならないことも多くあります。
メンター制度も問題なく運営するためにはどのようにしたら良いのでしょうか。運用するポイントをご紹介します。
ポイント1|マッチングミスの回避
メンター制度運用を効果的にするには、メンターとメンティーの相性がよくマッチングする必要があります。
メンティの目指している目標や、手本になりうる人材をメンターにつけることがマッチングミスを防ぐことに繋がります。
またマッチングを行うための適性検査を実施することも効果的です。
さらには、1対1にこだわらず、メンターを複数つけることでメンター側の負担も軽減させ、マッチングミスを防ぐことができます。
ポイント2|メンターのケア体制を作る
メンター側のケアできるように体制を整えることも効果をあげるポイントです。
メンターの責任感が強くなる一方で、「自分が正しいアドバイスできているか」など、不安を抱え、その責任を重く受け止めてしまうメンターも少なくありません。
メンター同士の情報交換の場をもうける、メンターを複数体制にするなど、メンターのケアができる体制を整えるようにしましょう。
ポイント3|メンターの評価体制の構築
メンターとしてアサインされた社員に対し、貢献度を人事評価に反映するようしましょう。
通常業務に加え、サポートを行うメンターのモチベーション維持は、非常に重要です。
メンターのやる気を継続することで、ひいてはメンティのモチベーションを維持することにも繋がるのです。
ポイント4|対話内容の設計
メンターは、メンティのメンタルサポートが目的とされています。
仕事の話だけでなく、プライベートな内容の会話も必要である一方で、メンターとメンティの間の会話が、雑談に引っ張られる傾向にあります。
メンターとメンティの信頼関係構築のために、お互いの成長が見込まれる対話をテーマ会社側が設定し提示することで、メンタリングを有意義に行えるような配慮が必要となります。
メンター制度の導入で助成金がもらえる
メンター制度を導入すると、厚生労働省から「人材確保等支援助成金」として最大75万円が受け取ることができます。
「人材確保等支援助成金」は、「事業主等の雇用管理改善、生産性向上等の取組みによる助成を通じて、従業員の職場定着の促進等を図ること」を目的とされています。
メンター制度導入は、「雇用管理制度助成コース」に分類されており、離職率低下の目標を達成すると57万円、生産性要件を満たすと追加で15万円を支給されます。
メンター制度導入により助成金を申請するには、以下7つの要件を満たしていることが条件です。
- メンター制度の定義を満たしていること
- メンターへ講習を実施すること
- メンターへの講習費用は事業主が負担すること
- 面談方式のメンタリングを実施すること
- 労働協約または就業規則へ明示しないこと
- 退職予定者のみを対象としないこと
上記条件を満たしていれば、必要な書類を作成し手続きを行うことで、助成金を受け取ることができます。詳しくは、こちらのページをご参照ください。
厚生労働省「メンター制度助成金(雇用管理制度助成コース)
が参考になります。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。