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今、世界中で新しい組織モデル「ティール組織」が注目されています。
ティール組織には3つの特徴があり、その特徴が革新的な組織へと進化させるのです。では、ティール組織とはどのような組織なのでしょうか。
この記事では、ティール組織の特徴や企業の事例などを紹介します。
ティール組織とは
ティール組織とは、社長や上司がマイクロマネジメントしなくても組織の目的達成のため進化し続ける組織を指します。
ティール組織は、フレデリック・ラルーの著書「Reinventing Organizations」で指摘している概念です。
ティール組織は従来の組織と違う点が多く、以下のような3つのブレイクスルーを経て進化していきます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
自主経営(セルフマネジメント)
ティール組織は、指示系統がない組織であるため、メンバー全員が自己管理を行い、オーナーシップを持っているという特徴があります。
意思決定も上司の権限ではなく、メンバー全員に権限譲渡がされています。
セルフマネジメントをもっと知りたい!セルフマネジメント力を高めたい!という方は以下の記事も合わせてご覧ください。
存在目的(エボリューショナリーパーパス)
ティール組織では、日々新たな存在目的をもち進化し続けます。
従来の組織では、ミッションを重視する傾向にありますが、ティール組織では、「勝利」を重要しし、組織が常にどこに向かっているのかを追求し続けます。
このように、組織が進化し続ける中で、組織全体の向かっていく方向性を共有し、一人一人の想いにも耳を傾けながら、活動内容に反映していかなければなりません。
全体性(ホールネス)
ティール組織では、個人一人一人が本来持っている力を発揮しながら組織を運営していきます。
従来、感情的な部分を押し殺し、周りに合わせながら業務に取り組みことが多くなります。
しかし、ティール組織では、社員全員が自分のことを全てさらけ出し、認め合うことで、メンバーの多様性を受け入れ尊重し、心理的安心を担保していきます。
ティール組織が注目される背景
今、日本で「ティール組織」が注目されています。その理由として、深刻な少子高齢化による人手不足、激化する競争社会が背景に挙げられます。
これまで日本では、機能や役割ごとに編成されるヒエラルキー型の組織が一般的でしたが、働き方改革により自由な働き方が定着してきました。
そのため、従来のヒエラルキー型の組織は受け入れられにくくなり、崩壊していくことが予想されています。
よって、新しい概念をもつティール組織が支持され始めたとされています。
また、競争社会の激化も背景にあります。
昔に比べ、テクノロジーの進化や技術力の進歩により、社会での競争は激しさを極め、組織として生き残るためにはスピード感を持たなくてはなりません。
従来のヒエラルキー型の組織では、スピード感がなく、柔軟性にかけるため、競争を生き残っていけません。
そのため、ティール組織の柔軟性、スピード性が注目され始めたとされているのです。
ティール組織と「ホラクラシー」との違い
ティール組織と似た組織で、ホラクラシー型組織があります。
ティール組織との違いはあるのでしょうか。ホラクラシーの意味と、ティール組織の違いを解説します。
「ホラクラシー」とは
ホラクラシーは、2007年に米ソフトウエア開発会社の創業者ブライアン・ロバートソン氏が提唱した組織で、社内に役職や階級を持たないフラットな組織を指します。
ホラクラシー組織では、意思決定が社内に分散されており、部署やチーム、個人単位で権限譲渡されているため、それぞれが裁量をもち、自主的に仕事に取り組めるといったティール組織と似た側面があります。
ティール組織との違い
ティール組織との違いは、組織概念に大きな違いがあります。
ティール組織が個々が自律的に判断をおこない運営していく組織に対して、ホラクラシー型組織では、厳密なルールのもと運営される経営手法であるといえます。
ティール組織は、決まったビジネスモデルがないため、柔軟性が高く、組織の中にレッド組織があったとしても機能し続ける組織です。
一方、ホラクラシー型組織は、自主経営を可能な組織にするため、厳密な体現化されたルールが設けられています。
そのため、ティール組織=ホラクラシー型組織ではないといえます。
ティール組織の3つのメリット
ティール組織にはメリットが3つ存在します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
変化に対応しやすい
ティール組織は、個々に意思決定権限を持っているため、即時に判断・対応していく能力である「アジリティ」が高い組織といえます。
そのような組織は、柔軟性が高く、急な状況の変化や、問題に対し迅速に対応することが可能です。
つまり、テクノロジーの進化による社会の急激な変化に対応できる組織に成長できるメリットがあります。
社員のモチベーションを保てる
ティール組織では、一人一人が考えを押し殺すことなく、自分の考えに基づいた行動を取ることができます。
従来の組織では、上司による指揮命令に沿った行動を求められるため、主体性なく強制力の中、役割を全うしなければなりませんでした。
しかし、ティール組織では、一人一人の考えが認められ、主体的な行動を起こせるため、モチベーション維持に効果があります。
テレワークに対応できる
テレワークの促進が進む中、社員の管理ができないことで頭を抱える企業も少なくありません。
しかし、ティール組織は、セルフマネジメントが前提となっているため、テレワークであっても成果を出せる組織として機能していくことが可能です。
ティール組織の2つのデメリット
一方、ティール組織にも2つのデメリットが存在します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
社員の意識改革が必須
ティール組織の問題として、社員の意識改革の必要性が挙げられます。
ティール組織は、ミッションを重要視せず、組織の存在目的を重視しながら、オーナーシップをもち、自分の考えもしっかり伝えていかなければなりません。
これまで、管理職の指揮系統の中、業務を取り組む社員にとっては、急に意思決定権限が譲渡されたからといって、機能できるわけではありません。
セルフマネジメントをおこない、意思決定を正しく行えるよう、社員の意識改革をおこなわなければ、ティール組織として機能していかないのです。
リスク管理が困難
ティール組織は、社員個々に意思決定権限が譲渡されます。
しかし、本当に全て任せては、リスクを管理することができません。
企業として、リスク管理は非常に重要であり、ティール組織に関していうと、そのリスク管理が非常に困難な組織であるため、組織にあったリスク管理体制の構築をしなければなりません。
ティール組織に至る5ステップ
ティール組織に至るまでは、5つのステップで形成されていきます。
ラルーがそれぞれの段階に色と比喩を使って表現しています。ティール組織に至るまでの組織の5ステップをご紹介します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
レッド組織(衝動型)
レッド組織は、狼の群れに例えられ、ワンマン経営やオーナー社長のような、圧倒的力を持った個人による支配によって形成され、明確なルールや制度はトップの意思や考えによって決定される組織です。
琥珀組織(順応型)
琥珀組織は、軍隊に例えられ、社会的階級によるヒエラルキーによって管理され、指揮命令が明確な状態で運営されていく組織です。
トップダウンで決められた役割が与えられ、その役割を全うすることが期待されます。
オレンジ組織(達成型)
オレンジ組織は、機械に例えられ、組織運営のための数値管理が重要視され、数値によるマネジメントがされている組織です。
このオレンジ組織が、現代一番多い組織形態であり、生存競争や変化の対応が求められ、過重労働が発生しやすい問題があります。
グリーン組織(多元型)
グリーン組織は、家族に例えられ、個人個人の多様性を重視し、指揮命令者はトップダウンではなく現場からのボトムアップによる意思決定を行う組織です。
ただし、決定権はマネジメント側にあります。グリーン組織は、近代価値にあった組織と言われており、個人の主体性や多様性が尊重される組織でもあります。
ティール組織(進化型)
ティール組織とは、組織そのものが一つの生命体として考えられ、組織の目的を実現するためにメンバー同士が共鳴しながら行動していく組織です。
指揮命令がなく、組織の進化を目的とし、メンバー間で信頼関係に基づき組織運営をおこなっていきます。
ティール組織適用の注意点
ティール組織はただ社員に権限譲渡を行い、人事制度を改正すれば良いというわけではありません。
ティール組織に関し誤解した認識を持って適用を目指している担当者も少なくないのです。
ここでは、以下3点の注意点についてご紹介します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
ティール組織が最も優れた組織ではない
ティール組織が最も優れた組織形態ではないことを覚えておきましょう。
組織の目的やメンバーの個性によってはティール組織が機能していかない場合があります。
例えば、警察や軍隊は指揮系統を明確にした方が円滑にいくため、琥珀組織が適切であり、リスク管理ができない状態であればティール組織を導入するには危険が伴います。
自分の組織に合う、組織形態があることを理解しておいてください。
ティール組織は小規模組織だけのものではない
ティール組織は、小規模組織に向いていると思われがちですが、業種や組織規模に関わらず適用が可能です。
確かに、ティール組織は小規模であれば変化を起こしやすい面もありますが、実際には大企業や様々な業種でティール組織を導入し、成功を収めている企業も多いのです。
ティール組織はパラダイムである
ティール組織は、パラダイム(認識の枠組み)であって手法ではなく、ボトムアッププロセスを確立させ、目的を共有し、進化し続けることで革新的な組織を作っていくことが目的です。
ティール組織の完成のため、優秀な人材を集めれば良いのでなく、メンバー間の価値観が合い、お互いに信頼しあえるよう構築していくことが重要です。
ティール組織導入事例2選
世界には、ティール組織を導入し、組織の運営に成功している企業が複数存在します。
どのような企業がティール組織の導入に成功したのか、日本の企業とアメリカ企業の成功事例を見ていきましょう。
それぞれについて詳しく解説していきます。
オズビジョン社
ティール組織の導入に成功したのは、ポイントサイト「ハピタス」を運営するオズビジョン社です。
「人の幸せに貢献し、自己実現する集団で在る」という理念のもと、全人格をさらけ出して社員が立ち振舞える組織作りに取り組んでいます。その一歩として「Thanks Day」と「Good or New」という2つの制度が導入されました。
「Thanks day」は、福利厚生という位置付けで、希望者が年に1日誰かに感謝するための休暇が取得できる制度で、現金2万円の支給もあります。取得者は社内ブログで、誰にどんな感謝をしたのかを書き、共有することが義務づけられています。
「Good or New」は、仕事と関わりのない人と会話する機会を設けるため、毎朝5~6人のグループで「Good=メンバーの長所」か「News=24時間中に起きたニュース」を話す制度です。
しかし、導入時は好評だったものの、この制度はマンネリ化と義務感が生まれたことにより、いずれも廃止されました。
ただ、この制度を導入したことで、人材の入れ替わりが起こり、理念にマッチした人材が集まるようになり「全体性(ホールネス)」を高めることに成功しました。
パタゴニア社
パタゴニア社はアメリカのアウトドア・サーフィン用品の製造・販売業を営んでいます。パタゴニア社は、「社員をサーフィンに行かせよう!」という経営哲学を掲げ、社員一人一人の自主性を重んじ、自分自身の人生を楽しめる仕組みを整えている会社です。
同社の役職は「リーダー層」「マネージャー層」「プレイヤー」の3つしかなく、意思決定はチームにあり、個人が責任持って働ける環境なのです。
マネージャーは、ビジネスとしての方向性を決め、チームにコーティングを行うメンターのような存在であり、チームメンバーは各自責任持って仕事を進めていくスタイルを確立したのです。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。