目次
現在では数多くの企業が業務改善に取り組んでいます。特にリモートワークの推進などで働き方が大きく変化しているので、業務改善を行うには最適な機会かもしれません。
しかし業務改善は正しい方法で進めないと失敗する可能性もあります。
今回は、業務推進の目的や一般的な進め方を解説するとともに、具体的な手法や成功させるポイントをご紹介していきます。
そもそも業務改善とは?
「業務改善」とは、顧客が望む商品やサービスを生み出し、提供する活動から課題を見つけ出して、効率的でスムーズな業務の流れを目指していくことです。
ここでは、業務改善の本来の目的を解説していきましょう。
業務改善の目的
業務改善の目的は、無駄をなくして生産性を上げることで、「品質」「コスト」「納期(デリバリー)」(QCD)の3つをより良い状態にすることを目標とします。
この3つは密接な関係でつながっており、どれか1つだけを向上して他の要素を切り離しては、大きな効果が期待できません。
3つの要素をグレードアップさせるとともに、バランスを上手く保つことで顧客の満足度が向上していくようになります。
業務改善は経費削減と違う
よく混同されがちですが、経費削減と業務改善は全く別のものです。
経費削減はコストのみの削減で、実行すればほぼ100%実現が可能で方法も共通しています。例えば、電気代を節約するために、人のいない場所ではマメに電気を消すなどの行動が該当するでしょう。
一方、業務改善は会社のヒト・モノ・カネ全てが対象であり、全ての業務の流れが効率的かつスムーズに、成し遂げるための問題定義から実現まで幅広いものです。
また、企業によって業務改善の内容は様々なものがあり、会社によって方法が違うのも経費削減と違う点になります。
業務改善のメリット
業務改善によって生じるメリットには、下記のものが挙げられます。
無駄なコストを削減できる
無駄な業務があれば業務効率が下がり、積み重なると余計なコストがかかりますが、業務改善を行うとそれらの無駄が省けます。
コストは大きく①オフィスコスト②エネルギーコスト③オペレーションコストの3つが存在します。
オフィスコストはコロナの影響で、テレワーク環境の整備が進み、都心の一等地で高いオフィスの家賃を払う必要性が揺らいでいる状況ですので、業種によっては見直しする方が良い固定的なコストです。
エネルギーコストは電気代や水道代を指しますが、このコストは残業時間を減らすことにより、削減が可能となります。
オペレーションコストは人件費などが該当しますが、不要な人材をリストラするというわけではなく、業務を効率化することにより、従来からの業務フローを見直せるものです。
新たな取り組みを見出せば、そこに適した人材を投入できるようになるでしょう。
生産性が向上する
業務を効率化すると業務時間が短縮して、生産性が上がることも大きなメリットの一つです。
日本の雇用慣行では、時間に対して賃金を支払うという形態を多くの企業が採用しています。
時間に対して給与を支払うという考え方ですが、成果が上がらない場合でも給与は発生しているのです。
近年では、政府による働き方改革の推進などにより、ワークライフバランスの重要性が広がっています。
その影響もあって、仕事をしているだけでなく自らを磨く時間も作り出し、さらなるキャリアアップを目指す人が増えてきました。
企業側も不要な残業代を削減し、浮いた時間で社員が自己研鑽に励むようになれば、営業力の強化にもつながりというメリットがあります。
労働環境を改善できる
社員の無駄な業務や業務量の偏りを改善できれば、業務時間の短縮が実現できるようになります。
企業には「人・物・金」の3つの資源がありますが、簡単に替えることが出来ないのは、ずばり「人」と言えるでしょう。
労働環境が改善されると、そこで働く人のモチベーションが上がり、クリエイティブなアイデアも期待できるようになります。
ダラダラと仕事をすることがなくなり、不要な残業代を支払うことも少なくなりますから、「金」の面でも減ることが少なくなってくるのが良い点です。
業務改善の具体的な手法例
それでは、業務改善を行うには具体的にどうすればよいのでしょうか。
ここでは、いくつかの手法をご紹介していきましょう。
業務の省略・簡略化
まず、最初に取り組むべきことは業務の省略と簡略化です。
今まで自然に行っていた業務やルーチンワークの中で、必要のない業務があればすぐにやめましょう。
また、簡略化できる業務があれば、簡略化するようにしていきます。
業務改善を進める際には、従業員一人一人の仕事量や業務内容も見直して、「ムリ・ムダ・ムラ」がないかを徹底的に検証しないといけません。
無駄な業務を簡略化することにより、効率的に仕事をこなしていけるようになっていきます。
業務改善ツールやシステムの導入
業務をスピーディーに進めるためには、業務改善ツールやシステムの導入も非常に効果的です。
現在、業務を効率化するITツールや事務作業の効率化はもちろんのこと、CRMやSFAといった営業支援ツールやエンジニア向けの設計支援のツールなどもあり、あらゆる分野で効率的に作業を進めていくことが可能になりました。
業務改善ツールを活用すると、業務を定量的に可視化できるようになり、改善して自動化するという流れにつなげていくことができるようになります。
アウトソーシング
アウトソーシングをすると、従来は内部でやっていた仕事を外部で処理してもらえるため、社員に時間の余裕が生まれます。
近年ではアウトソーシングはさらに進化しており、単なる事務仕事の外注というものだけではありません。
企業間の競争力も向上し、効率やスピードもアップするのがメリットで、クオリティの高い仕事を外部に発注することにより、無駄な人件費もカットできる場合があります。
アウトソーシングが可能な業務は外注に出して、残業を減らしていくことも考えてみてはいかがでしょうか。
ペーパーレス化
ペーパーレス化も業務を改善するポイントの一つです。
紙ベースの仕事をしていると様々な書類や資料が膨大になり、保管する場所にも手間がかかります。大量に印刷すると紙代やインク代などのコストも高くなりがちです。
重要書類はデータベース化すると、必要な時に検索しやすいというメリットもあります。書類やデータを探す手間を省けると、無駄な時間が無くなり業務改善へとつながっていくでしょう。
書式のテンプレート化
メールや書類の書式をテンプレート化しておけば、作成する際に手間がかからないのでおすすめです。
あらかじめテンプレートを用意し社員同士で共有しておけば、ゼロから書類作成をしないで済みます。
紙の書類を始めとしてメールやWordの文字変換の統一を行うと、業務の効率がさらにアップすることができるでしょう。
マニュアル化
業務をマニュアル化すれば、社員によって異なる作業のムラが減ったり、新人でも短期間で戦力になったりするなどのメリットがあります。
誰が業務を担当しても、同じレベルの品質が保たれるのも良い点です。突然担当者が辞めたり休んだりしても、すぐに代わりの人が業務に取り組めるようになります。
業務改善の進め方
それでは実際に、業務改善はどのように進めていくと良いのでしょうか?
ここでは、具体的な進め方をご紹介していきます。
業務の可視化
近年では、業務改善への取り組みにおいて「業務の可視化(見える化)」が注目されています。
効果的に業務改善を進めていくためには、まず、業務の実態を把握するために「業務の可視化」をし、現状における業務の流れ、解決しなくてはならない問題などを認識しなければなりません。
業務全体を一つのプロセスとして捉え、一つ一つの事柄に対して「業務の可視化」をすることで、業務の全体像を理解できるようになります。
改善の可否の検討、目標の設定
改善しなければいけない業務は何なのか、どのような状態にしたいのかなど、業務改善の目標設定をすることも大切です。
業務の改善をしたいのであれば、まず業務改善によって成し遂げる「目標」について、真剣に考えなければなりません。
目標を適切に設定すると、業務改善する為の対策を立てることができます。そして、対策の実行が間違った方向に進んでいく事も防げます。
目標をきちんと設定出来れば、自然と業務改善の方向に正しい舵を取ることができるでしょう。
業務改善策の設計
日本の事務管理は属人化しているケースが多く、非常に効率が悪い一面もあるようです。
そのようなことを改善するためにも、きちんと設計された業務改善策が企業には必要とされています。設計の仕方も担当者任せではなく、近代的な管理方法を取り入れることが最善でしょう。
近年では、営業やマーケティングにも科学的な方法が採用され、高度なレベルに設計済みのシステムを実行している企業が多く見られます。
問題点を解決する、あるいは改善できる方法はあるのかを検討しながら、業務改善策のフローを作成したりタスク化したりするようにしていきましょう。
業務改善策を実行し定着させる
フローやタスクに従い業務改善を実行したら、定着させるようにしていかなくてはなりません。
広く周知するために、業務改善の実施について従業員にアナウンスをしましょう。
その後、各タスクが完了し業務改善効果が得られた場合には、どのような効果が表れたのかを評価します。
その上で効果が高いと思われた改善策については、現場に定着させていく取り組みを行うようにしてください。
あまり効果を得られなかった場合には再度、業務改善を見直した後、実施していきます。
業務改善を成功させるポイント
業務改善を失敗しないためには、いくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、それらのポイントについて簡単に解説をしていきましょう。
QCDを意識する
業務改善を効率的に成し遂げていくためには、「QCD」のバランスが重要と言われています。
「QCD」とは、品質(Quality)コスト(Cost)納期(Delivery)の頭文字で、この3つの内どれか一つが欠けてしまうと仕事は上手く立ち行かなくなり、3つ全てが達成できると非常に高い効果を得られるとされているのです。
ちなみに3つの中で特に大切なのが、品質だと考えられています。何故なら、品質が満足いくものでなければ、コストや、納期に間に合っても顧客満足度は高くならないからです。
常に品質とコストと納期を意識しながら、バランスよく改善をしましょう。
定期的に検証する
業務改善策を実行した後は、改善が効果的だったかどうかを定期的に検証することが重要です。
一見、優れているように見える改善策でも、実際に実践してみなければ本当の効果はわかりません。万が一、上手くいっていなければ修正する必要があります。
実行してみると、計画時には想像していなかったことが起きることもあります。
これを放置しておくと目標を見失ったり、間違った方向のまま行動を取り続けてしまったりという結果になるので注意しましょう。
本当に改善が必要な業務を見極める
本当に改善が必要な業務かどうかを見極めることも必要です。
課題の本質を見極めて改善をしないと業務に偏りやひずみができてしまい、かえって従業員の負担になるという事態になってしまうこともあり得ます。
例えるなら、カスタマーサポートで業務の見直しをする場合に、対応時間を減らしてしまうと従業員はラクになるかもしれませんが、顧客満足度が下がる可能性が高いでしょう。
そのため、業務内容もよく踏まえながら改善が必要かどうかを検討するのが大切です。
現場との意識を共有する
一般的に業務改善を進めていくのはマネジメント層であり、積極的に推進していくものですが、従業員の温度感は大体の場合、低い方が多いでしょう。
しかし、業務改善には現場との意識を共有することが必要です。その必要性を従業員にもしっかりと理解してもらい、組織一体となって改善に取り組むことが大切になります。
マネージャー層が現場の「生の声」に触れることで、業務改善の正しい方向が分かるようになることを忘れないようにしてください。
無理な目標設定をしない
これも重要なポイントですが、くれぐれも無理な目標設定はしないようにしましょう。
到達したい目標があったとしても、その組織や環境に合っていない目標だと、従業員のモチベーションがみるみる低下してしまう危険性があるからです。
目標は現実的なレベルに設定しないと従業員側では不可能に思えてしまい、業務改善を始める前に諦めてしまう可能性があります。
まずは、達成できそうなレベルのものから設定し、無理なく進めていくようにするのがポイントです。
いいね!
この記事をシェアする
この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。