目次
今回からスタートする「すべらない対談」シリーズ。
「すべらない転職」編集長でアクシス代表の末永が、若手起業家や経営者と対談し、彼らが20代の頃どのように過ごしていたのか、どんな失敗体験があるのかなどを紐解いていきます。
初回は当サイト「すべらない転職」の名付け親でもあるソラシードスタートアップスタジオ代表の柴田泰成さんにお話を伺いました。
柴田さんと末永は学生時代に知り合い、社会人になった今も毎年のように2人で旅行するような大親友。
そんな柴田さんは、新しい起業の仕方を推進すべく2018年5月にスタートアップスタジオという組織を設立されました。
なぜ起業家と投資家の「二刀流」をやろうと思ったのか、キャリアにとって重要なことは何か、それを身に付けるためにはどうすればいいのかなどについて語っていただきました。
ソラシードスタートアップスタジオ代表パートナー
柴田 泰成
Yasunari Shibata
2012年にリクルートへ入社後、インキュベイトファンド主催の「Incubate Camp 5th」で優勝。
2013年9月サムライト株式会社を設立し、代表取締役に就任。2016年に同社を朝日新聞社にバイアウト。
同時に独立系VC「ソラシード・スタートアップス」の代表を務め、シード投資や共同創業を15社実行し、現在までに計5社のEXITに成功している。
Forbes JAPAN 2017年1月号「日本で最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング」第6位に入賞。
「前人未到」に惹かれ、起業家×投資家に
そもそも、なぜ起業したんですか?
20歳の頃から「30歳になったら起業しよう」と決めていたんです。
当時は今のようにベンチャーキャピタルなど、起業を支援するような環境はほとんどありませんでした。
どうやって起業すればいいか教えてくれる人はいませんでしたが、とにかく「起業する」ということだけは決めていました。
20代は修行期間と捉え、会社でも言われたことをやるだけではなく「新規事業をやらせてほしい」と言いまくっていて。とにかく起業に必要な実力や機会を、会社の中でも探していました。
起業して明確に何かを変えたかったわけではなく、カッコいいなって思ったんですよね(笑)。
昔から自分の中に「前人未到」「パイオニア」というキーワードがあって、誰もやったことのないことを成し遂げる場所として、自然に「起業」に向かったんだと思います。
起業するのと同時に投資家としてのキャリアもスタートされましたが、なぜスタートから2足のわらじでやろうと思ったんですか?
当時、結構悩んでいていろんな人に相談しましたが、ほとんどの人から「そんなの無理でしょ」って言われたんですよ。
その「誰もやったことがない」というパイオニア的な響きに惹かれて(笑)、逆にできたらスゴいよなって思って。
企業の中で出世・昇進を考えると、とくに大企業では上が詰まっている感じがありますが、私は起業も同じだと感じています。
ソフトバンクの孫さんや楽天の三木谷さんのような人たちが、すでに先陣としているというか。
誰もやったことがないことをやるのが自分の起業のモチベーションなので、「起業家」ではなく「起業家×投資家」になろうと決断しました。
だから「二刀流です」って言いまくっていますよ(笑)。
実際にやってみて、それぞれの経験が活きることはありましたか?
普通の経営者が味わうような、「資金が底を尽きそう」「会社が軌道に乗らない」みたいなことは一通り経験しました。
でも、投資家をやっていたからこそ、それが当たり前だと分かっていたのは大きかったですね。投資家として4〜5社並行して起業しているような感じだったので、必要以上に大変だとは思いませんでした。
自分の中で上手くリスク分散できていたというか、
ある意味「起業は失敗する前提」というベンチャーキャピタリストとしての視点を持っていたのは良かったですね。
もちろん、一方で「絶対に全部成功させる!」とも思っていましたけど。
会社員時代から「起業に向けた素振り」をしていた
先ほど「20代は修行期間」とおっしゃっていましたが、実際にどんなことをしていたんですか?
意識していたのは、ビジネスプランやビジネスモデルを毎日考えるクセをつけていたこと。
今になってすごく役に立っています。
営業やマーケティングは先輩や周りから教えてもらえますが、起業の仕方や新規事業のプランを考えることは誰も教えてくれないし、誰も知らなかったんですね。
だから自分で考えるしかなくて、試行錯誤していくうちに楽天の新規事業コンテストで優勝することができました。
誰にも相談せず、自分だけでやっていたんですね。
もちろん、最初は全然できなくて、今思い返すと恥ずかしいアイデアばかりですけど(笑)。
社内に相談できる人はいなかったし、当時は営業職だったので「そんなことを考えているんだったら、もう1件取ってこい!」と言われかねない環境でしたから。
当時から新規事業のアイデアばかり考えていたので、周りとコミットするベクトルが違ったんですよね。営業として一定の成果は出しつつ、全然違うことばかり考えていました。
その結果、高い確度の事業をプランする能力を身に付けることができたと思っています。
楽天には「Get Things Done」という言葉があるんですが、考えているだけでは意味がなくて、何が何でもやり抜くことが大事という意識が徹底されていて、業務の中でその「やり切る力」を身につけられたのは良かったですね。
柴田さんは自分の動機をシンプルにして、そこにコミットする力が強いですよね。
うーん、環境に左右される部分はあると思うので、コミットせざるを得ない環境に身を投じたほうが早いのかなと思います。
自分と向き合って「本当にやりたいことは何だろう?」って考える時間は、あまり意味がないと思うんですよ。とくに20代の頃は、明確にやりたいことを持っている人のほうが少ないのではないでしょうか。
それよりも、楽天のような環境に入って、やるしかない状態になれば「こうやって自分の中で突き詰めて考えればできる」というノウハウも身につくし、「自分はやればできる」と思えるようになりますよ。
重要なのは「成果にコミットする力」と「特技の掛け合わせ」
現在の投資先は何社あるんですか?
約15社に投資しています。
そのうち半分くらいが、会社員だった人に声をかけて口説いたり、このアイディアをやろうと持ち掛けたりして、共同創業者としてゼロから一緒に立ち上げた会社です。
起業はもちろんリスクもありますが、一般的にイメージされているような「0か10か」の世界ではなく、リスクを3〜4程度に抑えた起業は可能だという手応えがあります。
再現性もあるので、それを仕組み化したのがソラシードスタジオというわけです。転職するのと同じように、起業も選択肢に入るようにしていきたいと考えています。
声をかける人の共通点はありますか?
起業市場には、アウトサイダーというか「起業しか方法がなかった」みたいな人が出てくることが多いですが、私はむしろ本来であれば起業しなくても良いような人たちが、キャリアの延長として出てくるようにしたいと考えています。
起業のアイデアは無くても構わないので、とにかくやろうと思ったことにコミットできる点が共通項。
当たり前目線が高くて、「やらないとカッコ悪い」と思えるような、成果を出すことが染み付いている人がいいですね。
起業に興味はあるけど、コミットする力が足りないのであれば、そういう環境に転職するのも1つの選択肢だと思います。
先ほども言った通り、私が在籍していた楽天やリクルートは、まさに成果にコミットせざるを得ない環境でした。
転職を考える際、大企業 or ベンチャーというような極端な話ではなく、転職先の環境が自分に対してどのようなポジティブな作用があるのかを基準にしたほうが良いと思うんですよね。
人はいきなり変われないから、ステップを踏んで徐々にリスクを取るわけですね。
成果にコミットするのはベースで、もう1つ大切なのは「特技をつくる」こと。
今後は、副業や個人で仕事する人が増えるだけでなく、会社に所属していても、より「個」が目立つ時代になるはずです。
「この会社の○○さん」ではなく、「○○さんがいるこの会社」というように、会社と個人の主従関係が変わってくる可能性もあると考えています。
そうなったときに、個人として何ができるのか、より明確にしておく必要があります。それが特技。
さらに、その特技を掛け合わせていくことが重要です。営業力がすごい人はたくさんいますが、全然違う特技を掛け合わせることでレアな人材になれます。
これは元リクルートの藤原和博さんがおっしゃっていた考え方ですが、その重要性に気づいたのは起業してから。会社員時代に知っておきたかったですね。
今までは、「気づいたら複数の特技の掛け合わせができていた」というケースがほとんどでしたが、今後は掛け合わせる特技を狙って取りにいくことも必要になってくると思います。
柴田さん自身の特技の掛け合わせは何ですか?
0から1を生み出す力は、ほとんど競合がいなかったこともあって、大きな特技になっていると思います。
掛け合わせる特技はいろいろありますが、マーケティングの知識が大きいですね。
だから投資家として、他の投資家よりも事業に入っていけるんです。自分で起業もしているので、そこは差別化できるポイントだと思っています。
掛け合わせる特技を見つけるために、転職エージェントを利用しよう
最後に「すべらない転職」の名付け親として(笑)、読者に対してメッセージをお願いします。
自分が頑張れないと思う人は、認めたほうがラクになれるよ、ということは伝えたいですね。
頑張れなくても戦略的に上手くやっていく方法はありますから。
頑張れる人は、今までの成功のレールに乗っていけばいいと思いますが、知恵と工夫次第で、それ以外にも生きていく方法はたくさんあります。
別に会社を辞めろとか、起業しろと言いたいわけではなく、ちょっと視点を変えてみるだけでいいんです。
自分の特技と何を掛け合わせればいいか分からなければ、それこそキャリアアドバイザーに相談してみればいいと思います。もしかしたら、自分では想像もつかなかった特技が見つかるかもしれませんから。
キャリアアドバイザーの介在価値は「相談者の市場価値を上げる」こと。転職が成功するかどうかは、あくまで点の話です。
3〜5年後に求められるキャリアや、それに必要とされる特技の掛け合わせを提示した上で、「だからあなたは今、この会社に入ったほうがいい」というアドバイスをしてもらえるといいなと思います。
より「個」の時代になっていくからこそ、未来視点から逆算して語ってほしい。
当社では「自立型人材のキャリア育成」を掲げていますが、まさにそれです。
投資家と転職エージェントは、いろんな業界を客観視している点が似ていますよね。
「あなたの経験は、この特技を組み合わせたらバリューが出るよ」と教えてもらうのも、1つのキッカケになるかもしれません。
仕事は成果にコミットして頑張っている前提で、趣味や好きなこと、あまり頑張らなくても継続できることを1つ見つけて、それを組み合わせたときに仕事になる、自分の希少価値が高まるというのが、キャリアが上手くいく一番簡単な方法だと思います。
でも、それが見つからないことも多いので、他にどんなものがあるのかを戦略的に考えてみてください。それこそ、キャリアアドバイザーに相談することから始めるのも1つです。
その上で、もし起業してみたいと思ったら、ぜひソラシードスタジオのドアを叩いてみてください(笑)。
転職エージェントの話につないでいただき恐縮です(笑)。
本日はどうもありがとうございました!
(取材/文:筒井智子)
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。
「柴田さんとは、19歳からの親友ですが、改めて、こうして柴田さんのキャリア観をじっくりと伺ってみて、柴田さんならではの一貫性のある軸をお持ちが故に、現在の起業家と投資家の二刀流という独自なキャリア形成・成功を築かれてきたのだと強く感じました。
「前人未到」と言うキーワードがそれを表現しているのだと思うのですが、柴田さんに限らず、人生やキャリアの大きな選択や決断時に、自分の中での一貫した軸を常に念頭に置いておけると、差別化された独自の意思決定をする事ができ、周りと凡庸・同質化して埋もれる事なく、結果として、柴田さんのおっしゃる「特技の掛け合わせ」というキャリアの深みや成功が生まれてくるのだと思いました。
この記事をご覧になってくださった読者の皆さんも、自分の軸をきちんと言語化する事で、人生やキャリアの意思決定時に、差別化した決断を少しでも多くの人ができるようになっていただけたら嬉しいです。」