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今回は、2019年7月に新刊である「マンガでわかる 成功する転職-(池田書店 2019/7/5)」を出版されたばかりの森本千賀子さんをゲストに招いてお送りします。
末永がリクルートキャリアに2008年に新卒入社した時に、プロデューサーとして事業部を牽引していたのが森本さん。
上司と部下の関係で出会ったのをきっかけに、現在に至るまで転職エージェントとして、経営者として交流を深めてきたというお二人。
今回は、森本さんの新書籍の出版記念対談という事で、「今回の書籍を出された背景や想い」、「転職で大事にすべきポイント」、また「転職エージェントの価値」というテーマでざっくばらんに語っていただきました。
株式会社morich代表取締役 兼 All Rouder Agent
森本千賀子さん
Chikako Morimoto
2012年にはNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」にも出演。
2017年 株式会社morichを設立。
転職エージェントの傍ら、NPO法人の理事や企業の社外取締役や顧問を歴任。メディアへの発信、セミナー登壇などマルチに活動。
『後悔しない社会人1年目の働き方』、『35歳からの「人生を変える」転職』、『本気の転職パーフェクトガイド』など著書も多数。
新刊「マンガでわかる 成功する転職」を出版した背景
転職相談をしていると、「そもそも転職活動ってどう進めたらいいの?」というようなハウツー的な質問をいただくことが多くて。
これを体系的にコンテンツとして提供できないかなと思い、自分が貯めていたものを整理する形で書籍化しました。
弊社が2013年に「すべらない転職」を立ち上げたきっかけも同じです。
誰でも平等に転職やキャリアの正しい情報を知って欲しいと思ったのがきっかけですね。
本当に同じで、一人でも多くの人が、これを読めば、転職活動のスタートから、内定・入社までの全てのプロセスに関して、転職の基本がわかるようにしたかったんです。
今回タイトルに「成功する」というキーワードがありますが、執筆する上でこだわった点はどこですか?
私自身、転職での「成功」って「納得感」だと思うんです。
きっかけは、第二新卒の方に転職支援をする中で感じた危機感ですね。
転職しても3年以内に辞めてしまう人ってかなり多くて、しかもそれが1回ではなく、2回3回と続いていく。
そこで「納得感をもった転職」をしてもらうためには、やはり自己分析や「will・can・must」の整理(詳しくは書籍で。笑)が重要になるんですよね。
それをわかりやすく伝えながら、活字離れが強い20代の方にも手にしてもらえるようにあえて「漫画」という手段をとりました。
確かに最近、「マンガでわかる」シリーズってたくさんありますよね。第二新卒の方を中心に読んでもらいたい、と思ったときに、手にとってもらいやすそうです!
私自身も興味があり、「作ってみたいな」と思っていたタイミングで、たまたまマンガシリーズの老舗である池田書店さんからお声がけをいただきまして。
あと、就職活動をする前の高校生や大学生にも読んでもらいたいと思っています。
みんないずれは就職することはなんとなくわかってはいるけど、就職することが終わりじゃなく、その後も自身のキャリアに向き合うということを、これから就活する彼らにも理解してもらいたいんです。
普段、高校生や大学生向けにキャリアの授業などで講演することがあるんだけど、「働く」とか「キャリア」に対してやっぱりピンと来てない。
転職を考えていない若手層もキャリアを学んでいくべき、ということですね。息子さんには本をプレゼントされたんですか?
実際、うちの高校1年生になる息子もそう。(笑)
転職を考えていない若手層もキャリアを学んでいくべき、ということですね。息子さんには本をプレゼントされたんですか?
もちろん。読んだかはわからないんだけどね(笑)活字よりは読んでくれるんじゃないかと期待しています。
転職は自分のキャリアをリスタートするきっかけ
そもそも転職することの意味やメリットってどんなところにあると思われますか?
この本でも書いてるんですが、『転職』というのは自分のキャリアの見直し、リスタートだと思うんです。
就職活動だと、限られた時間で「1社」に決めないといけない。
世間体や、周囲の言葉、メディアからのメッセージに翻弄されて最終的に会社を決めてしまいがちですよね。
それで本当に自分の納得いく会社に出会えたら良いのですが、そうじゃないことってすごくあると思っています。
例えば、結婚みたいな感じ。 一番最初に恋愛した人とそのままずっと添い遂げるってことはありえなくて、何度か恋愛を繰り返すうちに自分にとっての良きパートナーが自分の中でわかってくるというか。それに近いところがある。
自分のやりたいことが実現できる場所が最初の職場で見つかればラッキーだけど、多分そうじゃないことも多い中で、リスタートを切ることができることだと思ってます。
転職エージェントを使うことで隠れた自分の可能性を発見できる
最近では、20代でも転職する時にエージェントを使うことが「普通」になってきましたよね。
もりちさんとしては、どんなところがメリットだと思ってますか?
若い人たちはポテンシャルの部分が大きい分、逆にいうと本来選択肢は多様にあるわけで。
にも関わらず、自分の価値観や自分の経験した物を前提に選択肢を絞ろうとすると、多分、かなり狭い。しかも選べない。
自分のことってメタ認知できている人は少なくて、なかなか客観視できないからこそ、他人の目、第三者の目が必要だと思う。
自身の今まで経験やスキル、やりたいことをトータルで見たときの可能性の選択肢を客観的に提示してもらうことは、 まだ見えてない自分の可能性を見つける手段だと思います。
私がエージェントをやってる中で大事にしてるのはそこなんですよね。
転職エージェントって言わばお見合いのおばちゃんみたいなものですよね。
お見合いの方が恋愛結婚よりも離婚率が低い。そこにお見合いのおばちゃんの価値があるように、転職エージェントも、企業と転職者の相性や、客観的な視点でマッチングをするところに価値があると思うんですよね。
経験やスキルにとらわれない新しい可能性を提案したい
もりちさんが転職希望者の方の相談に乗るときは、長所や経験など色々あると思うんですけど、どこに着目していらっしゃいますか?
その人が夢中になって時間を忘れるくらい集中してできたことってなんなのか。仕事を通して実現したいことってなんなのか。みたいなところでしょうか。
一緒に伴走しながら、その人の「プラス要素」の部分を見つけていくようにしています。
仕事での経験や実績だけヒヤリングするのではなく、学生時代を含めた経験を幅広くヒヤリングするイメージですか?
そうそう、私は実績や業務経験はあまり聞かないんですよ。業務経験が3~5年という方の相談にのることが多いから、というのもありますけど。
確かにその経験値は大事なんですが、先入観に縛られないことの方が大事かなと。
これまでの業務経験やスキルを生かした転職って、延長線上にあるキャリアの提案であって、普通にデータでのマッチングでできてしまう。
大手や他のエージェントさんでもできる提案だと思うんです。
私自身はどちらかというと、そうじゃない中でのその人自身の本質的な価値観を炙り出す、というか。そんなことを大事にしてます。
エージェントの価値は、"本人の可能性を広げる提案ができるか"、"自分でも気づいていない自分の可能性を一緒に伴走しながら見出す"っていうところにあるってことですね。
その人自身が、身構えないで全てオープンに、「この人に話そう!」って思ってもらわない限り出てこない部分だと思ってます。
その人の価値観に迫るために、あえてマイナス要素を聞くこともあります。
例えば、「人生で一番の挫折はなんだ」とか過去の挫折経験を聞いて、それをどうやって克服したか、そのことをどういう風に捉えてその後どうなったかという話を聞いたり。
何かしらそこにその人自身の価値観の源泉があったりするので、そういうことを話してもらうためにも、お互いの関係性が心理的に安心な場じゃないといけないと思うんですよね。
初めて会った私になんでそんなこと話さなきゃいけないんだって話になるので。
フルオープンに、包み隠さずカッコつけずに話してもらえるような関係を作るってことを大事にしてます。
お互いに先入観を持たずにまっさらな状態で向き合うからこそ、本人の可能性を広げられるような提案ができるのかなと思っていて。
どんな会社でどんな仕事をしていたのかというデジタルな情報を元にした提案よりも、その人の人間性や価値観というアナログな情報を元にした提案の方が、その人も気づいていないような可能性を引き出せると思っています。
企業側にとってもエージェントが介在する価値はある
一方で、ダイレクトリクルーティングとか、SNSとか気軽に転職活動できるアプリが出てきたり、色々な代替手段が出てきてますよね。
そういう流れを、もりちさんはどう見ていらっしゃいますか?
ダイレクトリクルーティングも、リファーラル採用もどんどん普及して欲しいと思っているんですが、それだけでは企業が更に成長するための採用は難しいと思ってるんです。
エージェントが介在することで提供できる価値が必ずあると思うので、併用していただく世界観が私の中での理想です。
個人に対して新しい気づきや提案をするのと一緒で、 企業に対しても介在することで経営者や現場が気づいていないような付加価値や提案をしたいってことですよね。
そうそう。第三者の目が入るメリットは、個人だけじゃなくて企業側にもあるんですよね。
自分達さえも気づいていない企業の課題が、客観的な立場でいる私たちだからこそ見えることもある。
組織の中にいるとどうしても、そこでの文化やルールが「当たり前」になり、気づかないうちに先入観などのバイアスで縛られていたりする。
そういった企業の課題を客観的な視点をもつエージェントが一緒にあぶりだした上で、課題を解決してくれるようなポテンシャルを持った人材を推薦する。
新しい人材が加入することで、大きく飛躍した企業を何社も見てきました。「人」を通して、企業側の根本課題の解決に向き合うことができるのも、エージェントという仕事の魅力ですよね。
こういった、化学反応を起こすような提案は、もしかするとAIとかダイレクトリクルーティングとかではできないのかなって。
個人の方も過去の原体験に紐づいた狭い範囲の選択肢しか選べないのと一緒で、 企業も経営の歴史や成功体験を踏襲するような採用に陥ってはいやしないかってことですよね。
例えば、ニュースサイトは過去の閲覧履歴からその人の興味関心を分析して、記事がレコメンドされるじゃないですか?要は自分の過去の価値観から導き出されれるもの。
過去のデータベースの分析ではなくて、価値観そのものに影響を与えたりだとか、自分自身の考え方を覆すようなコンテンツみたいなもの、それが転職エージェントの役割の1つかなと思ってます。
転職はあくまでスタート地点でしかない
本に書きたかったけど書けなかったとか、こういうところも伝えたい!っていうメッセージをお願いします。
転職というのは入社っていうのがゴールだとどうしても捉えがちなんですけど、そこはあくまでもスタートであって、 転職先で活躍して、貢献するってことが本来の目的なんですよ。ってことですかね。
今回書いた本は、転職するところまでをまとめたんですけど、転職後、ちゃんとその人自身が持ってる力をフルに出し切れるためのメソッドもあって。それを実は新刊として9月ごろに出る予定なんですよね。
本来は転職してから「半年」くらいの時期がとても大事で、その人自身のスキルやキャリアということ以上に「振る舞い方」というものがブランディングや影響力、敷いてはその転職先での活躍を決めるんですよね。私がこれまで見てきた色々なケーススタディを体系的にまとめたいなと思ってます。
それはとても興味深いですね。そちらの出版も楽しみにしています!
最後に読者の皆さんにメッセージをいただけますでしょうか。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。