目次
株式会社ユナイテッドリバーズ 代表取締役
沢辺敦志
ATSUSHI SAWABE
4年間HOME'S引越し見積もり(現:LIFULL引越し)の運営を行い、後発サービスながら大手サイトになるまでサービスを成長させる。
2010年株式会社ユナイテッドリバーズの代表取締役に就任し、2012年に独立。
在籍時のインハウスWebマーケティングと事業開発で培った経験を活かし、完全成果報酬Webマーケティング代行事業・不動産売買仲介業を展開。人材・不動産領域を得意とする。
今回は、Webマーケティング領域の最前線で活躍している株式会社ユナイテッドリバーズの沢辺社長から、Webマーケの魅力や厳しさを教えて頂きました。
これからWebマーケッターを目指す方々へ、本質的なキャリアアップ論や気になる年収事情も質問をぶつけてみました!
まずユナイテッドリバーズ様の事業内容から教えてもらえますか?
完全成果報酬でWebマーケティングの代行をする事業と付随して不動産仲介業を主におこなっています。
Webマーケティングの代行について、特に領域特化はしておりませんが、成果報酬のお取引の9割が、人材・不動産領域です。
人材領域については、お客様の広告用のランディングページを無料で作って、広告費用全額弊社負担で広告出稿したり、求人サイトを無料で作って各求人メディアから集客をしたりしております。
希望のエントリー(問合せ・登録)があった時点で、報酬をいただいております。
不動産領域では、問合せ時点での課金だと、「不動産会社様がメール対応に不得手過ぎて、案内が取れない」現象があったため、前職の同期に相談し、「代わりにユーザー様の接客をし、案内が取れたら送客」した上で「成約時の売上を折半する」形でビジネスをしております。
不動産仲介手数料無料機構イエフリの屋号で、不動産売買時の仲介手数料の割引ができる不動産会社様を集めたサービスも運営しており非常に好評で案内が追いつかなくなった為、2021年6月より自社でも宅建免許を取得し不動産売買仲介業もスタートしております。
その他、創業時の事業であるSEO対策や、広告運用代行・制作/開発の代行など成果報酬のWebマーケティング代行で得た知見を活かして、Webマーケティング業務を受託させていただくケースもございます。
Webマーケターの仕事内容とは?
私は、マーケティングとは、「売れる仕組み化」だと考えています。
Webマーケターは「Web上で売れる仕組みを作る人」ということになると思います。
Web上で売れる仕組みを作るには、非常に多岐に渡る仕事が必要です。
-
WebページやWebサイトの制作・開発の進行・ディレクション
※この部分はWebディレクター業務として、Webマーケターの仕事からは切り離されていることも多い。 -
サイトへの集客最大化
└ 広告運用やコンテンツマーケティングなど -
購入や問合せ最大化
└ ページ改善・LPO(Web接客) -
リピートや紹介をもらう(ファン化)
└ Web接客・SNSの運用 -
1〜4を分析、改善施策
└ アクセス解析
という感じです。ざっくりの分類なので、細かく書けばまだまだあります…。
もっと具体的な施策については、下記の記事が参考になります。
(※Webマーケティングとは?Webマーケティングの種類と自社に最適な施策を見つける方法|キャリーミーマガジンより引用)
例えば、上記の図にあるソーシャルメディアマーケティングも、サービス毎に攻略方は異なりますし、広告を使う手法と使わない手法があるので無数に施策があり、施策毎に専門のWebマーケッターがいます。
私が業界に入った13年前と比べると、各業務は専門化や細分化が進んでいる為どれか一つを指して、「Webマーケティング」とされていることも多いと思います。
特にWeb集客をする人のことをWebマーケターだと考えている人が多いようにも感じます。
私は、上記のWebマーケッターの業務すべてで重要になるのが「人に行動してもらう力」だと考えており、日々ユーザーの方がより行動してくれるページの表現やよく検索される言葉などを検証し、自社のサイトやお客様のサイトの改善に取り組んでおります。
ページの表現について、具体例をいくつか上げると、当たり前と思っても「無料」と言う言葉を使った方が多く行動してくれることだったり、フォームについて同じ項目の量でもステップ式にして、スマホの一画面に収めることだったりです。
少しの調整でも、成果が3.01倍になるようなことがあるので、自社の保有サイトを中心に日々研究しています。
以下の動画でいくつか具体的な取り組みを紹介しています。
※どちらのチャンネルも、非常にためになる動画を上げられているので、ぜひ他の動画もご覧ください。
Webマーケターの魅力・やりがい・楽しさとは?
「ざまあみろ感」だと考えています。
私の場合は、会社員時代も現在も最後発に近いポジションのサイトの集客に関わることが多いので、同業とかなり差がついた状態からスタートするケースがほとんどです。
競争相手と同じことをしても、全く歯がたちませんし、普通に考えつく集客施策をしても大きく成長はできません。
ほぼ負け確定のところから、どうにかしてサービスを立ち上げていく必要があります。
突飛な発想や、誰のニーズもないような変な企画を出す必要はないのですが、少し変わった施策を打ち出して、隙間を狙って施策をすることを毎回強いられてきました。
その都度、「どうやったら勝てるのか」を考えて、施策をひねり出して、実装・検証して何度も失敗もしつつ成果を出してきましたが、施策がうまくいくと、かなり小規模な組織(下手すると一人)で大きな組織に勝つような感じになるので、「ざまあみろ」みたいな気持ちにはなっていました。
かなり昔実施した施策になってしまいますが、変わった施策の例としては、会社員時代に電話帳のWebサービスの広告枠を使って、引越し見積もりサイトの送客用のフリーダイヤルをお客様の店舗に掲載した施策があります。
お客様からすると、既存のユーザーの集客とも被ってしまう一面もあるのですが、電話料金も弊社負担になり、サイト内の露出も大きく上がる為、結果として収益が上がり、ご満足いただきました。
上記のような例は、何個もすぐに提案・実施できませんが、「それありなんだ」という施策をひねり出して、少ない人数・工数で競争相手を出し抜いた時に「ざまあみろ」と気持ちよくなれると思います。
また、当時は一人で事業を担当していて、誰でも知っているような大企業のサイトを数ヶ月で抜かして・突き放すことができたので、なんとも言えない気持ちよさと、この仕事の可能性を強く感じたことを覚えています。
Webマーケターの厳しさ・難しさとは?
成果の計測はかなり正確にできることから、成果がよかった時も悪かった時も明確わかるので、結局業績を上げられたかどうかで判断されるのは残酷だとは思います。
ただ、その分成果が出れば明確に評価はしてもらえる面もありますし、はっきりとした成果が出せるWebマーケターは極端に少ないので、希少な存在になれるのでは?と感じます。
いま企業のWebマーケターに求められている能力とは?
臨機応変に成果を出せる力、もしくは専門性だと思います。
臨機応変に成果を出せる力
先述の通り、専門化・細分化が進んでいるので全部を一人でやりきるのは不可能に近いと思います。
各種クラウドソーシングサイトやスポットコンサルサイトも活用して他のマーケッターや業界の専門家を発掘して力を借りながら成果を出す、「外注力」みたいな力があると臨機応変に成果が出せるようになります。
「外注力」は奥が深いですが、きちんと「ありがとうございます」と言えたり、質問を整理して相手が回答しやすくできたりするだけでも、専門家の協力具合や提示される取引条件が大きく変わってくるので、細かい気遣いで成果が大きく変わります。
専門性
専門性については、例えば直近だとYouTubeのチャンネル運営に詳しい人やInstagramの運用に詳しい人はまだまだ需要に対して人数が少ないと思うので、初心者の方でもすぐに一線で活躍できる可能性は他のジャンルよりも高いかもしれません。
その他昔からあるアクセス解析の分野だったり、SEO対策や広告運用代行だったりもまだまだ人は足りないので、専門性を磨くことでチャンスはたくさんあると思います。
Webマーケターはエンジニアと調整することが多いと思いますが、プログラミング言語はどの程度まで理解しておいたほうがいいと思いますか?
このあたりがよく勘違いされるところだと感じますが、極論相手の話を真剣に聴ければ全く言語を覚える必要はないと考えています。
言語を覚える前の段階で躓いていたり、理解や会話を放棄したりしている方が多いように感じます。
英文の読解やリスニング等にも共通するところがあるかもしれませんが、前後の話がわかるところをしっかり聴いていれば、ざっくり何を言ってるかはわかるはずなので、知識よりも、「わからない・関係ないと決めつけずに、真剣に聴く姿勢」が一番大事だと思います。
例えば、「環境」とか「環境を作る」という言葉がありますが、10年近く在籍しているWebメディア運営企業に所属されている管理職の方が「何を言ってるかわからない」と言っていたことがありました。
こういうのが非常によくないと思っていて。
「自分に関係ない」と思わずに話を聴いていれば、エンジニアの人が「環境を作る」と言っていたらなんとなく「このサイトが開発できる状況を自分のパソコンやサーバーに作る話をしてるんだな…」と推測ができるはずなんです。
わからないと決めつけずに、まず話を聴くことであったりエンジニアの方の文章を真剣に読んだりすることが、サービス開発の第一歩では?と思います。
また、「お前の話はわかりにくい」という上からのスタンスではなく、「わからなくて申し訳ないけど、教えてください」というスタンスで聞けば親切に教えてくれる方も多くいると思います。
また、ざっくりエンジニアの方との会話をスムーズにしたい方には、下記も参考になると思います。
Webサービスが動く仕組み(サーバーとは何か等)をわかりやすく話してくれています。
以下の資料はHTML・CSSの仕組みなどをわかりやすく解説してくれています。
未経験からWebマーケターを目指すには
未経験からWebマーケッターを目指す方はどこからどうやって勉強すべきだと思いますか?
YouTubeの動画を探して観るだけでも、今は勉強ができると思いますし、さらに、動画を観て自分でブログ等を作ってアクセス解析を入れて、運営でもしてみると最高だと思います。
書籍も良書はたくさんありますし、読んでしっかり実務に落とし込める方には最適だと思いますが、今は正直遠回りに感じます。
弊社でも初心者の方と社員・業務委託で多く接してきましたが、書籍を時間をかけて読んでもらうよりも、正直公開されているYouTube動画や、私がスクリーン動画で説明した方がかなり理解・実践できるようになっているように感じます。
こちらの記事を読んでいる方の中で、指導をする立場の方がいたら、Chromeの拡張機能「Screencastify」でスクリーン動画を撮って、考え方ややり方を説明するのがおすすめです。
あとは、20代の方であれば全くの未経験でも勉強しながら取り組める職場もあると思うので、求人サイトで求人を探してピックアップした上で、転職エージェントに相談して「受かる画策」をするとスムーズに転身できるのではないでしょうか。
Webマーケターに向いている人
Webマーケターに向いてる人とはどんな人だと思いますか?
どの職種にも共通するかもしれませんが、やり抜ける人・考え抜ける人は向いていると思います。
Web上の事例や動画などをみると、簡単に成功しているように感じることもあると思うのですが実際は、かなり試行錯誤をしている人がほとんどじゃないかな…と感じます。
粘り強くやり抜いたり考え抜いたりできる方が、担当している事業でのWebマーケティング施策の正解にたどり着いて、成功事例として紹介されているのだと思います。
また、ある程度規模が拡大した後のサービスだと、細やかにコツコツ改善していくことが求められるのでちょっとした気遣いができる方や黙々と作業を進められる方が向いているポジションもあると思います。
Webマーケターの就職・転職事情・転職難易度
就職・転職の事情や、転職の際の難易度について教えてください。
最初の就職先としては、できればWeb広告代理店が一番良いと思います。
私自身は、Webメディアの運営企業に就職をして、非常に良い経験もたくさんできたのですが、Webメディアの運営企業では、限られたサービスにしか関わらないので、どうしても量稽古が足りなくて経験が不足したり独立や転職を考えると、同業や見込みのクライアントとの繋がりが足りなくなったりする為です。
多少薄給や激務になったとしても、たくさんの案件に触れてたくさん頭を使って手を動かせることは、すごく貴重な経験になりますので、多様な案件に触れられるWeb広告代理店の仕事はおすすめできます。
就職先の選び方については、この動画でかなり詳しく説明されています。
どちらも稼ぐ軸で話をしていますが、Webマーケターとして力をつける就職先の解説としても活用できると思います。
転職先としても同じように代理店も良いと思いますが、難易度は上がりますし、新卒時と比べると未経験では転職先の企業が限られます。
先述したように、自習もして本来未経験だと入社できない求人にチャレンジできる素養を備えた上で、業界に詳しい転職エージェントを使って転職先を探すのが良いのではないでしょうか。
転職エージェントも千差万別ですが、中には書類上の経験にこだわらずに志向や職務経験以外の経験も考慮して、求人企業に推薦してくれるエージェントもいるので未経験でも諦めずに、探してみると良いと思います。
また、新卒採用中心のWeb広告代理店でも職種未経験OKの第二新卒の求人募集もあるので、求人サイトや転職エージェントを回って、探してみるのも有効です。
その他、例えばBtoBのWebマーケティングの場面では、スムーズに営業が対応できる問合せを集められる能力が求められることがあり、法人営業経験が大きく活きるので、ご自身の経験が活かせそうなWebマーケターのポジションを探す方法もあります。
取材後記
Web戦略が企業において重要になってきた中で、Webマーケターの需要も増えてきました。
社内で育てることも難しい職種なので、これまでは中小企業だとWeb集客は外注する企業が大半でしたが、最近では少しずつ従業員を雇用して内製化する企業も増えてきました。これからニーズが間違いなく増える職種だと言えます。
スタイリッシュなイメージがあるWebマーケターですが、実際は泥臭い作業のほうが多いとの言葉が印象的です。
本日はありがとうございました。リアルなWebマーケティングで活躍する方のお話を聞けて大変勉強になりました。
いいね!
この記事をシェアする
この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。