ITストラテジストの難易度って?勉強時間や資格のメリットを解説

  • 2021.05.17

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ITストラテジストは情報系の国家資格として知名度の高い資格です。キャリアアップのために受験を考えている人も多いのではないでしょうか。

しかし、ITストラテジストの難易度は高く、気軽に受験できるものではありません。

そこで、今回はITストラテジストの難易度や合格ライン、受験のメリットについて解説します。

ITストラテジストとは

ITストラテジストとはIT知識を駆使してシステム開発を統括し、経営戦略や事業企画、業務効率改善を提案する力が問われる試験です。

ITストラテジストに合格すれば高度IT人材として認識され、企業の情報システム最高責任者(CIO)や最高経営責任者(CTO)、ITコンサルタントを目指すことができます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む今後はIT活用が当たり前になっていくと予想されるため、ITストラテジストの活躍の場はますます広がるでしょう。

ITストラテジストは国家試験の一つで、情報処理技術者試験に分類されています。

経済産業省が認定する国家資格ですので、ITストラテジストを合格することで国が情報処理技術者として定める知識・技能の水準を満たしていることが証明できます。

この資格は情報システムを扱うビジネスマンはもちろん、情報を利用する顧客としてリテラシーをつけるためにも受ける価値のある試験です。

ITストラテジストの難易度は最難関のレベル4

情報処理技術者試験の難易度は4つに分けられています。ITストラテジストは、その中でも最高難易度のレベル4とされており、情報処理技術者試験の中でもっともレベルが高い試験です。

情報処理推進機構によると、令和元年のITストラテジストの合格率は15.4%でした。

これは公認会計士などの難関資格と肩を並べる難易度です。

ITストラテジストの難易度が高い5つの理由

なぜITストラテジストは難易度が高いのでしょうか?

その理由は大きく分けて5つあります。

1つずつ解説していきます。

カバー範囲が広い

カバー範囲の広さがITストラテジストの難易度を高くしている要因の1つです。ITストラテジストは断片的な知識ではなく、幅広い分野の総合的な知識が必要になります。

情報処理推進機構によると、ITストラテジストの試験では下記5つの能力が問われます。

    • 事業環境分析やIT動向分析、ビジネスモデル策定へ助言、事業戦略の策定、経営者へのフィードバック
    • 情報システム戦略や全体システム化計画の策定、情報システム戦略や全体システム化計画の評価
    • 事業・業務環境の調査・分析、全体システム化計画に基づいた個別システム化構想・計画の策定、適切な個別システムの調達、システム化構想・計画の実施結果の評価
    • 情報システム戦略実現のモニタリングとコントロール、情報セキュリティリスクの原因分析や対策策定・実施
    • 関連技術動向や社会的制約などを加味した競争力のあるシステム企画・開発、拡張性を加味した展開戦略や開発戦略の策定・推進

上記からもわかる通り、ITストラテジストは経営戦略とIT知識の両方が必要になります。

IT知識はプログラミングだけではなく、セキュリティに関する知識やITソリューションによる課題解決の知識など、深い知識が求められます。

また、経営者の目線で技術を提案するコンサルタント力も必要になるため、幅広い能力が問われる試験なのです。

現場経験が必要になる

ITストラテジストは知識を勉強すれば合格するものではなく、実務経験があるかないかで合格率が大きく変わります。

IT業界での営業やマーケティングの経験、またはITエンジニアとしての経験があると合格する可能性が上がるでしょう。とくに、事業立ち上げや組織マネジメントの経験があると有利になります。

また、ITストラテジストは頭で考えるだけでなく、経営陣への効果的なプレゼンテーション・提案力や現状分析のための現場ヒアリング力など、ある程度現場で経験を積まないと身につかない能力も必要になります。

実際にITストラテジストの合格者の平均年齢は40歳前後と高めです。全くの未経験でITストラテジストに合格することはかなりハードルが高いでしょう。

試験時間が長い

ITストラテジストは試験範囲が広いため、試験時間も自ずと長くなります。

情報処理推進機構によると、試験当日のタイムテーブルは下記の通りです。

種類 時間 出題形式 出題数
午前Ⅰ試験 09:30-10:20(50分) 多肢選択式(四肢択一)※共通問題 30問/解答数30問
午前Ⅱ試験 10:50-11:30(40分) 多肢選択式(四肢択一) 25問/解答数25問
午後Ⅰ試験 12:30-14:00(90分) 記述式 4問/解答数2問
午後Ⅱ試験 14:30-16:30(120分) 論述式 3問/解答数1問

上記のように、合計5時間の試験を1日で受けます。内容も難しいため、丸1日試験を受けることは肉体的にも精神的にも負担が大きいですよね。

長丁場の試験を万全の状態で受けるためにしっかり準備をすることが大切です。

ただし、午前Ⅰ試験だけに合格した場合、合格から2年以内にITストラテジストを受験すれば午前Ⅰ試験が免除されます。

必ずしも全てに一発合格しないとITストラテジストに合格できないというわけではありません。

合格ラインが高い

ITストラテジストは試験の数が多いですが、それぞれ合格ラインが決まっており、全ての試験で合格点を超えないと合格することができません。

午前試験ⅠとⅡ、午後試験Ⅰでは100点満点中60点以上を取る必要があります。

午後Ⅱ試験では論理の一貫性や妥当性などにもとづいてA〜Dのランク基準が設けられており、ランクAのみが合格となります。

全ての試験で合格点を超えないと合格ではないため、午前試験Ⅰに不合格である場合、それ以降の試験は採点されません。この合格ラインの高さも、ITストラテジストの合格率が低い理由の一つです。

2年の勉強期間を要する

ITストラテジストは一般的に社会人が受ける試験であるため、合格を目指すのであれば日々の業務と並行して試験勉強をする必要があります。

そのため、IT業界で実務経験がある場合でも2年程度の勉強期間が必要になると言われています。

応用情報技術者など試験内容に類似した資格を持っている場合でも、情報系試験最難関であるITストラテジストに合格するためには長い勉強期間が必要になるでしょう。

ITストラテジストの合格率

令和元年度のITストラテジストの合格率は15.4%となっています。

近年の合格率の推移は下記の通りです。

年度 合格率
平成26年度 15.0%
平成27年度 14.6%
平成28年度 14.0%
平成29年度 14.7%
平成30年度 14.3%

ITストラテジストの合格率は非常に低く、難関資格であることがわかりますね。

合格者の特徴

情報処理推進機構によると、令和元年のITストラテジストの応募者の平均年齢は40.8歳、合格者の平均年齢は39歳でした。マネジメントや事業企画などの経験を経た上で資格を取得する人が多いため、年齢が高めですね。

一方で、令和元年の最年少合格者は18歳で、それまでの最年少記録を更新しています。

社会人経験が浅くても、ITストラテジストに合格することは不可能ではありません。

ITストラテジストと他の情報処理技術者試験との難易度の違い

情報処理技術者試験にはITストラテジスト以外にもさまざまな種類がありますが、ITストラテジストとどのように違うのでしょうか。

情報処理技術者試験にはITについての知識が出題される「ITパスポート」や、情報運用に関する基本知識が問われる「情報セキュリティマネジメント」などがありますが、これらは比較的難易度が低いとされる試験です。

一方で、IoTシステムの幅広い知識が問われる「エンベデッドシステムスペシャリスト試験」や情報システムの総合マネジメント知識が問われる「システム監査技術者試験」はITストラテジストとほぼ同じ合格率の難易度の高い試験です。

ITストラテジストと並び、持っていれば転職活動において有利になる資格だと言えます。

ITストラテジストを取得するメリット3選

ITストラテジスト試験は受験者が多い人気資格ですが、合格するとどのようなメリットがあるのでしょうか?

ここでは、合格することで得られるメリットを3つ紹介します。

年収アップを狙える

ITストラテジストに合格すれば自社の事業戦略の提案やITシステムの開発など、より大きな仕事を任せてもらうことができます。

職場での評価も上がり、年収や役職のアップが狙えるでしょう。

実際に情報処理技術者試験を持っているかどうかを昇進の基準にしているIT企業もあります。

需要の高いIT分野で手に職がつく

情報処理技術者の国家資格であるITストラテジストに合格すれば、手に職がつくといっても過言ではありません。

市場価値の高い人材になれるため、ITコンサルタントとして独立することもできますし、転職もしやすくなるでしょう。

合格すれば他試験の科目免除対象になる

ITストラテジストに合格すれば他の難易度の高い試験の一部が免除されるため、受験のハードルが下がります。

科目免除対象の試験は下記の通りです。

    • 中小企業診断士試験:第1次試験科目の一部が免除
    • 弁理士試験:論文式筆記試験選択科目(理工Ⅴ(情報))が免除
    • 技術士試験:第一次試験の専門科目(情報工学部門)が免除
    • ITコーディネータ(ITC)試験:ITC試験の一部が免除

まとめ:ITストラテジストは取得する価値のある資格!

ITストラテジストは合格率が低く、膨大な勉強期間を要する難関資格ですが、合格すれば年収アップなど大きなリターンがあり、十分取得する価値のある資格だと言えます。

IT業界で市場価値の高い人材を目指している人にオススメの資格ですよ。

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この記事を書いた人

すべらないキャリア編集部


「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。

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