損益計算書とは?基本と見るべきポイント、便利な作成ツールを紹介

  • 2020.11.03

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企業の経営状況を見る上で欠かせない財務諸表。
そのうちの一つである損益計算書は会社の経営戦略の立案に大きく貢献します。

損益計算書の目的と記載項目、チェックすべきポイントを説明するとともに便利な作成ツールを紹介します。

損益計算書とは

損益計算書とは、企業の経営状況を把握するための財務三表うちの一つで、P/L表(Profit and Loss Statement)とも呼ばれる重要な決算書です。

損益計算書では、企業の収益や費用、利益などの数字を記録します。

それにより、企業の経営において1年間でどれくらいの収益が発生し、費用がかかり、どれだけの利益が得られたのかを知ることが可能です。

本項では、はじめに損益計算書の目的と貸借対照表との違いについて解説していきます。

損益計算書の目的

損益計算書の目的は、企業経営において、会計期間内(通常は決算日から翌年度の決算日までの1年間)に売上や費用などの会社の経営における数字を記録して、経営においてどれだけ利益を上げることができたのかを確認することです。

企業は、利益を上げるために経営をしています。
そのため、経営を行っている中でどれだけの利益を上げることができたのかを知り、経営が上手く回っているのかを確認するために必要な損益計算書は会社の経営において重要な書類です。

また、損益計算書において企業の収益・費用・利益を明確にしていくことで、企業の中の課題や問題点も明確になり、経営や事業戦略を立てるのに利用することもできます。

貸借対照表との違い

財務三表の中で、貸借対照表という決算書もありますが、貸借対照表と損益計算書は目的や記録の方法が変わってきます。

貸借対照表は、月次や四半期などの特定の時点で、会社がどのような資産や負債を保有しているのかを明確にするための書類です。

貸借対照表の勘定科目は「資産」「負債」「純資産」の3つで構成されており、どこから資産を調達してきて、負債をどれだけ抱えており、純資産がどれだけあるのかを知るために利用されます。

それに対して損益計算書では、会計期間内(通常は決算日から翌年度の決算日までの1年間)の数字を明確にする書類です。

損益計算書の勘定科目は、「収益」「費用(損失)」「利益」の3つで構成されており、どれだけ収益を上げていて、費用(損失)がかかっているのか、利益はどれくらいあるのかを知るために利用されます。

上記のように、貸借対照表と損益計算書では、目的や記録方法に大きな違いがあるのです。

損益計算書の勘定科目

損益計算書は、主に「収益」「費用(損失)」「利益」の3つの分野と13の勘定科目で構成されています。

【損益計算書の勘定科目 一覧】

収益 費用(損失) 利益
1.売上高 4.売上原価 9.売上総利益
2.営業外収益 5.販管費(販売費・一般管理費) 10.営業利益
3.特別利益 6.営業外費用 11.経常利益
7.特別損失 12.税引前当期純利益
8.法人税・住民税及び事業税 13.当期純利益

各項目の詳細について解説していきます。

収益

「収益」は、経営をしていく上で企業の収入に当たる部分を勘定するための分野で、「売上高」「営業外利益」「特別利益」の3つから構成されます。

各勘定科目について確認していきましょう。

売上高

売上高は、会社内で取り扱っているサービスや商品などの本業における儲けのことを指します。

勘定科目の詳細は下記の通りです。

    • 売上高:サービスの提供や商品の販売により売上を得た際に利用する項目
    • 売上値引き:商品の欠損やサービス提供における不備などで値引きを行った際に利用する項目
    • 売上返品:何らかの理由で商品の返品があった際に利用する項目
    • 売上割戻し:早割や大量仕入れなど、特定の理由で商品やサービスに対する割戻しを行った際に利用する項目

上記のように、売上高の科目には、サービスや商品の売上や売上に関連する科目が入っています。

営業外収益

営業外収益とは、利息や配当金などの本業以外の収益を勘定する科目です。

勘定科目は複数ありますが、詳細の一部をご紹介します。

    • 受取利息:預金、貯金、貸付金、有価証券などから発生する利息を受け取った際に利用する項目
    • 受取配当金:他法人からの利益配当、中間配当、剰余金分配などの配当金を得た際に利用する項目
    • 有価証券売却益:有価証券を売却し、収益を得た際に利用する項目
    • 雑収入:営業外利益内に科目が設けられておらず、重要ではない収益を得た際に利用する項目

利息や配当金、雑所得など、本業以外の収益の際に利用する科目を中心に取り扱っています。

特別利益

特別利益は、売上高や営業外利益などの通常の経営活動で発生しない突発的な利益が発生した際に利用する科目です。

特別利益の内容は下記の通りです。

    • 固定資産売却益:固定資産を売却して利益を得た際に利用する項目
    • 償却債権取立益:過年度において貸倒処理をした債権を回収した際に利用する項目
    • 保険差益:保険が適応され、その金額が損失を上回った際に差益として計上するための項目
    • 前期損益修正益:過年度の経理の誤りなどの修正によって得た利益があった際に利用する項目

特別利益では、上記のように経営の中で突発的に発生するような勘定科目を扱っています。

費用(損失)

「費用(損失)」では、経営において収益を上げるための費用や何らかの理由で生じた損失に関する勘定科目を区分している分野です。

「売上原価」「販管費」「営業外費用」「特別損失」「法人税・住民税および事業税」の5つから構成されます。

費用(損失)の勘定科目について見ていきましょう。

売上原価

売上原価は、本業における収益を上げるためにかかった材料費や仕入れ費用のことを指します。

勘定科目としては下記の科目です。

    • 期首商品棚卸高:前期から繰り越された在庫商品の費用を計上する際に利用する項目
    • 期末商品棚卸高:今期で販売できなかった在庫商品を翌期に繰り越す際に利用する項目
    • 仕入高:収益を上げるためにかかった仕入費用(原価)を計上する際に利用する項目
    • 仕入値引き:仕入れた商品に不備欠陥があり、値引きを受けた際に利用する項目

上記のように、売上原価は主に仕入れや商品の棚卸しに関連する勘定科目があります。

販管費(販売費、一般管理費)

販管費(販売費、一般管理費)は、販売や管理にかかる費用を中心に取り扱っており、勘定科目としては一番数が多い科目です。

日々の企業活動に必要な諸経費や手数料、家賃光熱費など幅広い科目が存在します。

比較的科目のイメージがしやすいので、下記では勘定科目の一覧でご紹介します。

報酬関連 固定費用関連 販促/営業関連
・役員報酬 ・賃借料 ・広告宣伝費
・給与手当 ・水道光熱費 ・旅費交通費
・賞与 ・通信費 ・外注費
・退職金 ・リース料 ・交際費
・福利厚生費 ・保険料 ・研修費
諸経費関連
・荷造運賃 ・研究開発費
・諸会費 ・消耗品費
・販売手数料 ・事務用品費
・支払手数料 ・新聞図書費
・減価償却費 ・雑費

上記のように、幅広い勘定項目が存在しており、多くの項目が販管費(販売費、一般管理費)において処理をされます。

営業外費用

営業外費用は、本業以外の費用の中で、本業の継続に関連する活動費用に関する勘定科目です。

営業外費用の勘定科目は下記のような科目があります。

    • 支払利息:借入金や社債が発生した際に利用する項目
    • 貸倒損失:取引先の倒産などにより、金銭が回収できなくなった際に利用する項目
    • 有価証券売却損:有価証券を売却した際に損失として計上をする必要がある場合に利用する項目
    • 雑損失:営業外費用などに科目が設けられていない場合に利用する項目

営業外費用は、営業外収益と対にある勘定科目ですが、営業外費用と営業外収益は全く同じというわけではないということを覚えておきましょう。

特別損失

特別損失は、売上原価や販管費などの通常の経営活動で発生しない突発的な損失が発生した際に利用する項目です。

特別損失の内容は下記の通りです。

    • 固定資産売却損:固定資産を売却し損失が生じた際に利用する項目
    • 固定資産除去損:固定資産を廃棄し損失が生じた際に利用する項目
    • 災害損失:火災・事故・盗難などの災害によって失った資産を計上する際に利用する項目
    • 前期損益修正損:過年度の経理の誤りなどで損失があった際に利用する項目

特別損失では、上記のように経営の中で突発的に発生するような勘定科目を扱っています。

法人税・住民税および事業税

法人税・住民税および事業税は、法人の所得に対して課される税金を計上する時に使う勘定科目です。

勘定科目としては下記の2種類に分かれます。

    • 法人税・住民税および事業税:法人税・住民税・事業税の形状をする際に利用する項目
    • 法人税調整額:法人税の支払いにおいて調整が入った際に利用する項目

また、税金の金額は、税引き全当期純利益に一定の利率をかけて算出される金額になります。

利益

「利益」では、企業の経営の上で大切な指標となる数字を取り扱っている分野です。

「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5科目があり、それぞれは勘定科目の計算によって算出されます。

売上総利益

売上総利益は、企業が売上商品の収益と原価を計算して算出した利益を表す科目です。

計算方法は売上から原価を差し引いた利益のことを指し、場合によっては粗利益と表現されることもあります。

    売上総利益 = 売上高 ー 売上原価

売上総利益は、企業の本業による商品の売上を算出することができるので商品の会社への影響度を図ることにもつながります。

営業利益

営業利益は、売上総利益と販管費をもとに算出していきます。
営業利益の計算補法は下記の通り。

    営業利益 = 売上総利益 ー 販管費(販売費、一般管理費)

営業利益では、商品における利益と商品を売るために使った費用をもとに算出されるので、組織としての営業力がどれだけ利益つにつながっているのかを示す指標となります。

経常利益

経常利益は、営業利益に本業以外の収益や費用を加減して算出していきます。
経常利益の計算方法は下記の通り。

    経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 ー 営業外費用

経常利益を求めることで、組織全体の体力となりうる収益の数値を可視化することが可能です。

税引前当期純利益

税引前当期純利益は、経常利益に特別利益や特別損失を加算して算出されます。
税引前当期純利益の計算方法は下記の通り。

    税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 ー 特別損失

税引前当期純利益を求めることで、突発的な利益や損失も含めて、企業がどれくらいの収益を得ることができたのかを可視化することが可能です。

当期純利益

当期純利益は、企業が最終的に求める必要のある勘定科目です。
税引前当座純利益から法人税・住民税および事業税を差し引いて算出します。

    当期純利益 = 税引前当座純利益 ー 法人税・住民税および事業税

当期純利益を求めることで、企業が最終的に得ることのできる利益が明確になります。

そして、当期純利益が黒字になることで、企業の保有する資産の増加と企業の成長が証明されるのです。

損益計算書の見方・チェックポイント

損益計算書の目的や貸借対照表との違い、損益計算書の勘定科目について解説してきました。

次の項では、損益計算書の見方とチェックポイントについて説明していきます。

5つの利益を確認

まず、損益計算書を確認する際に注目するのが、5つの利益の部分です。
「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」のそれぞれの利益に関するプラスとマイナスを確認して分析をおこないます。

各項目を細分化していくと下記のようなことを分析できます。

    • 売上総利益:自社商品やサービスにおける会社への影響度。商品関連する利益率や原価率の割合
    • 営業利益:商品を売るための組織としての営業力。商品を売るために必要な経費の割合
    • 経常利益:商品による利益以外の会社への収益の貢献度。営業外収益と営業外費用の割合
    • 税引前当期純利益:突発的に発生する費用の会社への影響度。突発的に発生した利益や費用の割合
    • 当期純利益:会社としての最終成績。会社の成長の指標と社会への貢献度

各項目で簡易的な内容について記載しました。

これらの情報以外にも、会社が社会に及びす影響度、費用(損失)勘定項目の割合など、企業が持つ課題・問題点・商品力・チームの貢献度など幅広い視点で分析を行っていくことが可能です。

また、上記の情報を参考にして算出した数値をもとに、今後の企業の経営方針や事業計画の作成に大きな影響を与えることもあります。

そのため、会社の経営に関わる大切な情報として、数値を算出して終わりではなく、正確に数値を算出してレポーティングするなど、見やすくまとめておくようにしましょう。

会社の収益力

次に、会社の収益力を確認します。
会社の収益力は、売上高利益率を求めて参考にします。

    売上高利益率 = 売上利益 / 売上高

売上高利益率を算出することで、会社が取り扱っている商品がどれだけ収益性があるのかを確認することが可能になります。

損益計算書を作成するための便利ツール

最後に、損益計算書を作成するために役に立つ会計ソフトを紹介します。

会計ソフトは商品として数多くありますが、その中でも人気の高いソフトを中心に紹介していきます。

弥生会計

はじめに紹介するのが「弥生会計」です。

弥生会計は、会計ソフトの老舗として多くのユーザーに利用され信頼性が高いのが特徴です。

会計ソフトの中でも、デスクトップアプリかクラウドアプリかに分かれており、個人か法人化によって選択するべきプランも変わってきます。

そんな弥生会計ですが、老舗ではあるものの、技術は最新の技術を取り入れているため、操作性や自動仕分けなどの効率的な会計処理も可能です。

また、過去の実績からサポート体制も充実しているため、何かあった時にも安心して利用することができるソフトです。

クラウド会計freee

次に紹介する会計ソフトが「クラウド会計freee」です。

クラウド会計freeeは、サービス開始から5年で100万人が利用している会計ソフトで、初心者や個人の方でも簡単に操作ができることで人気です。

はじめて決算書を作成したり、確定申告を行ったりする場合でも簡単に処理ができます。

また、スマートフォンアプリも取り扱っているため、PCのみならず、スマートフォンでも簡単に情報入力ができるという点は会計ソフトの中でも大きなメリットになるでしょう。

マネーフォワードクラウド会計

3つ目に紹介するのは、「マネーフォワードクラウド会計」です。

マネーフォワードクラウド会計も会計ソフトとしては認知度が高いマネーフォワード製品になります。

仕訳や決算書作成を自動で行ってくれる点やスマホアプリの利用も可能なため、効率よく会計処理を進めていくことも可能です。

初期費用が0円で、ビジネスプランも1ヶ月お試しで利用できるため、一度利用してみて使い勝手を試してみるのも良いかもしれません。

勘定奉行クラウド

4つ目に紹介するのが、「勘定奉行クラウド」です。

勘定奉行クラウドはCMなどでも目にしたことがあるのではないでしょうか。
業界の中でもトップクラスの会計ソフトで高い操作性を誇り、誰でも簡単にデータ処理や会計書類の作成が可能です。

勘定奉行クラウド以外にも人事労務や販売管理システムなど、幅広く製品を取り扱っているので、多くの仕事を同じ会社の製品で取りまとめたい場合などにはオススメです。

PCAクラウド

最後に紹介するのは、「PCAクラウド」です。

PCAクラウドは、会計ソフトに限らず、幅広い業務における管理システムを提供しています。

そのため、給与や在庫管理といった期間業務との連携が可能で業務の効率化も期待ができるという点が特徴です。

また、導入する場合でも3ヶ月の無料お試し期間があるので、しっかりと会計ソフトやその他のシステムとの親和性、使い勝手などを把握した上で利用することができます。

導入後のトラブルや効率の低下などのリスクを下げることができるので、担当者として安心です。

まとめ

今回の記事では、損益計算書の目的やその他の書類との違い、勘定項目の違いや会計ソフトについて紹介してきました。

記事の内容をまとめると下記の通りになります。

    • 損益計算書は、会社の経営状況を把握するために必要不可欠な書類
    • 損益計算書は、「収益」「費用(損失)」「利益」の3つの分野と13の勘定科目で分かれている
    • 損益計算書において、数字の分析をしていくことで、経営における課題や問題を把握することにもつながる
    • 損益計算書は、企業経営において重要な書類なので、ミスや工数の削減ができるように自動化や効率化を積極的に行うこと
    • 会計ソフトを導入する場合は、会社内の既存のシステムとの親和性や社員が簡単に利用できる仕様になっているかどうかで判断すると良い

損益計算書は企業の経営状況を確認するためには必要不可欠です。

損益計算書を見た際に、企業がどのような状況なのかを把握して、課題や問題定義をできるようにしましょう。

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この記事を書いた人

すべらないキャリア編集部


「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。

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