目次
現代において、コーポレートガバナンスが注目を浴びています。
日本では「企業統治」と訳されていますが明確な定義はないため、具体的な目的や意味を把握している人は少ないのではないでしょうか?
コーポレートガバナンスを理解するために、意味や背景、導入のガイドラインをについて紹介していきます。
コーポレートガバナンスとは?
会社を適切に経営するために、コーポレートガバナンスが必要になるということは聞いたことはあると思います。
ただ、具体的にコーポレートガバナンスが何なのか、説明することは難しいのではないでしょうか。
本項では、そもそもコーポレートガバナンスとは何なのか。言葉の意味や注目されている背景などを解説していきます。
コーポレートガバナンスの意味
コーポレートガバナンス(Corporate Governance)とは、「企業統治」を意味しており、企業が価値を高めていくために、経営や組織運営に対してどのようにして統制をとっていくのかを第三者の視点から監視・監督していく仕組みのことを指します。
コーポレートガバナンスと似た言葉との意味の違い
コーポレートガバナンス(企業統治)と間違えやすい意味を持つ言葉があります。
みなさんも、下記のような言葉を聞いたことはありませんか?
- 内部統制
- コンプライアンス・リスクマネジメント
- CSR
それぞれ、会社の経営において重要な意味を持つ言葉ですが、コーポレートガバナンスとは異なる意味を含むため、その違いについて解説していきます。
内部統制との違い
内部統制は、法令遵守のための社内向けの仕組みのことを指します。
コーポレートガバナンスは、社外からの監視・監督により、適切な経営をして株主の権利保護と不祥事を防止するための経営監視の仕組みです。
どちらも会社に関連する仕組みという点は同じですが、厳密に区分すると内部統制とコーポレートガバナンスは下記のような違いがあります。
- 内部統制:法令遵守のための仕組み
- コーポレートガバナンス:株主の権利保護と不祥事防止のための仕組み
このように、内部統制とコーポレートガバナンスは目的と方向性が異なる仕組みだということを覚えておきましょう。
コンプライアンス、リスクマネジメントとの違い
また、コンプライアンスやリスクマネジメントも意味や関係性を間違えやすい言葉です。
コンプライアンスは法令遵守のことを指し、コンプライアンス強化のためにコーポレートガバナンスを強化する必要があります。
また、リスクマネジメントも、企業のリスクを予測し、ダメージを回避することを指し、コーポレートガバナンスはリスクマネジメントの一部として認識されています。
- コンプライアンス:法令遵守
- リスクマネジメント:リスク回避するための方法
上記のように、関連性が強いため、意味が混合してしまうこともありますが、それぞれの言葉の意味と関係性を認識することで理解がしやすくなります。
CSR
CSR(Corporate Social Responsibility)は「社会的責任」のことを指します。
ここでいう社会的責任とは、企業は利益追求だけではなく、社会的な責任を果たさないといけないという慣習的な考え方です。
CSRは、企業が収益以外にもステークホルダーのニーズに応えるために対応していく必要がある責任のことで、コーポレートガバナンスはCSRの一部として認識されています。
- CSR:社会的責任
具体的には、コーポレートガバナンスがステークホルダーの権利の保護や不正防止の仕組みとしてCSR(社会的責任)に準じていると認識してもらえれば問題ありません。
コーポレートガバナンスが注目された背景
現代において、注目されているコーポレートガバナンスですが、なぜ注目をされるようになったのでしょうか。
コーポレートガバナンスが注目された理由としては、過去の企業経営における不祥事の増加が要因となっています。
日本企業において、バブルの崩壊とともに、企業の不祥事や不正が露呈したことにより、株式会社のあるべき姿として、透明性やステークホルダーの権利の確保を重視した経営をおこなう必要が出てきました。
それにより、日本でもコーポレートガバナンスの考え方が少しずつ浸透してきていて、現代においてはコーポレートガバナンスは企業経営において必須の仕組みとして注目を浴びているのです。
コーポレートガバナンスの目的
企業の不祥事を見逃さず、ステークホルダーの権利を守るために、広がっていったコーポレートガバナンスですが、具体的にどのような目的をもって実施していくのか、2つの目的について詳しく解説をしていきます。
企業の不祥事を防ぐため
1つ目の目的は、企業の不祥事を防ぐためです。
歴史的背景の説明からわかるように、第三者からの監視・監督の大切が組まれていないことで、不祥事や不正がおこないやすい環境になってしまいます。
そして、不祥事や不正が横行することで、強く影響を受けるのがステークホルダーです。
企業の不祥事を防ぐことを目的として、コーポレートガバナンスを実施していくことで、ステークホルダーに対して、「不祥事や不正があった際にも適切な情報開示をおこない権利を保証していきます。」という意思表示にもなるため有効な不正防止の仕組みとして有効的に活用されています。
企業価値を上げるため
コーポレートガバナンスを実施するもう一つの目的は、企業価値を上げるためです。
コーポレートガバナンスを実施していき、企業が適正に統治された経営をおこなうことができれば、それだけ社会的な認知度や評価が上がっていきます。
その結果、企業への信頼の形として売上や営業利益の増加や、利用者・出資者の増加にもつながり、企業価値と成長のために効果的なのです。
コーポレートガバナンスのメリットとデメリット
ここまで、コーポレートガバナンスの注目されている背景と目的を説明してきました。
企業の正統性を示すために有効なコーポレートガバナンスですが、実は場合によってデメリットが生じることもあります。
本項では、コーポレートガバナンスのメリットとデメリットについて説明していきましょう。
メリット
コーポレートガバナンスには次のようなメリットが挙げられます。
企業価値の向上につながる
コーポレートガバナンスを実行し、企業が適正に統治された経営をおこなうことができれば、それだけ社会的な認知度や評価が上がり、企業価値の向上につながります。
経営陣の不正防止につながる
不正をした時に一番発覚されにくいのは、会社を管理して、監視されることのない経営陣です。
そのため、コーポレートガバナンスを実施して、経営陣にも第三者からの監視をつけることで、不正をしづらい環境を作ることができます。
株主が安心して投資することができる
コーポレートガバナンスを実施しているということは、経営を適切に運営していくという意思表明になります。
株主として資産を預けるのならば、コーポレートガバナンスを実施していて、安心できる企業を選択することが多いです。
結果として、コーポレートガバナンスを実施していることを表明することで、株主も安心して投資することができるようになります。
デメリット
コーポレートガバナンスにおいて、実施しても効果がなかったり、デメリットに感じたりすることも起こり得ます。
コーポレートガバナンスを実施することで起こるデメリットは下記の通りです。
オーナー企業では健全に機能しない可能性がある
会社を経営していくなかで、経営者の上層にオーナーが存在する場合があります。
オーナーが企業の経営に強く関わってくると、経営の意思決定や指標は経営者よりもオーナーの意見が優先されてしまうため、結果としてコーポレートガバナンスを導入しても健全に機能しない可能性もあるのです。
経営のスピード感が鈍くなる
コーポレートガバナンスを実施することで、経営の意思決定や情報開示をおこなうためには監査役の確認が必要です。
それにより、経営者だけで方針を決めるのではなく、監査役の意見を取り入れた上での対応になるので、コーポレートガバナンスを実施するよりも、経営のスピード感が鈍くなってしまいます。
コーポレートガバナンス・コードと基本原則
コーポレートガバナンスは、法律では定められてはいませんが、金融庁と東京証券取引所がガイドラインを公開しています。
コーポレートガバナンスの基本原則と対策のことを「コーポレートガバナンス・コード」と呼び、下記の5つの指標を提示しています。
参照:東京証券取引所グループ コーポレートガバナンス・コード
株主の権利・平等性の確保
「株主の権利・平等性の確保」では、株主の実質的な権利を確保するための努力をおこなっていくことを指します。
具体的な行動指標として下記のような内容が挙げられています。
- 株主の権利の確保:株主総会などにおいて、株主の権利を確保できるように適切な対応を行うべき
- 株主総会における権利行使:株主の視点に立ち、権利行使に係る適切な環境整備を行うべき
- 資本施策の基本的な方針:株主の利益に重要な影響を与えることを踏まえて説明を行うべき
- 政策保有株式:適切な対応を確保するための具体策を提示してその基準に沿った対応を行うべき
※原則は合計7つで構成
株主以外のステークホルダーとの適切な協働
「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」では、企業は顧客や取引先、従業員、債権者、地域社会など、企業経営に関わる株主以外のステークホルダーとの適切な関係構築するということを示しています。
具体的な行動指標としては下記の通り。
- 中長期的な企業価値向上の基礎となる経営理念の策定:ステークホルダーへの価値創造に配慮した経営を行い、それらの活動の基礎となる経営理念を査定すべき
- 会社の行動準則の策定・実践:ステークホルダーとの適切な協働やその利益の尊重など、会社としての行動準則を定め、実践すべき
- 社会・環境問題をはじめとするサステナビリティーを巡る課題:社会・環境問題などのサステナビリティーをめぐる課題に対して、適切な対応を行うべき
- 女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保:社内にも多様な視点や価値観が存在する。企業は女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべき
※原則は合計6つで構成
適切な情報開示と透明性の確保
「適切な情報開示と透明性の確保」では、財務情報だけではなく、経営戦略、経営課題なども株主にわかるように情報提供することを示しています。
具体的な行動指標としては下記の通り。
- 情報開示の充実:経営戦略、経営計画、コーポレートガバナンスに関する考え方と基本方針なども開示すべき
- 外部会計監査人:外部会計監査人は株主や投資家に対して責任を持っていることを認識し適正な対応をすべき
※原則は合計2つで構成
取締役会等の責務
「取締役会等の責務」では、取締役会は株主を代弁する存在として、客観的な立場から経営陣を監視したり、環境を整えたりするということを示しています。
具体的な行動指標としては下記の通り。
- 取締役会の役割・責務(1)〜(3):取締役会における役割や具体的な運営方法について示された3つの項目
- 監査役及び監査役会の役割・責務:監査役・監査役会は、取締役会において経営陣に適切に意見を述べるべき
- 取締役・監査役等の受託者責任:監査役及び経営陣は、協働を確保し会社や株主の利益のために行動するべき
- 経営の監督と執行:独立かつ客観的な経営の監督を行うために監督は経営から一定の距離をおくべき
※原則は合計14つで構成
株主との対話
「株主との対話」では、会社の地蔵的な成長のために、株主総会以外でも株主と建設的な交流の場を設けることを示しています。
具体的な行動指標としては下記の通り。
- 株主との建設的な対話に関する方針:株主とは、会社の成長や価値の向上のために建設的な対話を促進する環境作るように心がけるべき
- 経営戦略や経営計画の策定・公表:自社の収益や費用などの詳細情報を株主に開示して説明を行うべき
※原則は合計2つで構成
コーポレートガバナンスを強化する方法
ここまでコーポーレートガバナンス・コードの詳細について解説してきましたが、最後に、企業価値を高めるために重要なコーポレートガバナンスを強化する具体的な3つの方法をご紹介します。
- グローバル標準をベースとした業務の可視化・評価
- 内部統制の強化
- 監査体制の強化
グローバル標準をベースとした業務の可視化・評価
はじめに紹介するのが、グローバル標準をベースとして業務の可視化・評価です。
企業経営において、グローバルに展開している企業では、ステークホルダーの基準がグローバル基準になることが多いです。
そのため、自社の基準も日本国内ではなく、グローバル基準で業務を可視化していくことが大切になってきます。
内部統制の強化
2つ目が、内部統制の強化です。
コーポレートガバナンスの強化のためには、透明性を持って情報開示することが必要です。
それは、内部統制でも同様で、内部統制を強化することで結果として、コーポレートガバナンスの強化にもつながっていきます。
監査体制の強化
3つ目が、監査体制の強化です。
社外監査役・社内監査役を導入して、企業経営において監査機能を充実されることで、不正の防止の強化につながります。
また、監査機能の充実により、透明性を強めることができるので、結果としてコーポレートガバナンスの強化につながったりします。
まとめ
コーポレートガバナンスは企業価値を高めるためには必要不可欠です。
ただリスクマネジメントやコンプライアンス強化、監査や内部統制といったことにも取り組まないと強化にはつながりません。
コーポレートガバナンスを強化する施策を打ち、よりステークホルダーが安心して関わっていける会社作りをしてください。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。