目次
顧客のニーズが多様化する今、リーンスタートアップというビジネス手法が注目されています。
起業や事業立ち上げを考えている人は、必ず知っておくべき考え方です。今回はリーンスタートアップのサイクルや注意点、役立つフレームワークについてご紹介します。
リーンスタートアップとは
リーンスタートアップとは、必要最低限の機能でサービスをリリースし、ターゲットのニーズに刺さるのかを検証したのち、検証結果をもとにサービスを開発していく手法のことです。
これはアメリカの実業家によって2000年代に発案された手法で、現在も多くの起業家がこのモデルを使ってサービス開発をしています。
この手法が流行した理由として、サービスが溢れかえる昨今、完璧なものを作り上げてからリリースするという従来のやり方ではリスクが大きすぎること、ニーズが多様化しておりどんなサービスが売れるのかが最初からわからないことが挙げられます。
リーンスタートアップとMVP
MVP(Minimum Viable Product)とは、必要最低限のコストと時間で作る、プロダクトの試作品のことです。
ターゲットとなる顧客が実際にそのプロダクトを買ってくれるのか否かを検証することを目的に作ります。
変化のスピードが激しい現代において、いかに顧客のニーズを正確に掴めるかが事業の成功の肝になります。開発に時間をかけてプロダクトをリリースしても、ニーズとずれたりタイミングを逃したりしてしまっては意味がありません。
検証結果をもとに試作品を改善し、よりターゲットに受け入れられる形に変えていくことこそが、リーンスタートアップの本質です。
リーンスタートアップの3つのメリット
リーンスタートアップには下記3つのメリットが存在します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
顧客のニーズに刺さるサービスが作れる
1つ目は、顧客のニーズに刺さるサービスが作れることです。
MVPの検証により、そのプロダクトに必要な機能をより明確にした上で本格的に開発を進めることができます。
顧客のフィードバックから新しいアイディアが生まれることがある
2つ目のメリットは、顧客のフィードバックから新しいアイディアが生まれることがあることです。
検証により新たなニーズが見つかり、事業の方向性を一から見直すというケースもあります。
迅速な判断でリスク回避できる
最後のメリットは、例え仮説がずれていて、やっぱりこのプロダクトは成功しないと判断した場合でも、MVPの段階で分かるため最小のコストで事業撤退することができることです。
リーンスタートアップの2つのデメリット
一方、リーンスタートアップには下記2つのデメリットが存在します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
SNSで悪い評判がすぐ広がってしまう
1つ目のデメリットは、MVPが不評だった場合、SNSで悪い評判がすぐ広がってしまうことです。
サービス名やプロダクト名の悪評が広まってしまうと、本リリースが難しくなってしまい、検証が無駄になってしまいます。
競合他社に同じ機能を作成される
2つ目のデメリットは、例えMVPが成功したとしても、競合企業に気づかれてしまい、同じ機能を作られてしまうリスクがあることです。
リーンスタートアップは時代遅れなのか
2つのデメリットはすぐ情報が拡散されるSNS時代ならではのものですよね。これらの理由から、リーンスタートアップは時代遅れだと言う人もいます。
しかし、リーンスタートアップは決して闇雲に質の悪いプロダクトをリリースすることではなく、精度の高い仮説のもとより良いサービスを作るために検証することです。
また、精度の高い仮説検証によって得られたインプットは、表面しか見えていないライバル企業に簡単に真似できるものではありません。
リーンスタートアップは正しく実施すれば今の時代でも十分通用する手法なのです。
リーンスタートアップの4つのサイクル
ここでは、リーンスタートアップを実践する際の4つのサイクルについてご紹介していきます。
それぞれについて詳しく解説していきます。
構築
まずはサービスやプロダクトを立案する「構築」から始まります。
ここで市場の課題やターゲット顧客のニーズについて仮説を立て、仮説に沿ってプロダクトを設計します。
そして、検証したいプロダクトの試作品であるMVPを作ります。
計測
MVPができたら、仮説に基づいて顧客の反応を検証する「計測」をおこないます。
ターゲット層のアーリーアダプターにMVPを試してもらい、どれくらいの人が実際に使ってくれるか(買ってくれるか)、どこで離脱するか、どこがウケが良いか、など様々な検証をおこないます。
学習
計測によって得た検証結果をプロダクトに反映することを「学習」と呼びます。
反応が悪かった機能を改善したり、反応が良かった機能を拡張したりと、MVPを本リリースに向けて完成させていきます。
再構築
場合によっては仮説がずれており、事業の方向性を一から立て直す必要があるケースもあります。
その場合はプロダクトを「再構築」し、再び計測→学習のサイクルを実施します。
再構築は決して失敗ではなく、むしろ事業の成功確率を高めるステップとなります。
リーンスタートアップを活用できる分野4選
リーンスタートアップは相性が良い分野とそうでない分野があります。
ここではリーンスタートアップをより活用できる分野を4つご紹介します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
セミオーダーメイド分野
セミオーダーメイド分野はリーンスタートアップと相性が良いと言われます。
セミオーダーメイドとは、多様化する細かなニーズに答えるサービスのことです。
最近ではオーダメイドの靴や洋服など、様々な業界がセミオーダーメイド市場に参入していますよね。
セミオーダーメイド分野は顧客の細かな要望を正確に掴む必要があるため、リーンスタートアップの手法を取る企業が多いのです。
Webサービス
変化が激しいWebサービスも、リーンスタートアップと相性が良いです。
反応がリアルタイムで分かるため、施策検証もスピーディにでき、より早く顧客のニーズを掴むことができるのです。
また、Webサービスは試作品を比較的早く作ることができるため、新たなWebサービスを作る場合はまず試作品を出して反応を見る、と言う手法が一般的になっています。
プロフェッショナルサービス分野
事務系や金融系など、プロフェッショナルなサービスのデジタル化が進んでいますが、こういったサービスもリーンスタートアップの手法が活用できます。
対面で行っていたサービスを非対面で再現するとなると、どのような機能が求められているのかが不明確なため、実際にユーザーの声を聞くことが最も正確で手っ取り早いからです。
通販ビジネス分野
流行によってニーズの変動が激しい通販ビジネス分野でも、リーンスタートアップの手法がよく使われます。
既存の情報だけでニーズを掴みにくい分野なので、先に低コストでニーズを把握する方が効率が良いのです。
リーンスタートアップを活用する3つの注意点
ただMVPを出すだけでは、リーンスタートアップは成功しません。
ここではリーンスタートアップの注意点を3つご紹介します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
本質を理解する
課題が明確で、技術によって解決の道筋が見えているものであれば、リーンスタートアップは有効です。
しかし、ただ闇雲に試作品を出すことがリーンスタートアップの成功につながるとはかぎりません。作ろうとしているサービスとリーンスタートアップが合わない場合もあります。
リーンスタートアップの本質を理解し、課題に対して解決できるサービスを提供すると言うビジネスの本質からずれないことが大切です。
ツールにばかり頼らない
リーンスタートアップという手法はツールの一つにすぎません。リーンスタートアップに固執して手段の目的化が起きると、本質的なビジネスの成功から離れてしまいます。
リーンスタートアップを理解した上で、必要であれば自社のビジネスにも適用するというスタンスが良いかもしれません。
考え方の相違
リーンスタートアップはスピーディに検証ができる分、チームメンバーと足並みを揃えることが非常に重要になります。
仮説検証に対する考え方や、サイクルの回し方など、認識を統一することでスムーズなビジネス進行をすることができます。
役立つフレームワーク2選
リーンスタートアップを始める際に役立つフレームワーク2つをご紹介します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
リーンキャンバス
リーンキャンバスはリーンスタートアップを成功に導くフレームワークです。
課題やソリューション、収益の流れなど9つの要素を1枚の表にまとめます。
事業計画書の場合は何十ページもあるため作成に数週間かかりますが、リーンキャンバスであれば1枚にまとめれば良いため、早ければ半日で作成することができます。
実際に、リーンキャンバスの設計者であるアッシュ・マウリャ氏は、リーンキャンバスを15分以内で書くことを奨励しています。
また、1枚に収まるように簡潔に書くこともポイントです。
MVPキャンバス
MVPキャンバスはリーンスタートアップの仮説検証の質を上げるために作成するフレームワークです。
仮説とその検証によって得たい学びを言語化し、どのように検証するのか、そのために必要なMVPやデータなど10つの要素をまとめます。
リーンキャンバスとの違いは、MVPキャンバスは仮説検証にフォーカスを当てていることです。
MVPによってを学びたいのか?を明確にすることで、学びから逆算して仮説検証することができるのです。
リーンスタートアップの事例2選
リーンスタートアップを具体的にイメージできる、リーンスタートアップの事例をご紹介します。
- 食べログ
それぞれについて詳しく解説していきます。
食べログ
あの食べログも、最初はMVPからスタートしたサービスです。
カカクコムが運営する食べログは簡易版からスタートし、その後ユーザーのフィードバックをもとに改善を重ね、現在のサービスまで成長しました。
要望があった追加機能を1週間で実装したこともあります。スピーディな変化に強いWebサービスならではの成功事例です。
Instagramは最もわかりやすいリーンスタートアップの成功事例です。
Instagramは実は位置情報の共有サービスとして始まっており、そこから学習サイクルを回し、画像共有に需要があることにたどり着きます。
そこから現InstagramのMVPをリリースし、現在のサービスまで改善をし続けたのです。
リーンスタートアップを学ぶのに役立つオススメ書籍2選
最後に、これからリーンスタートアップを学ぶ人向けにオススメの書籍を2つご紹介します。
それぞれについて詳しく解説していきます。
Running Lean ―実践リーンスタートアップ(アッシュ・マウリャ)
リーンスタートアップを始めたいなら必ず読むべきなのが「Running Lean」です。
起業したい人や事業立ち上げを任されている人など、具体的な実践法を知りたい方にオススメです。
リーンスタートアップの成功者から何をするべきかを学ぶことができます。
リーンスタートアップ(エリック・リース)
リーンスタートアップの提唱者であるエリック・リースの著作です。
無駄なくスピーディに、顧客に学びながらビジネスを成長させていくという手法を、自身の体験を交えて体系的に説明しています。
リーンスタートアップの5原則や、用語の解説もあるため、入門書としてオススメです。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。