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「このサービスを周りの人に勧める可能性はどれくらいありますか?」という質問を皆さんも聞いたことがあると思います。
これはNPSと呼ばれる指標を測るための質問です。
自社の商品・サービスなどに対して顧客がどのようなイメージを持ち、どう行動を起こすかを把握するために注目されているNPSですが、まだ日本では十分に浸透しているとは言えません。
この記事ではNPSの目的やメリット・デメリット、調査方法、さらには調査票の作成方法などを解説します。
自社のブランドやサービスの更なる成長を目指しているマーケティング担当者の方は、是非ご一読ください。
NPSとは
まずはNPSの意味や目的、顧客満足度であるCSとの違いについて詳しくお話していきます。
NPSの目的とは?
NPSとはNet Promoter Score:ネット・プロモーター・スコアの略で、顧客ロイヤルティを図るための指標です。
つまり「企業やブランドに対して顧客がどれだけ愛着や信頼感を持っているか」を数値化したものと言えます。
もともとアメリカのコンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘル氏が提唱した概念で、今ではAppleやGoogle、P&Gなどを含めた欧米の売上上位企業のおよそ3分の1以上が活用しています。
NPSを計測する目的は「顧客ロイヤルティを明確な指標に基づいて分析することで、商品やサービス、顧客対応などにおける課題を探り、様々な対策を取って収益向上を図ること」とされています。
CSとの違い
同じような顧客の指標として顧客満足度:CS(Customer Satisfaction)がありますよね。
CSは日本の企業にもかなり浸透しており、こちらの方がなじみ深いと思います。
NPSはこのCSとよく混同されがちですが、顧客の責任範囲や時間軸で大きく異なります。
CSは顧客自身のその時点での感想です。
商品やサービスの評価という点ではNPSと同様ですが、あくまで自分自身の評価で個人の責任に留まり、リピートしてくれるかどうかも分かりません。
一方のNPSは、顧客に対して自分の評価だけに留まらず次のアクション、つまり「友人や知人・同僚に勧めるか否か」を確認するため、顧客の責任範囲は広くなります。
また他者に勧めるという行動を確認する点から、将来の収益性まで計測することが可能です。
このようにNPSは長期的な業績と強い相関関係があり、一時的な評価でしかないCSとは大きく違うことがお分かりいただけたと思います。
NPSの導入ポイント
NPSだけを測るのであれば、「あなたがこの会社(またはブランド、商品・サービス)を友人や知人、同僚に勧める可能性はどれくらいありますか?」というシンプルな設問のみです。
しかしNPSを最大限活用して収益を高めていくには、上記の推奨度の回答に対する背景部分や理由を掘り下げるような設問も含まれたアンケート設計が必要になります。
またNPSやその背景がわかっても、アクションを起こさなければ意味がありません。
NPSの分析から判明した課題などをふまえて、しっかりと計画に落とし込み、改善アクションを行う体制作りも欠かせないでしょう。
NPSのメリット、デメリット
NPSは顧客分析として様々な企業が導入しているため、どうしてもメリットに目が行きがちですが、もちろんデメリットもあります。
ここからはメリットとデメリットの両方の側面からNPSを見ていきましょう。
- NPSを改善すれば売り上げが向上する
- 競合との比較ができる
- シンプルな指標なので手間がかからない
NPSのメリット
まずはNPSの代表的なメリットを3つご紹介していきます。
NPSを改善すれば売り上げが向上する
1つ目のメリットはNPS改善による売上向上です。
NPSは「顧客が周囲に勧めるか」という行動を確認する性質上、将来の収益が予測できることは言及してきました。
NPSが高いということは、それだけ周りの友人や知人に対して自社や自社の商品・サービスを紹介しており、且つ本人も周りに紹介したいと思うほどロイヤルティが高いことを示しています。
つまりNPSが高いほど、収益を維持・向上できる可能性が高くなるという正比例の関係が成り立つので、結果を分析して着実に改善していけば業績も上がることになります。
顧客分析の明確な指標として、世界のリーディング・カンパニーが活用しているのも、このメリットがあるからでしょう。
競合との比較ができる
2つ目のメリットは競合との比較が可能という点です。
NPSは設問や回答方法、計算方法に至るまで全て統一されています。
そのため他社のNPSとの比較もとても簡単にできますし、インターネットで公表されている業界別のNPSを見ることで、業界内での自社のポジションを把握することができます。
ただし業界によってはNPSの平均値は大きく変わるので、一概に一企業のNPSだけに注目してもあまり意味はなく、相対的に判断することが求められます。
シンプルな指標なので手間がかからない
3つ目のメリットはシンプルな指標であるという点と手軽さでしょう。
NPS自体を把握するために必要な設問は、先ほどお話した通り「知人や友人、同僚に勧める可能性はどれくらいありますか?」という質問のみ。
回答も0~10の11段階で評価するだけと極めてシンプルですので、NPSの値を求めるだけであればアンケートも簡易なもので構わず、手軽に導入できるのです。
- 詳細な分析ができない
- 結果に対するアクションを行わないとビジネスが成長しない
NPSのデメリット
つづいてNPSのデメリットを見ていきましょう。
詳細な分析ができない
手軽に計測ができる反面、NPSだけでは具体的なアクションに落とし込めるような示唆を得るだけの分析はできません。
批判者が何故批判するのか、推奨者がなぜ推奨してくれたのかは、他者への推奨度を聞く質問だけでは測り得ないからです。
NPSの結果を活かし、実際のアクションに落とし込むには、何故その解答になったのかという背景や理由を探るための設問を設けた上で分析・調査を実施していく必要があるのです。
結果に対するアクションを行わないとビジネスが成長しない
どれだけ示唆に富んだデータが得られても、行動に繋がらなければ何の意味もないことは皆さんも実感されていると思います。
NPSを分析することで把握した様々な課題を、具体的なアクションに繋げて改善していかないと、ビジネスが成長せず収益も向上しないでしょう。
現状把握のためだけにNPSを導入するのではなく、収益を向上させるという目的を果たすためには、この点を十分考慮してNPSを導入すべきです。
NPSの調査票の作成方法
続いてNPSで最も重要な調査票を作成するポイントをご紹介しています。
推奨度の質問はいちばんはじめに
NPSの調査票では、先ほどもご紹介した「あなたはこの会社(ブランドもしくは商品、サービス)を知人や同僚に勧める可能性はどれだけありますか?」という推奨度の質問を最初に設けることが基本になります。
そもそもNPS自体はこの設問だけで把握することができるので当然のことですね。
そのあとの設問に回答の背景に影響を与えている背景や理由などを探る設問を設けるのが一般的と言えるでしょう。
設問は7問以内
先述の通り回答の背景を探るためには、推奨度を問う以外にもいくつか設問を設ける必要があります。
こうした状況から会社側の知りたいことが満載なアンケートを作りたくなりますが、あまりにも設問が多すぎると顧客の心理的負担が増え、回答率が下がってしまう事態に繋がりかねません。
気軽に質問に答えられるのは7問以内というデータもありますので、NPSのアンケートも基本的には推奨度の設問含めて7問までと決めて設計しましょう。
回答の所要時間は数分で
設問数もさることながら、回答自体に時間がかかる設問も顧客に心理的負担をかけてしまいます。
回答率を落とさないためには、全ての設問に対してトータルで5分以内に回答できるように設計すべきでしょう。
設問の内容と回答のバランスを上手く調整しつつ、質の高い調査票作りを実現してください。
NPSの計算方法
続いてNPSの算出方法を解説します。
回答者を推奨度によって3つに分類する
まず顧客に対し「あなたはこの企業(またはブランド、商品・サービスなど)を友人や同僚に勧める可能性はどれくらいありますか?」と質問し、0~10点の点数をつけて評価してもらうことから始めます。
その結果をもとに以下のように3つに分類します。
- 批判者:0~6点をつけた顧客
→友人・知人に対して商品やサービスを買わないように話す可能性が高く、自社に対して不満を持っている顧客層 - 中立者:7、8点をつけた顧客
→商品やサービスを批判することもないが、周りに勧めるほどでもないと感じている顧客層 - 推奨者:9、10点を付けた顧客
→サービスや商品を提供する会社に対して高いロイヤルティを持ち、積極的に周りに勧めてくれる顧客層
全ての回答者を上記のように分類した後、それぞれ全体に対しての割合がどれくらいかを算出します。
推奨者の割合から批判者の割合を引く
それぞれの割合の算出が終われば、次に9、10点と付けた回答者である推奨者の割合から 0~6点と付けた回答者である批判者の割合を引きます。
この計算から得られた値がNPSとなります。
例えば10人にNPSのアンケート調査を実施したとします。
その結果
・3人が批判者:30%
・3人が中立者:30%
・4人が推奨者:40%
となったとします。
この推奨者の40%から、批判者の30%を引いた10というスコアがNPSとなります。
NPSの調査方法
NPS調査には、大きく分けて2種類の調査方法があります。
それぞれの調査方法についてみていきましょう。
リレーショナル調査
企業やブランドに対して、顧客がどの程度ロイヤルティを感じているかという関係性にフォーカスして全体的な評価を測るために実施する調査です。
顧客は年間を通して企業のブランドや商品・サービスと直接的、間接的に接点を持つことになります。
これら接点や体験を総合して評価をする形になります。
リレーショナル調査では、各接点・体験においての満足度をNPSと並行して調査することで、どの顧客接点が高い評価に繋がっているのかを把握できるので、顧客にとって重要な体験を把握することも可能です。
調査の頻度としては、複数の顧客接点における評価を総体として観るという性質上、年1回や半年に1回といったように定期的に実施するパターンが多いです。
トランザクショナル調査
顧客が対象とする特定の製品やサービスを利用した直後に実施する調査です。
店頭での接点は勿論、WEB上でのサービス利用などあらゆる接点で実施します。
各体験の直後に調査するため、より正確な評価を得ることができ、体験における課題を見つけやすいという利点があります。
リレーショナル調査では把握しきれないロイヤルティの都度の変化を把握することで、すぐさま改善への行動を取ることが出来るというわけです。
体験ごとに継続的に実施することが望ましいですが、何か大きな変化、たとえば新製品のリリースなどがあったタイミングで実施するパターンもあります。
まとめ
企業のブランドやサービス、商品に対しての顧客ロイヤルティの高さを表すNPSをしっかりと分析してアクションに落とし込めば、必ず業績の向上に繋がっていくでしょう。
調査において多少の工数は掛かりますが、その工数をかけても余りあるほどの利点があるので、是非皆さんもNPSを導入して企業価値や収益を高めていってください。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。