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さまざまなビジネスシーンにおいて社員の心理的安全性を確保する重要性が高まりつつあります。
心理的安全性への配慮が不足することで会社とそこで働く社員の双方が不利益を被ることにもなるため、特に人の上に立つ立場の人ほど気を付けなければなりません。
今回は、社員の心理的安全性を高める方法をお伝えしていきます。皆が気持ちよく働ける環境を構築することで、上司や部下、会社とそれぞれが大きなメリットを享受できます。
心理的安全性とは
心理的安全性とは、精神的に安心できる度合いを表した言葉です。
他者からの評価を過剰に恐れたり、消極的な言動が多い状態は心理的安全性が担保されていない状態です。
反対に積極的な発言ができたり、いつも生き生きと働いている状態は心理的安全性が高い証拠です。
もちろん、心理的安全性が高いほど社員の働きやすさにも好影響を与えます。そうしたメンバーが多ければ社内のコミュニケーションも活発になり、企業にとっては生産性の向上や離職率の低下にもつながります。
心理的安全性が高い社員の特徴
- 会議やミーティングなどで素直な意見を提示できる
- ほかの社員同士とのコミュニケーションが円滑になる
- 働いていて明るい気持ちになる
- 人間関係などに不安を抱くことなく仕事に集中できる
心理的安全性が高い社員は、「自分はこの組織に受け入れられている、評価されている」と感じている状態です。
そのため、会議やミーティングの場でも自分の意見を臆せず提示する傾向が高いです。
その場で有効な議論が行われたり、積極的な発言・提案が多いほど、新商品の開発や新規顧客の創出にも大きな役割を果たします。
また、心理的安全性が高くなるということは、簡単にいえば「誰もが気持ちよく仕事ができるようになる」ということです。
そうなると社内のコミュニケーションが円滑になり、さらに従業員のモチベーションアップにもつながるため、企業にとっても大きなメリットが生まれます。
心理的安全性が低い社員の特徴
一方で、心理的安全性の低い社員には以下のような特徴が現れます。
- 会議やミーティングなどで発言する気が失せる
- 社員同士のコミュニケーション少なくなる
- 楽しく働けない
- 人間関係などに不安を抱き、仕事に集中できずに転職などを考え出す
たとえば、会議が行われるたびに上司の独断的な判断で自分の発言した意見が却下された場合、このメンバーは自信をなくして積極的に発言しようと思わなくなる可能性があります。
周囲も「どうせ却下されるなら発言しないでおこう」という消極的な社員が多くなってしまいます。
すると意見や提案が少なくなり、一部の意見が反映された偏った結論になってしまう、なかなか結論に至らないため、会議やミーティングなどの時間が伸びるといったデメリットが生まれます。
こうした傾向は、職場全体の雰囲気を悪くし、社員のエンゲージメントの低下につながります。
心理的安全性の低い社員は発言の機会を奪われたり、人間関係にも不満を抱くようになるため、徐々に会社を離れていきます。
社員の新陳代謝が激しくなると知識や技術も蓄積されないため、ますます企業の成長を妨げてしまいます。
心理的安全性が低下した職場は社員と企業どちらにとっても旨みはありません。
心理的安全性を測る
従業員の心理的安全性を確保するためには、まずその度合いを測定しなければなりません。ここでは、心理的安全性の測り方をお伝えしていきます。
測定方法
心理的安全性を測定する方法は、内的と外的の両面からアプローチすることです。
内的アプローチとは、「チームや組織に属している自分自身がどのように感じているか」ということで、主に主観的な意見や意識がもとになっています。
一方の外的アプローチとは、「チームメンバーや組織の人員から見たその人の評価・見え方」のことです。
このように内的・外的アプローチを同時にかけることで、主観と客観的な情報を得ることができます。
客観的には問題なさそうに見えても本人が深く不安に感じていることもあるため、主観的な意見や意識を尊重することが大切です。
七つの質問で測定する
心理的安全性を測定する手段として、提唱者のエイミー・エドモンドソン氏が考案した以下の7つの質問が役立ちます。
- ミスをしたときにメンバーから批判されることが多いか?
- メンバー間で異論が出ると批判的・拒絶的になることが多いか?
- メンバー間で自由闊達に意見が言い合えるか?
- メンバー間で互いのサポートが行われているか?
- リスクのある行動をしてもほかのメンバーが受け入れてくれるか?
- 仕事の邪魔をしたり罠にかけてくるような人はいないか?
- チームや組織の間で自分が尊重されていると感じているか?
上記の質問に対してポジティブな答えが多いと、ひとまず心理的安全性を心配する必要はありません。
しかし、ネガティブな意見が多数を占める場合、組織またはその人自身が低い心理的安全性に陥っている可能性があります。
心理的安全性を確保するためのポイント
以下4つのポイントに配慮すれば、従業員の心理的安全性を確保しやすくなります。
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
1. 自己肯定感の確保
心理的安全性を確保するには、まず本人に自己肯定感を確保してもらう必要があります。
自己肯定感とは、自分のことをさげすんだり過小評価することなく、明るい気持ちで自分自身を受け入れることです。
自己肯定感を持つには、エクスプレッシブ・ライティングという方法が使えます。自らが感じるネガティブな情報をすべて紙に書き出すことにより、内面的な弱さを客観的に見つめることができる方法です。
2. 不安の原因を排除
従業員がどんなことで不安を感じているのか、またはその対象者は誰かといった情報を集めていきます。不安の原因を探っていくことで、適切なアプローチによってその解決策へとたどり着くことが可能です。
3. ポジティブシンキングを意識
無理強いはしませんが、従業員には前向きでポジティブな感情を持ってもらうよう働きかけてください。否定的な感情よりも前向きな姿勢で仕事に臨むほうが、パフォーマンスは改善しやすいからです。
明るい気持ちにさせようと褒めすぎるのも問題ですが、注意と称賛をバランス良く組み合わせて使うことがポイントになります。
4. 評価方法を検討する
従業員によっては正当な評価が得られていないと感じ、将来に不安を持つこともあります。
その場合は評価方法を再考する必要があるため、透明性の高さ・公平さ・公正な評価という3つの基準をもとに方法を見つめ直してください。
心理的安全性を高める方法
今度は、心理的安全性を高めるさらに具体的な方法をお伝えしていきます。実際にビジネスの現場に落とし込んでいくことで、徐々に従業員の士気やモチベーションも高まっていきます。
1.相互理解を深める
まずは従業員と人事部との、または従業員とチームメンバーとの相互理解を深めるため、次のような行動を実施していきます。
もちろん環境の整備も重要ですが、それよりも従業員と信頼関係を構築しておかなければなりません。互いに信頼が生まれることで心理的安全性の構築に向けた話し合いもスムーズになります。
価値観を認め合う
社内で働く人それぞれの価値観や考え方は各個人によって異なります。そのため、たとえ上司だからといって部下に自分の価値観を押し付けるようでは、反発心を抱きたくなる可能性もあります。
「価値観は人それぞれ」「この人の意見も面白い」という姿勢で価値観を認め合うことが大切です。
関係性の構築
上司が部下を信頼する一方で、上司も部下から信頼を置かれるような関係性の構築が重要です。
そのためには上司のほうからまず部下を尊重し、提案された意見にしっかりと耳を傾けたり、相手の行動を支援するような言動も必要になります。
メンバーのフォロー
人は誰かからフォローされると、何となく後ろ盾があるように感じて安心感を抱きやすくなり。よって、上の立場に立つ人ほど部下のことを思いやり、ミスや不備があった場合でもフォローに回ることが重要になります。
ビジネスの場なので、相手が調子に乗らないようときには叱ることも大切です。
2.発言しやすい環境の構築
従業員との相互理解を深めて初めて、次の環境構築へと移っていきましょう。部下やメンバーが発言しやすい環境を作るには、以下3つの方法が利用できます。
それぞれについて解説していきます。
共通認識を持つ
仕事では組織やメンバー間で複数の人間同士が仕事を行います。もしその間の連携がうまくいかないという場合は、それぞれの認識が共有できていないことが原因です。
共通認識を持つには、チームやプロジェクトにおいて共通言語を作るのがおすすめです。どんな言葉でも良いのでそのチームやプロジェクトでしか使わない言語を作っておくと、その言葉を聞いただけで皆が同じ認識を抱きやすくなります。
平等な発言機会
役職や経験によって発言権に違いがあれば、発言権が低い人ほど不満を抱えてしまう可能性があります。
また議論の内容に偏りが生じて結論が極端になってしまう恐れもあるため、従業員の立場にかかわらず、どんな人でも公平に発言できる環境を整えることが大切です。
アイスブレイクの活用
会議やミーティングなどで張り詰めた緊張感が続いてしまうと、誰もが息を詰まらせてしまいます。そこで、定期的にティーブレイクなどの休憩を挟んだり、雑談の時間を設けることが必要です。
また、簡単なゲームを行って場の雰囲気を和ませる方法も有効です。
3.ポジティブな表現・思考の浸透
従業員との相互理解を深め、環境を整えることができれば、実際に会議やミーティングなどを開催しましょう。その際に大切なポイントは、ポジティブな表現や思考を場に浸透させておくことです。
たとえば、一人ひとりの発言に対してしっかりと頷いたり、「良い提案だね」というポジティブな反応を返すといった方法が使えます。
また、「Yes・No」で終わる質問の仕方ではなく、「あなたはどう思う?」など、相手の思考を引き出すような問い方を心掛けましょう。
4.チームの見直し
もしここまでお伝えした方法でも従業員の心理的安全性が高まらない場合は、組織やチーム間の相性が悪い可能性も考えられます。
相性の良し悪しは人間関係において重要なウエイトを占めており、そのことが原因でチーム内の雰囲気が悪化したり、不満を抱く人が絶えない場合も多いです。
その場合、思い切ってチームメンバーを入れ替えることも大切です。それぞれの置かれている立場や性格なども把握しつつ、相性の良さそうなメンバー同士を組んでいくとチームを立て直すことができます。
心理的安全性を高める際の注意点
心理的安全性を高めようと、部下やチームメンバーに譲歩しすぎないよう、とくに上司やマネージャーの方ほど気を付けなければなりません。譲歩しすぎてしまうと「上司の甘い態度」だと勘違いする人もいるからです。
部下が上司を甘く見てしまうと、馴れ合いのような関係になります。すると、指摘や注意すべきときにそれができなくなってしまう可能性が生まれます。
そのため、褒めるときは褒める、注意すべきときは注意する、とメリハリを付けましょう。また、従業員に対して課題や目標を与えるのも方法の一つです。
まとめ
心理的安全性が低くなるということは、職場や同僚・上司に対して何らかの不満や不安を抱いているということです。するとネガティブな感情に支配されやすく、円滑なコミュニケーションも阻害されて会社も危害を被ってしまいます。
従業員の心理的安全性を高めるには相手との相互理解や発言しやすい環境の構築が必要です。皆が気持ちよく働けるようになることで社内の雰囲気も良くなり、会社にもメリットが生まれます。
ぜひ、明日からでも実践してみてください。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。