PMIとは?M&Aに必要不可欠な統合プロセスのポイントを解説

  • 2020.10.16

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M&Aを成功させるためには欠かすことができないプロセスであるPMIですが、イマイチよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

そこで今回、M&AにPMIが欠かせない理由や重要性、具体的なプロセスなどを分かりやすく解説していきます。

M&Aに関わるお仕事に携わる方や、これから携わりたいという方は是非ご一読ください。

PMIとは

PMIとはPost Merger Integration:ポスト・マージャー・インテグレーションの略で、M&A後の効果を最大化するための統合プロセスのことを指します。

PMIの対象は経営や事業、業務、そして従業員の意識など、企業経営上のすべてのプロセス・要素まで含まれます。

「後で」を意味するPostという言葉があるので、統合後に取り組む内容と思われがちですが、その内容の重要度や範囲の広さから、統合より前の戦略検討段階から取り組むべき事項と言えます。

PMIにどれだけ精緻に取り組めたかが、M&Aの成否に大きく影響してくることは過言ではありません。

PMIの重要性

ここからはさらにM&AにおけるPMIの重要性を深堀りしていきます。

以下の3つの視点から見ていきましょう。

統合後にシナジー効果を生み出す

M&Aの目的は統合後にシナジー効果を生み出し、統合を行う前の利益や売り上げ以上の成果を達成することで、企業価値を向上させていくことです。

とはいえ、ただ統合しただけではシナジー効果を生み出すことはできません。
最悪の場合、内部の混乱による顧客離れや離職者が増える可能性も出てきます。

そのためシナジー効果を得るためには、統合前からしっかりとしたPMI計画を立てることが重要なのです。

企業文化の相違を埋める

M&Aでは全く異なる2つの会社を1つにまとめることになります。

企業理念や文化はもちろんのこと、人事制度や社内の各種システムなど様々な違いがあるのは当然です。

しかしそれらの違いを放置しておくと、いずれ社員同士の摩擦やシステム・制度の不具合などの問題が生じてしまいます。

そのためPMIではお互いの違いを認めつつ、「自分たちよりも優れている部分があれば積極的に取り入れ、逆に自分たちの方が優れている部分があれば丁寧に説明して受け入れてもらう」といったように、相互に歩み寄って統合を進めていくことになります。

マネジメントのギャップを埋める

統合後の企業価値を最大化するためには、文化の相違を埋める必要があると前項でお話しましたが、マネジメントのギャップをクリアにすることも非常に重要です。

マネジメントのギャップは、後述するリーダーシップにも大きく影響してくる要素ですので、ギャップを明確にしたうえで適切な対応を取らねばなりません。

方向性としては以下の3つが考えられるでしょう。

    • レベルが同等である場合、お互いの人材を交えた経営チームを新たに立ち上げる
    • 買い手のレベルが高い場合、買い手側を主軸としつつ、売り手側の優秀層も取り入れる
    • 売り手のレベルが高い場合、売り手側を主軸としつつ、買い手側の優秀層を取り入れる

このようにM&Aにおけるマネジメントのギャップを埋めるためにも、PMIにしっかりと取り組み、買い手と売り手のマネジメントレベルを客観的に分析することもポイントになってきます。

PMIの難しさ

M&Aを成立させるためにPMIが不可欠ではあることがご理解いただけたのではないでしょうか。

とはいえ、PMIには簡単な取り組みではないという一面があり、M&A担当者を悩ませるタネにもなるのです。

具体的にPMIがどういった難しさを持つのか、詳しく解説していきます。

合意するまでに注力してしまう

M&Aはとにもかくにも合意を成立させたいという気持ちが強くなり、十分な準備や手順を踏まずに締結まで走りがちです。

こうなると、M&A本来の目的であるシナジー効果の創出や企業価値の向上どころか、混乱が生じてしまいます。

より具体的に言えば、業務上のミスやシステムの障害といった社内問題はもちろんのこと、顧客からの信頼低下や優秀な社員の退職といったことが起きかねないということです。

こうなると苦労して締結したM&Aが無意味になってしまうこともあるので注意が必要です。

統合すれば必ず混乱する

M&Aで統合すれば、一見スムーズに進んでいるように見えても、大なり小なり混乱が生じやすくなるのは当然のこと。

しかし何も対処せずにいると、先述の通りシステムや制度面での混乱といった内部問題や顧客対応における不備が起きてしまうといった事態が起き、顧客からの信用が揺らいで他社に鞍替えされてしまうことも考えられます。

統合における各タスクを顧客に対しての影響度の違いで分けて、影響の少ないところから着実に取り組んでいくなどの対応は必要になるでしょう。

従業員のモチベーションダウン

統合時に内部への丁寧な説明やフォローアップをないがしろにすると、買い手・売り手双方の従業員のモチベーションが下がってしまう恐れがあります。

特に優秀な社員達のモチベーションが下がり退職などの結果になってしまうと、さらに大きな混乱を招くことに繋がりかねません。

「顧客へのフォローを行うのも従業員」ということを忘れず、内部へのフォローアップも手厚く実施していきましょう。

PMIのプロセス

続いて実際にPMIに取り組む際のプロセスがどんなものかを見ていきましょう。

PMIは大きく5つの分野に分けて行われることになるので、1つずつ解説していきます。

経営の統合

まず一つ目のプロセスは経営体制の統合です。

統合後の新たなビジョンに基づく経営理念や戦略、経営の在り方、意思決定の仕組みといったマネジメント体制を検討し、全体最適の視点ですり合わせていくことになります。

最大限のシナジー効果を生み出すために行われる全てのプロセスの基盤とも言える重要なプロセスですので、丁寧に進めていくことがポイントです。

制度の統合

次は人事や会計などの各種制度を統合するプロセスです。

従業員のモチベーションに直結する人事評価や報酬、退職制度といったものから、経営を円滑にするための財務会計・管理会計などの方式の統合は、企業運営を継続する上で非常に重要なプロセスと言えます。

M&Aを良い機会に、今よりも優れた制度を生み出せるよう十分な検討をしていくことが必要でしょう。

業務の統合

制度の統合と併せて業務レベルを統合していくプロセスも踏んでいきます。

具体的には経理や人事などの各機能部門における業務や、業務を支える各種システムなどの統合を図ります。

通常業務や顧客への影響を判断しつつ、「何を、どれから」着手していくのかをしっかりと検討していきましょう。

事業の統合

買い手と売り手ではサービスや商品を含めた事業計画、仕入れ先や取引先なども異なるでしょう。

それらを統合後のビジョンや計画に照らし合わせながら統合していくことになります。

商品やサービス、その提供方法の統廃合、仕入れ先や取引先などを精査することで無駄を削り、シナジー効果を生み出せるよう検討を重ねていくことが重要です。

意識の統合

最後にご紹介するプロセスが意識の統合です。

統合後、日々の業務や実際の顧客対応を行うのは現場にいる従業員。
その従業員の意識がバラバラでは話になりません。

全従業員に対するフォローや、統合後のビジョン・理念を浸透させる社内セミナーなどを実施することで、新しい会社が自分たちの会社であると強く「自分ゴト化」できるように、調整していくことが重要です。

他のプロセスでの統合が仮に完璧にできたとしても、この従業員の意識統合プロセスが不十分だと、M&Aが失敗する確率は高くなってしまうでしょう。

PMIを成功させるポイント

最後にM&AにおけるPMIを成功させるために押さえなければいけないポイントを3つご紹介します。

リーダーシップを発揮する

1つ目の重要なポイントは、統合後の新しい経営層がしっかりとリーダーシップを発揮してPMIに臨むということです。

そのためには買い手と売り手の経営層が上手く統合し、統合前よりも強力なマネジメント体制を構築することがポイントになります。

経営層が安定したマネジメント体制を敷き、リーダーシップを持って各種取り組みをバックアップすることでPMIの成功確率は飛躍的に高まるでしょう。

「統合後は現場の幹部社員が頑張ればいい」というスタンスでは、せっかくのM&Aも十分なシナジー効果を生み出せずに終わってしまいます。

まずは経営層が率先垂範でPMIに取り組む姿勢を見せることが重要なのです。

PMIのための人材の確保を行う

続いてのポイントはPMI選任の人材を確保することです。

M&Aに際してプロジェクトチームなどが設置されることは多いですが、プロジェクトメンバーが通常業務との兼任になってしまうと、どうしてもスムーズにいかないものです。

スムーズにPMIを進めるためにはPMI専任の人材を確保し、その専任担当者を軸にプロジェクトチームを組むことがポイントになってきます。

M&Aは会社の運命を左右するビッグプロジェクト。
ビッグプロジェクトだからこそ、必要な人材リソースの確保へしっかりと投資して、成功確率を高めていきましょう。

明確な目標を掲げて発信する

最後にご紹介するポイントが明確な目標の発信です。
企業同士の統合を成立させるためには、従業員の意識の統合がとても重要であると先ほどお話しました。

そのためには従業員全員が理解し共感できる明確な目標を掲げて、それを日々継続して発信することで浸透を図らなければなりません。

明確な目標を掲げることで、それに適応できない一定数の人材が離職してしまう恐れがありますが、逆に目標に強く共感を覚え「自分ゴト化」した社員は、会社へのロイヤルティが高まります。

新たな会社に対して高いロイヤルティを持つ社員が生まれることで、初めてM&Aは成功したと言えるのではないでしょうか。

まとめ

PMIを実施するには時間や手間が驚くほどかかります。
かといって適当にやって成功するという簡単な取り組みでもありません。

買い手、売り手双方の十分な事前準備や検討は勿論、経営層含めた強力な推進体制の構築も成否を握るカギとなります。

そのためにはM&AやPMIに関する数多くのノウハウ、経験を有しているスペシャリストの力を借りることも必要になってくるでしょう。

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この記事を書いた人

すべらないキャリア編集部


「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。

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