目次
CEO
株式会社カブキ 片川創太
SOTA KATAKAWA
マーケター、特にWebマーケターの人材としての需要は、日に日に増しています。
ネット業界で働く人・そうでない人のなかでも、「いずれWebマーケティングの領域で活躍したい」と考えている人は多いかもしれません。
Webマーケターになるためのキャリアプランは、どう描けばいいの?そんな疑問を、SEOに特化したWebマーケティングサービスを展開する株式会社カブキの代表取締役、片川創太さんにぶつけてみました!
すると、返ってきたのは意外な答えでした。
新卒時代の挫折
今日は、片川さんにWebマーケターになるためのキャリアの描き方をうかがいたいと思います。
まず、今日お話しすることで一番大事なことを伝えたいと思います。
それは、キャリアプランは必要ないということです。
近年、キャリアプランは成功のために必要という空気感があります。
実際に、キャリアプランのおかげで理想の仕事に就ける人もいるでしょう。
それでも、僕が「キャリアプランは必要ない」と言うのには、これまでのキャリア形成が根底にあります。
僕はいまWebマーケッターなのかもしれませんが、それを目標にして階段を登ってきたわけではありませんし、本当に自慢できるようなビジネス人生を送っていないんですよ。
どういうことでしょうか?
僕は2006年新卒世代なのですが、当時はまさに堀江貴文さんがメディアに注目され、ベンチャー企業という言葉が急激に一般化しました。
学生同士でも、「大手企業に行くか、ベンチャー企業に行くか」という会話ばかりでした。
ベンチャー企業と言えば、若いうちから責任ある仕事を任されるというのがうたい文句です。
僕自身、鶏口牛後の思いで、従業員数15人の小さなベンチャー会社を選びました。
しかも、僕の入社前は正社員が10人しかおらず、新たに新卒で5人が入社するという、なかなかに小さな会社でした。
それでも、同期には京大卒、京大院卒、北大卒など、すごい顔ぶれでした。
5人の新卒中、学歴では僕が一番下だったんじゃないかな。
すごい顔ぶれですね。
その会社は人材系で、人材教育・人材開発のプログラムを販売していました。
僕の仕事は、テレアポをしてアポイントが取れれば、自分でその会社を訪問するという典型的な営業でしたね。
周囲からも僕は「営業向き」と評価されていました。 よくも悪くも、行動重視・スピード重視でガンガン進むタイプでした。
テレアポなら、1日100件の会社にかける。会社への訪問は、必ず1日3件はやる。
そういうのが全く苦じゃなかったんですよね。
そのおかげか、同期で最初に受注を取ったのは僕だったんですよね。
いま考えると恥ずかしい限りですが、その時は「営業としては自分が一番だ、バリバリ売れる」と本気で思っていました。
しかし結果として、3年間の在籍中、売上総受注額は200万円ぐらいだったと思います。
2年目、3年目になると、同期が数千万円クラスの大型受注をどんどん取るようになっていきました。
一番どころか、自分はダントツのビリだったんです。
偶然の一致でつながった次へのキャリア
努力がなかなか実らなかったんですね。
先輩や上司の方からは、結構怒られたりしませんでしたか?
いや、それどころか課長や社長からも「お前はいつかできる、頑張れ!」と優しく励ましてもらっていました。
それがむしろ申し訳なくて、つらかったですね。
そして、退職する年の夏休みに、大学時代の友人と沖縄旅行へ行きました。
そこでナンパした女性と出会って、「沖縄に住みたい!」と思ったんです。アバンチュールに逃げちゃった。
しかし、当時の沖縄の求人を探すと、美容師とWebデザイナーしかありませんでした。
そこで、「じゃあWebデザイナーを目指そう!」と思って会社を辞めました。
次の就職先も決まっていなかったので、おすすめできる転職の仕方ではありませんよね(笑)。
退職後、ハローワークの職業訓練校のWebデザイナーコースで、HTMLを初歩から学びました。
そんななか、沖縄と遠距離恋愛をしていたその彼女が失業中の僕と暮らすため、東京に来ちゃったんですよ。
行動力の化身のようなカップルですね(笑)。
まあ、結局別れちゃうんですけどね(笑)。
あら。…これ書いて大丈夫ですか?
大丈夫です(笑)。
沖縄に行くための口実が半分なくなり、「それなら都内で就職先を探そう」ということにしました。
僕は当然「これでWebデザイナーになれる」と思っていたけれど、もちろん就職先は見つかりません。
当時、Webデザイナーは実績がなければ絶対に採用されない。
特に独学の場合なら、よほど優れたポートフォリオを持ち込まないと評価をしてもらえません。
人材紹介会社にも、「無理だよ」とハッキリ言われました。
だけどそれはやはり正しい意見だったんですね。
それで僕も、Web領域で軸を変えようと思ったとき、たまたま目に入ったのがSEO会社でした。
そして、その中のひとつであるディーエムソリューションズに拾ってもらったわけです。
僕が配属されたのは、SEO対策課という部署でした。
営業が使用する、お客様向けの内部施策資料を作るのが主な仕事なんですが、これはHTMLが読めないと作成できません。
そのうえ、お客様とのやり取りで使用するため、営業経験があるとなお望ましいという形でした。
そのニーズが合致したのか、すぐに入社が決まりましたね。
一次選考直後に電話で「いつから働けますか?」と言っていただけて。
ここまで買ってくれるのかと思い、僕も心が決まりました。
前職の失敗が支えてくれた成功
すごく面白いですね。片川さんのキャリアが、ものすごくピンポイントで刺さったわけですか。
そうです。しかも…自分で言うのもなんですが、転職先で良い上司に恵まれたのもあってけっこう活躍できたんですよ(笑)。
営業が困っているときは、工程外のことも積極的に対応しました。
僕自身、売れないときのつらさはよくわかるので。本来僕は内勤者だったんですが、SEO・Web広告の経験を積むにつれ、営業と一緒に外回りもするようになったんですよね。
すると、あれだけ3年間売れなかったくせに、僕がプレゼンすると驚くくらい受注できたんですよね。
前職とは何が違ったんでしょうか。
前職時代、僕はテレアポの調子はいい反面、実際にお客様と会うと汗が止まらなくなるほど緊張していたんです。
人事部で研修などを担当する方は、経験豊富な方が多いじゃないですか。
若造の自分が、何を提案できるんだという思い込みがあったんだと思います。
ディーエムソリューションズでは、それがまったくなくなりました。
以前は自社の売りしか話せなかったのに、お客様の課題をもとに話せるようになっていたし。
こうした営業方法は、前職からずっと指導されていました。
転職先でいつの間にか、その指導を思い出して、実践できるようになったんです。
めぐりめぐって、自分の力になっていたんですね。
今はうまくいっていないけれど、それが数年後に突然役立ち、キャリアを切り拓くきっかけになる。
こんなこと、キャリアプランの地図には描けないじゃないですか。
僕はWebデザイナーを目指してHTMLの勉強をしましたが、決してその職業にこだわっていたわけじゃありませんでした。
「何が何でもWebデザイナー!」みたいな選択肢を持っていなかったのがよかったと思います。
肩書きや役職より大事なのは「会社で活躍できるか」だと思うんですよね。
活躍し成果を残せば、裁量も任されるし周りから感謝もしてもらいます。
だから、皆さんが活躍できるところへ行くべきです。
今まで経験したことを生かせる道を、模索したほうがいいというか。
もちろん、前職も営業だったから次も営業を選ぶ必要はありません。
僕みたいに、全く別職種をできることもあります。
そこはぜひ、アクシスさんで相談してみてください(笑)。
宣伝ありがとうございます(笑)。
今いる業界で「一生懸命」に頑張れるか
「キャリアプラン」は不要ですけど、良いキャリアを歩むには、ひとつ前提があると思います。
なんでしょうか?
いまある仕事を工夫して一生懸命にやるということです。
僕は新卒時代、テレアポも「電話帳を上からガムシャラにかけても意味がない」と感じ、自分なりの工夫を始めました。
「日経産業新聞」という新聞があるんですが、そこには人事欄というものが掲載され、人事・総務関連のニュースが毎日入ってきます。
その欄で「〇〇商事の組織体制を変更した」「〇〇証券では入社から10年は給料に差をつけないことに決めた」というニュースを見て、掲載先の会社に電話していました。
「今日の日経産業新聞を見て電話しました」と伝えると、かなり高い確率で担当者さんとつながって、アポイントも取りやすくなったんですよね。
いざ訪問先にいくと汗びっしょりになっちゃて「おまえ何しにきたの?」となるんですが(笑)。
この仕事のスタンスは、今も変わらず続けています。
カブキではさまざまな会社のWeb広告を支援していますが、そこで重要なのは、「お客様の業界の常識をどれだけ知っているか」 です。
以前、同人誌の通販サイトを運営する会社を支援したことがあります。
同人誌を購入するお客様って、どんな方だと思いますか?
え、誰でしょう?男性の方でしょうか。
実は女性なんです。一番売れ行きが好調なのは「BL作品」なんですよ。
だから実際に、そのサイトでBLを取り寄せて読んでみたことがあります。
そうやって、お客様の商材を実際に購入してみるんです。
仕事に対して興味を持って一生懸命に取り組めば、その業界の超優秀なマーケターになれると思うんです。
そういう姿勢が、Webの知識・技術以前に重要なんだと伝えたいですね。
ただ、僕は世間的には「逃げ」とされる選択もありだと思います。
「この業界・会社で一生懸命働いた!」と思えるのなら、異業種や他の会社へ移って、どんどん道を切り拓いていくのがいいんじゃないかなと。
先輩の一言でキャリアが変わった
どのエピソードも、かなり行動派な印象が強いです。
一方で、片川さんは仕事のかたわら、しっかりリサーチや情報収集も欠かさない気がします。
そう!情報収集すごく大事です。
どのジャンルでも、知識を吸収することはとても重要じゃないですか。
特にSEO、Webは時代の流れが早いので、この点はすごく意識しています。
情報収集の重要性を痛感したのは、ディーエムソリューションズに入社して1年が経った頃の、ある出来事がきっかけでした。
僕は元来、「作業が早い」というのが結構な長所だったんですね。
ドキュメント作成も、他の人が5営業日必要なところを僕は2日で作っていた。
当然、営業や上司からも重宝がられるようになり、分かりやすく天狗になっていました。
会社の忘年会があった日のことです。先輩に誘われて、渋谷のクラブで飲み直すことになりました。
クラブへ向かうタクシーの車内で、先輩が僕に言うんです。
「この人知ってる?」
「このTwitterアカウントを見たことある?」
「このブログは読んでる?」
「このRSS、定期的に受信している?」
僕はどれも知りませんと答えたら、先輩が「ここに挙げたのを知らないって、この業界ではモグリだぞ」って。
先輩はきっと、僕が調子に乗っていることに気づいて、忠告してくれたんでしょうね。
後日、僕は先輩にすべてのアカウントやリンクを教わり、情報を自分で仕入れるようにしました。
それ以来、営業へのアドバイスもより正確になっていきました。
一時期、SEOに関するブログ発信やSNS運用もしていて、当時の業界内ではちょっとだけ顔も売れるになりました。
そこで得た人間関係のおかげで、今も仕事ができています。
あの時、先輩の忠告を聞き入れず天狗になったままだったら…。
僕は今でも「ドキュメント作り係」だったかもしれませんね。
その先輩の一言で、人生が激変したんですね。
ちなみに、その先輩は現在、カブキの副社長をしてくれています。
え!?
情報収集の大切さを改めて教えてくれた存在で、感謝のしようがありません。
特に今の時代なら、Twitter、ブログ、動画と情報源はいくつもありますからね。
いろいろな角度から、情報収集するほうがいいと思います。
それと…。付け加えて言うなら、「ダメだぞ」と言ってくれる先輩こそ大事にしたほうがいいと思いますね。
リアルでの人間関係からも、思わぬ知恵を得られるかもしれないですもんね。
変化の時代を生き残るために
一生懸命に今の仕事をこなすこと。情報収集のアンテナを張り続けること。
この2つが非常に大事だと今日の話で痛感しましたね。
そうですね。それに加えて、もう一つ僕が大事にしていることがあります。それは、結局「変化に対応できる人」が生き残れるということです。
Webも含めて、現代ビジネスシーンで「変化が遅い業界」というのは、もはや存在しないですよね。
法律の改正やトレンドになるビジネスモデルの変化、企業の採用システム。何もかもが変わっていくじゃないですか。
前職でも、SEOにとんでもない変化がありました。
なかでもすごかったのは、ある日を境に「外部リンクを貼ってSEOを上げる」という戦略が、全く通用しなくなったことです。
確か2013年頃の出来事だった思います。
完全に行き詰まりかけたなか、僕たちはビジネスモデルの変化に本気で取り組みました。
そして、ディーエムソリューションズはSEOコンサルティングサービス会社に事業モデルを変身させたんですね。
売上も、全盛期の7、8割まで回復しました。
とんでもない変化が身の回りで起きたんですね。
しかしとんでもない変化というのは、実は日常茶飯事にあらゆる業界で起きています。
その現実に対して、情報収集を通じてその変化にキャッチアップして、一生懸命に働き自分を変えていく。
それができた人は、マーケターという肩書きをはるかに超えた、すごいビジネスパーソンになれるんじゃないかと個人的に思います。
なるほど…。ちなみに、片川さんは現在どんな「変化」に注目していますか?
さまざまなキャリアを経て、Webマーケターになった片川さんの考えていることを知りたいです。
平たくいうと海外です。
日本のWebマーケティングというのは、非常に閉じた世界なんです。
多くの戦略・戦術が「日本で売れる」ことを想定しています。
ですが、コロナ禍を経て海外販路を獲得したい会社は、かなり増えたと思います。
実際には、そういう支援をしている会社はまだまだ少ないでしょう。
「海外販路の開拓なら任せろ」というWebマーケターも、まだ少ない気がします。
カブキもまた、事業として海外企業との取引を模索する国内企業の支援をしています。
結果として外貨を獲得できるようになれば、人口が減りゆく日本社会への貢献にもつながるんじゃないでしょうか。
業界の垣根を越えて海外戦略が進み、TOYOTAさんのような会社が次々と生まれたら素晴らしいですよね。
いいね!
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。