目次
ROSCA株式会社 代表取締役
田原 貴一
KIICHI TAHARA
その後クラウドサービスの営業、エンジニアエージェントのマネージャーとして立ち上げを行ったのち、ROSCA創業。
1000名以上のエンジニアのキャリア形成に関わってきた知見をもとにエンジニアファーストなサービスを提供。
Twitter:@kiichiT12
まずは、田原さんが ROSCAを立ち上げた経緯など、お伺いしてもよろしいですか?
新卒の会社や、前職の会社でエンジニアの方のキャリア支援を通して色んなエージェントを見てきた中で、「もっとエンジニアの方にメリットがあるようなサービスをやりたい」と思ったことがきっかけです。
多くのエージェントさんで、売上・数字を追う傾向に違和感を感じていて。
「エンジニアの方にとっての最良のキャリア選択」をとことん突き詰められるサービスを自分自身で立ち上げようと。
弊社では、「シームレスキャリア」という正社員・フリーランスなどの雇用形態にとらわれず、個人の状況に応じてシームレスな考え方で働き方を選択するキャリアを提唱しています。
あらゆる可能性を吟味して、ユーザーの考える理想以上のキャリアを一緒に実現するために、いきなり転職ではなく、まず副業や業務委託として働いて相性をじっくりと見てから次のキャリアを考えることが可能な「お試し転職」などの取り組みもしています。
今日は、他のエージェントさんではあまり語られていないけれど、キャリア選択において知っておきたい情報をお伝えできたらと思いますのでどうぞよろしくお願いします!
フリーランスになりたい!その前に一度立ち止まって考えて欲しい
ご相談いただく未経験エンジニアの方、もしくは元々エンジニアではなかったけれど、キャリアチェンジでエンジニアになった方に、僕はよく以下の図を使ってご説明しています。
右上に行けば行くほど年収とスキルが上がっていくイメージですね。
まずスタートラインの1〜2年は、とにかくどこでもいいから、手を動かして「開発」をゴリゴリさせてもらえる会社に行きましょう。とアドバイスしています。
2〜4年目になると、エンジニアとして少しずつ選択肢が広がってきて、このタイミングで「フリーランスになりたい!」という方も割と多いんですが、僕としてはもう少ししっかりとスキルを積み上げることをオススメしますね。
正直このフェーズだと、割と多くのエンジニアの方が志望される自社開発×高待遇の会社を受けるのは結構ハードルが高いです。
PHPとかRubyとかPythonとかのWeb言語を扱える受託系の会社で修行して、さらに実績と経験を積み上げるのがいいと思ってます。
5〜7年ぐらいになると、かなり選択肢が選び放題になってくるので、人生プランやキャリアを通して実現したいことに合わせて選択をしていけばいいと思います
自社サービスの会社にいくも良し、フリーランスとして活躍するも良し。
7年目以降が、本当の意味で自由に仕事が選べて、正規の単価でちゃんと稼げるタイミング、ということですね!
そうなんです。2年ぐらいでもフリーランスにはなれるし、案件も見つかるんですけど…。
そこからスキルを伸ばすことが難しくなってしまいます。
フリーランスは、自分自身の経験・スキルがあるところしか基本的にはやらせてもらえないので。
そこから伸びるには、自己学習が必要なんですけど、それなら会社に所属した状態で上司や先輩に教えてもらったり、お給料をもらいながら新しい技術をキャッチアップをさせてもらうほうがいいんじゃないかなって思います。
でもフリーランスエージェントは経験1年の人でも2年の人でも結構後押ししてフリーランスにさせちゃうんですよね。自社の利益になるからフリーランスは良いですよ!って言って。
これは業界の闇だと思ってます。
確かに2〜3年目の時点で正社員とフリーランスの収入を比べると、フリーランスのほうが高いことも多いんですよ。
でもそれは一時的で、エンジニアとしての経験・スキルをしっかり貯めてから独立したほうが、単価の伸びがいいので、将来的に収入は高くなりやすいです。
転職・キャリアチェンジの時に気をつけたいこと
エンジニアの場合は企業からの需要も高い分、他の職種に比べると転職やキャリアチェンジを積極的に考える方も多いと思うのですが、失敗しないためのポイントはありますか?
自分のやりたい開発ができるかや働きやすさ、待遇面だけじゃなくて、先ほどお話した中長期でのキャリア設計を考えて欲しいですね。
ちゃんとスキルが伸びて確実に年収が伸びていく人は、ちゃんとキャリア設計を逆算で考えてます。
他の職種に比べると、経験と希望年収の条件マッチになりがちな印象があるのですが、ぶっちゃけその辺はどうなんでしょう…?
エージェントによっては、その人のキャリア云々よりも決まりやすい求人を提案してくるところも正直あります。
経験や条件のヒアリングだけじゃなく、先程お話したようなキャリアプランの話を聞いてくれるかどうかで判断するといいんじゃないでしょうか。
一概には言えないですが、個人や数人規模のエージェントだと、その人自身のキャリアをより一緒に考えてくれる傾向があるので、利用を検討してみるのも良いと思います。
ちょっとポジショントークっぽくなってしまうので、ちょっとアレですが…笑
笑。ちなみにROSCAさんがキャリア支援の際に大事にしてるポイントってどんなところですか?
条件だけのマッチングは、エンジニアの方にとってもですけど、企業にとっても不幸なことなので。
例えば、「PHP経験3年」だけでなく、どういう開発をやってたのか、どういう社風の会社で仕事してきたのか、どういう手法・フレームワーク・環境でやってきたのか、どういう部分を担当してたのかまで細かくヒアリングをした上でご提案をしています。
それによって、エンジニアの方と企業さん双方にとってのミスマッチを減らしていく。
逆にそこまでしっかり把握した上で企業側にもご提案をしないと、自社サービスをやってる人気企業とかはとくに選考通過できない…なんてこともあるので。エージェントの腕が試される部分ですね。
エージェント選びって、とても大切なポイントだと思います。
転職やキャリアにおいても誰をパートナーに選ぶかは非常に重要。ってことですね!
僕らはコードはかけないですけど、キャリアの面でいろんな人を見てきているし、いろんな会社や過去の事例を見てきてるので。
現状の市況感も踏まえつつ、色々とアドバイスできるのかなと思います。
ちなみに、最近のエンジニアリング業界でのトレンドを教えていただけますか?
最近は、「組織」ってやっぱり大事だよね、という風潮が強くなっていますね。
「VPoE(=Vice President of Engineering、企業の技術部門をのマネジメント責任者)」というポジションができたり、単に技術に強い人よりもエンジニアマネージャーを募集している会社さんが増えています。
技術責任者のCTOとは別に、VPOEがマネジメントを見るみたいな文化になってきてる。
VPoEなんて、4年前だったら全然そんな話は出なかったし、この業界は技術トレンドもだけど組織トレンド、キャリアトレンド含めて本当に動きがめちゃめちゃ早い。
コミュニケーション能力だったりとかチームで連携した動きができるかみたいな部分を見るような会社さんが増えてきたってことですか?
そうですね。そういう枠が増えてきてます。
あとはどんどん需要過多になってます。日に日に。
未経験エンジニアの採用トレンド、どうなってる?
需要過多の一方で、未経験からの転職はかなり厳しい現状と聞きます。
コロナ前は未経験でも少なからず中小の受託開発企業とかで採用があった印象ですが、
コロナ前後で未経験の採用ニーズって変わってきてるんですか?
僕自身の肌感としては、未経験の採用枠はあまり変わってないと思います。
変わってないんですけどプログラミングスクールの卒業生が増えたことで変わってるように見えるが正解だと思います。
なりたいけどなれない人は多い。一方で企業側は欲しいけど採用できない。これってどういうことなんでしょう?
なりたい人のレベルと、欲しい側の求めるレベルがめちゃめちゃミスマッチなんですよね。
未経験でなりたい人はいっぱいいるけど、欲しい側は最低でも3年はやってて欲しいみたいな状態。
中途採用であれば即戦力が欲しいわけで、企業さん側もそのぐらいは求めちゃうのかなと思いますし、難しいところですが。
もともとは、エンジニア職って大学の情報科を出てる人とか、理系の人がなるものだった。だからエンジニアになることってそんなに簡単じゃないんですよ。
専門職でなるのが難しいからこそ、年収も高いってことなんですよね。
そうなんです。シンプルに誰でもなれるものではないっていうところはあります。
でも、本当になりたい人はちゃんとなれてるんです。どうにかして。
僕の前職の後輩でも、開発経験ゼロだったけど、独学でrailsの勉強してポートフォリオ作って、受託開発の会社になんとかインターンで入れてもらってました。
それぐらいのガッツや本気度があれば必ずなれるものだと思います。
逆にそれぐらいなければあんまり挑戦しない方がいい???
と、思いますね。
プログラミング教室を出たから就職できる、っていうのは実際はなかなか難しい。
教室での学習を1つのステップとして捉えて、そこにプラスでの自己学習や会社に入れてもらう努力や行動もセットにする必要がありますね。
単に受け身でいてもなるのは難しいよってことです。
そこまでしても本気でなりたいかどうか、はじっくり考えてみたほうが良いと思いますね。
フリーランス「50歳の壁問題」
弊社鈴木のnoteでも情報発信してたりするのですが、フリーランスエンジニアの「50歳問題」っていうのがあって。
50歳になった瞬間に仕事が激減してしまうんです。
年齢で切られるのはどういうロジックなんですか?
そもそもまず現場のリーダーさんが若い。
あとは、フリーランスという形態がメジャーになってからまだそんなに時間が経っていないので、フリーランスで活躍してる方々がまだその年齢になってないのも結構あるのかなと思ってます。
そういう時の回避法や、年齢に関係なくずっと活躍し続けられるエンジニアとしてやっていけるんでしょうか?
フリーランスの道を目指すなら、40代になってからはエージェントなどを頼らずに自身のつながりの中でちゃんと案件をもらえる人になっていくべきだと思います。
それぐらいのスキルセットを持っていれば、50代になろうがいくつになろうがそんなに困ることはないです。
知り合いづてで仕事をもらってくるとか?
そうですね。
エージェントに紹介されるがままに、ひたすら受け身で言われたことをこなすような仕事だけを40代・50代までやり続けていくと、どこかのタイミングで急に仕事がなくなる、ということが起きる。
だからこそ、スキルや経験が未成熟なタイミングでフリーランスになることには慎重になってもらいたいなと思うんです。
冒頭にもお話ししたように、フリーランスになってから新しいスキルを身につけていくことは難しいので。
ひたすら案件を請ける、コードを書くだけでは八方塞がりになる可能性がある。
それは逆にエージェントとかがちゃんと言ってあげるべきだと思うけど、「決まればいいや」っていうエージェントはそんなこと言わないんで。
その人が50歳になろうが知ったこっちゃないみたいなことも起きたりする。
自分のキャリアは、自分が責任持たなきゃってことですね。
専門スキル以外に、どういうスキルを身につけておくのが一番いいと思いますか?
インフラから開発まで全部見れて、「丸っと投げてもらえればやれますよ」と個人で全て受けられる人になるか、周囲に信用やコネクションを作っておいて、いつ誰からでも声をかけられる人になっておくってことですかね。
前者は結構ハードルが高いかもしれないけれど、独立した時に声をかけられる人になることはそこまで難しいことじゃないと思うんです。
10年前とかに比べたらSNSもあるし、コミュニティみたいなものもあるから、繋がりを作るチャンスは結構あるかもしれませんね。
「今は仕事があるし、そんなことないでしょ」って思う方も多いかもですが、そういう現実もあるということで。
現状に甘んじず、そういった動きもしてもらいたいなと思います。
エンジニアのキャリア設計、年収アップに必要な考え方
最後に、無理せず計画的に年収アップし続けるために必要なキャリア選択や考え方はありますか?
フリーランスなら、本当にちゃんと考えてくれるエージェントさんと一緒に自分のキャリアにとってプラスになる現場をちゃんと選びとることが大切ですね。
現職ではRubyのこのバージョンやってるけど、次に行く会社ではもう1つ新しいバージョンがやれますとか。
今やってる技術+αを永遠に案件として取り続けていけは、シンプルに単価は上がり続けていきます。
自分だけで会社を目利きすることは難しいので、プロの力を借りるのが確実だと思います。
正社員でキャリアを積んでいく場合はどうですか?
正社員の場合はマネジメントの方にいきたいのか、技術の方にいきたいのか。
目指す方向性を定めてそこをやらせてもらえる企業をしっかりと選ぶことですね。
Webエンジニアであれば、正社員として一番いいのはやっぱり自社サービスの会社だと思うんですよね。
年収も働き方も待遇も。
なので、ちゃんとロードマップを引いて最終的にそこに行けるようなキャリア設計をしていくことが重要です。
今はそこに受からなくてもちゃんと3年後・5年後に受けたら受かる、みたいなキャリア設計をする。
この会社では何年でどれぐらいのスキル感を持って次の会社に転職するみたいなのを戦略的に考えながらやっていくのがいいのかなと思います。
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この記事を書いた人
すべらないキャリア編集部
「ヒトとITのチカラで働く全ての人を幸せにする」というミッションのもと、前向きに働く、一歩先を目指す、ビジネスパーソンの皆さんに役立つ情報を発信します。